最低賃金法違反の疑いで鳥取県の印刷業社長が書類送検
2022/04/06

はじめに
働いた対価として報酬がもらえるのが当たり前と感じている私たちですが、鳥取県で最低賃金法違反の疑いで印刷業社長が書類送検されるというニュースがありました。今回はこの件について掘り下げていきます。
事件の概要
鳥取労働基準監督署は3月22日、鳥取市で印刷業を営む「タミクコーポレーション」と社長の70歳代の社長を最低賃金法違反の疑いで地検に書類送検しました。公表された情報によると、タクミコーポレーションと社長は同社員とパート社員の合計3人に対して2020年2月分の定期賃金約42万円を支払わず、鳥取県の最低賃金を下回った疑いが持たれています。
最低賃金に関する法律
最低賃金について定められた最低賃金法には、雇用主が労働者に対して最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない旨が定められています。そして最低賃金の金額は時間給として定められているのも特徴です。労働者には基本給のほかに各種手当や残業代などのさまざまな項目の賃金が支払われていますが、さまざまある項目の中で最低賃金の対象となるのは、「労働者に対して1ヵ月ごとに支払われている基本給のみ」になります。
かつては、雇用者と労働者にて最低賃金について協議し、両者の合意のもと最低賃金について納得し雇用するというケースも存在していました。しかし、現代では多くの雇用者や事業所が最低賃金の額について把握しているため、雇用者が労働者に対して適切な給与額を提示して雇用をおこなうことが一般的になりました。もし仮に最低賃金以下の給与で労働させた場合には雇用者には最低賃金との差額を支払わなければならないとされています。そして最低賃金法第40条によって、地域別最低賃金以上の賃金を支払わない場合には50万円以下の罰金に、特定(産業別)最低賃金以上の賃金を支払わない場合には労働基準法によって30万円以下の罰金に処されることもあります。一方で、最低賃金法の罰則は身柄を拘束されることもなく罰金刑のみであるため、労働者を守るためにも厳罰化するべきという声もあります。
最低賃金とは
最低賃金には地域別最低賃金、特定(産業別)最低賃金の2種類があります。2つの最低賃金については各都道府県によって毎年の見直し、引き上げがおこなわれています。各都道府県によって引き上げ時期は異なり、引き上げ幅も各都道府県で労働するのに労働者が損をしないように十分な検討をされたのちに決定されます。労働者にとっては最低賃金の引き上げは嬉しいものですが、雇用者にとってみれば経営をひっ迫するケースもあり、最悪の場合には廃業や倒産、雇用の損失などにつながってしまうため慎重に検討されるべきとの声が多く上がっています。
コメント
今回は鳥取県の印刷業社長が最低賃金法違反の疑いで書類送検されたニュースから、最低賃金について掘り下げました。最低賃金については2021年5月に当時の菅総理大臣が最低賃金の全国平均を1000円にする考えを示しました。最低賃金の引き上げについては雇用者側と労働者側でとらえ方が違うため、より慎重に検討していかなければならないことになります。特に雇用者が気にしている「最低賃金の引き上げによって雇用の損失が起こるのか」という問題については専門家によって意見が分かれる部分になっています。この問題についてはしっかりとしたエビデンスに基づいた論理的な整理が必要であり、過去の引き上げによってどのような影響があったのかをしっかりと把握する必要があります。一例として、独立行政法人経済産業研究所の発表によりますと、最低賃金の10%上昇は、賃金の高さが下位に位置する労働者の賃金率を2.8~3.9%引き上げる一方、技能面に優れない労働者、特に中学・高校を卒業したての10代の労働者の雇用を約30%奪うとしています(最低賃金と若年雇用:2007 年最低賃金法改正の影響)。
今後最低賃金は引き上げられて、菅元総理が示したように全国の最低賃金が1000円に到達するのかについては今後も注目していきたいポイントです。
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