スマート?姑息? 衆院小選挙区割りで違憲「状態」判決!
2011/03/24 訴訟対応, 民事訴訟法, その他

概要
2009年8月の衆議院選挙小選挙区における区割りが議員一人当たりの有権者数格差で最大2.30倍の格差を生んだとして有権者から選挙の違憲とその無効を訴えられた裁判の上告審判決が11年3月23日に最高裁大法廷であった。従来から何の根拠か知らないが格差3倍以内は合憲といわれており、実際小選挙区導入後2.47倍までは合憲とする判断がでていた。ところが今回の判決は格差の数値に焦点を当てず、人口比例とは別個に各都道府県にあらかじめ1議席を配当してきた「一人別枠方式」の不当性を問題にした。この方式は相対的に人口の少ない地域に対する配慮から生まれたものである。しかし同方式が格差を生じさせた主要な原因であると最高裁はいう。
この論点ずらしのメリットは、格差2倍以上の選挙を合憲とした過去の最高裁判決と今回の違憲状態判決の論理的整合性を時間に焦点を当てることで維持できる点にある。判決では「一人別枠方式」の意義について、人口の少ない地域の定数が急激に削減されることを防ぎ国政の安定性と連続性の確保を図るものとした上で、その導入には時的限界があるとした。そして過去の07年大法廷判決は格差が2倍を超えていたものの、問題となった05年選挙は小選挙区導入(94年)からあまり時間が経っていない。ゆえに同方式を維持し続けることに合理性があるため合憲という判断に首肯できるとした。しかし、今回問題となった09年選挙は、小選挙区導入後10年以上経過している。選挙区改定などの措置を施し、格差を解消する十分な時間があったはずだ。だから「一人別枠方式」を維持し続ける合理的根拠はないとした。
雑感
判決は、判例の整合性を取るための苦肉の策のようにみえなくもない。上手いというべきか姑息というべきか。ただ、今まで2倍以上の格差を容認してきた根拠を「一人別枠方式」におけば一応の説明はつくかもしれない。しかし、この方式を廃止することで議席を失う地方からは怨嗟の声が上がりそうだ。純粋に人口比例で議席を配分するならば、都市部の権力がますます増加することは疑いようもない事実なのだ。選挙区割りは多様な事情が絡み合う高度な政治的問題であるのは間違いない。司法権が首を突っ込んでよいものなのだろうか。米軍基地問題では高度な政治性が要求されるとしてさっさと匙を投げる割に、選挙区割りについては語りたがる裁判所の姿勢に疑問が残る。そのくせ違憲判断はできず、違憲「状態」が関の山である。司法権の限界を十分すぎるほど認識してはいるのだ。集団訴訟の充実など司法が福祉実現の手段を担おうとしている現代、今一度自由の砦としての司法権という原理原則に立ち返って、裁判所は抑制的になるべきなのかもしれない。少なくとも論理のお遊びをしている場合ではない。
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