公取委が「クノールブレムゼ」に勧告、下請法の減額禁止とは
2025/03/26 契約法務, コンプライアンス, 行政対応, 下請法, メーカー

はじめに
公正取引委員会が19日、部品の製造委託をしていた下請事業者に対し不当に代金を減額していたとしてクノール社に勧告をしていたことがわかりました。下請代金から計約6700万円を差し引いていたとのことです。今回は下請法が禁止する減額行為について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、ドイツに本社を置く輸送用機器製造メーカー「クノールブレムゼ」の日本法人は、商用車用ブレーキなど各種制御装置の製造・販売を行っているとされます。同社は遅くとも2023年9月から24年4月までの間に部品製造を委託していた下請事業者9社に対し、自社の原価低減を目的とする「ワン・タイム・ボーナス(一時金)」と称して下請代金の額から合計約6738万円を差し引いていたとのことです。同社は下請代金の減額について、下請事業者と交渉した上で書面で合意をしていたとされ、また同社の提案に合意するまで下請事業者の担当者を帰さない事例もあったとされております。同社の資本金は以前は3億9000万円だったところ、現在では2億9000万円に原資されております。
下請法の減額禁止とは
下請法では、親事業者に対し書類の交付義務やど4つの義務(3~5条)と、11の禁止事項を定めております(4条)。禁止事項は受領拒否や返品、買いたたき、購入・利用強制、利益提供の要請など様々ですが、その中に下請代金の減額の禁止が定められております(同条1項3号)。条文では、「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること」とされております。発注時に定めた代金を一方的に減らすといった行為です。「歩引き」や「リベート」といった名目で減額する場合や、単価引き下げ合意がなされたことを理由に合意以前の分にも適用すること、下請代金の総額はそのままで納品数量を増やすこと、取引先からの発注が取り消されたことを理由にキャンセル分を下請代金から差し引くことなどが具体例となります。
下請事業者の帰責事由
上でも触れたように、下請事業者の責に帰すべき理由」がないのに減額をすると違法となります。つまり下請事業者に帰責事由がある場合は減額が可能ということです。それではどのような場合に認められるのでしょうか。この点について、(1)下請事業者との取引の対象物に瑕疵があったり、納期遅れなど適法に受領拒否や返品ができる場合、(2)適法に受領拒否や返品ができる場合であって親事業者が自ら手直しした場合の客観的に相当な費用、(3)適法に受領拒否や返品ができる場合であって、瑕疵の存在や納期遅れによる商品価値の低下が明らかで客観的に相当な額を減ずる場合には認められると言われております。このように親事業者側から減額できる場合はかなり限定的と言えます。
下請法が適用される場合
下請法は親事業者と下請事業者の資本金の額で適用が決まります。(1)物品の製造・修理委託等では、親事業者の資本金が1000万円超~3億円以下の場合は下請事業者側は資本金が1000万円以下、親事業者の資本金が3億円超の場合は下請事業者の資本金が3億円以下の場合に適用となります。(2)情報成果物作成・役務提供委託等では、親事業者側の資本金が1000万円超~5000万円以下の場合、下請事業者側は1000万円以下、親事業者側の資本金が5000万円超の場合は下請事業者側は5千万円以下となっております。なお現在下請法の改正案が閣議決定されており、下請法適用の基準をこのような資本金ベースに加え、従業員数をベースとした新基準の導入が検討されております。
コメント
本件でクノールブレムゼ日本法人は下請事業者に対し、「ワン・タイム・ボーナス」という一時金名目で下請代金を計約6700万円減額していたとされます。また同社は違反行為時は資本金が3億9000万円であったものの、現在は2億9000万円に減資されております。公取委は下請法に違反するとして再発防止の勧告を行いました。以上のように下請代金は下請事業者側に帰責事由がない場合は一方的に減額することはできません。また近年下請法等の適用を回避する目的で資本金減少をするケースが指摘されております。そのため以前にも取り上げましたが下請法の改正案が現在閣議決定されており今年の国会で提出される見通しです。自社の資本金額や取引相手の資本金などを確認し、下請法上問題となる行為を社内で周知しておくことが重要と言えるでしょう。
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