所属タレントの個人情報売買、旧ジャニーズ事務所は法的措置も視野に
2023/11/28 訴訟対応, 情報セキュリティ, 個人情報保護法, エンターテイメント

はじめに
所属タレントの個人情報・盗撮写真の売買が行われているとして、SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)は11月24日、これらの行為を直ちに止めるよう注意喚起しました。場合によっては法的措置も検討するとのことです。
タレントの個人情報を売買
旧ジャニーズ事務所、株式会社SMILE-UP.は11月24日、ファンクラブ「FAMILY CLUB」公式HPで、所属タレントの個人情報、盗撮写真の売買を目的とした悪質な投稿や拡散が続いているとして、販売者・購入者ともに法律に抵触する可能性があるとの声明を発表しました。
その中で、SMILE-UP.側は、特に悪質な投稿などが発見された場合にはアカウント投稿者の特定を行い、法的措置を取る可能性があると示唆しています。
さかのぼって22日ごろ、SNSのX(旧Twitter)では、「SMILE-UP.の所属タレントの個人情報の売買を募る投稿がある」と指摘する投稿が話題となっていました。報道などによりますとX上で、タレントらの実家住所や利用している鉄道路線、プライベートの写真などの売買が疑われる投稿がみられるということです。こうした投稿では隠語を使ったやりとりが行われており、投稿者らはダイレクトメッセージや他のSNSアプリなどを通じて売買を持ちかけているといいます。
SMILE-UP.の発表によると、個人情報売買行為の他にも、盗撮した写真などを加工しての虚偽投稿や誹謗中傷なども相次いでいるとし、直ちにやめるよう注意を促しています。
個人情報売買と法的責任
今回、SMILE-UP.側は法的措置も辞さない構えを見せましたが、タレントの個人情報を売買した場合、具体的にどのような法的責任を負うのでしょうか。基本的に、個人情報の売り手側に、プライバシー権や肖像権侵害の問題が生じることになります。
■プライバシー権
私生活をみだりに公開されない権利(または法的保障)です。以下の3点(私事性、秘匿性、非公知性)を要件とします。
(1)私生活上の事実または事実らしく受け取られるおそれがある事項であること
(2)一般的な感受性に照らし、公開して欲しくないと感じる内容であること
(3)一般の人々に公開されていない事項であること
具体的には、インターネット上で、住所・氏名・車のナンバー・公にしたくない過去、手紙やメッセージのやり取り履歴などを掲載するケースなどが該当する可能性が高いとされています。
加害者に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求が可能ですが、その際に認められる慰謝料の相場は概ね30~50万円といわれています。
■肖像権
①撮影拒否権、②肖像の使用・公表の拒絶権、③パブリシティ権(肖像の利用に対する本人の財産的利益を保護する権利)の3つの権利を含む権利です。「撮影によって被る人格的利益の侵害」が社会生活上受忍の限度を超える場合に肖像権侵害が認められますが、具体的には、以下を基準に判断されます(最高裁 平成17年11月10日判決)。
・被撮影者の社会的地位
・被撮影者の活動内容
・撮影の場所
・撮影の目的
・撮影・公表の態様
・撮影・公表の必要性
プライベートで公開を前提とせずに撮影した写真、パーソナルスペースや公共機関内で撮影された写真、拒絶の意思を示したのに撮影された写真などの公開が該当する可能性が高いとされています。
加害者に対しては、プライバシー権の侵害時と同様に、不法行為に基づく損害賠償請求が可能ですが、その際に認められる慰謝料の相場も、同じく概ね30~50万円といわれています。もっとも、写真が虚偽の内容(コメント)と共に公表された場合には、合わせて名誉権の侵害も認められ、慰謝料額が増額する可能性があります。
コメント
かねてより、問題視されていた個人情報売買アカウントの存在。同アカウントでは、タレントの住所や電話番号、最寄り駅、学校名、お気に入りのお店、プライベートなエピソード、関係者の連絡先などが取引されているといいます。しかし、大多数は虚偽の情報で、購入者がお金をだまし取られるケース、マルチ商法の勧誘に誘導されるケース、卑猥な写真や動画・行為などを求められるケースなどが発生しているとされています。
個人情報を購入した側は、法的責任を負う可能性は低いとされていますが、思わぬトラブルに巻き込まれるおそれがあります。どこかのタイミングで、社内で、一度、注意喚起しておくことも重要です。
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