ネトフリ日本法人が12億円の申告漏れ指摘、追加徴税は3億円にも
2022/03/30 税務法務, 外国法, 税法

はじめに
アメリカの動画配信大手「ネットフリックス」の日本法人が、東京国税局の税務調査を受け、2019年12月期までの3年間で計約12億円の申告漏れを指摘されたことがわかりました。同社のオランダ法人が日本法人の得た映画やアニメなどの配信権を利用して利益を上げていたにもかかわらず、日本法人が業務に見合った利益の分配を受けていないと判断されたとのことです。今回は大手IT企業などへの課税を目的とした「デジタル課税」について掘り下げていきます。
事件の概要
報道によると、日本法人「ネットフリックス合同会社」は国内会員向けのコールセンター業務のほか、映画やアニメなどを手がける国内の制作会社から配信権を得る契約業務を担当しており、同社のオランダ法人は日本法人から配信権を取得し、インターネット上で配信サービスを展開していました。この際、オランダ法人は日本法人が制作会社に支払った配信権取得費とその取得経費を日本法人に支払っていたと言います。しかし東京国税局は、オランダ法人が日本法人の貢献によって巨額の利益を上げており、配信権取得費と経費だけでは足りず、業務に見合った利益も分配されるべきだと判断しました。その結果、日本法人に支払われるべき分配額を算定したうえで計約12億円の申告漏れを指摘しています。過少申告加算税を含む法人税などの追徴税額は約3億円とみられています。日本法人は取材に対し「国税当局と討議して修正申告した」と文書で回答しています。日本法人の19年12月期の売り上げは約300億円に上ったものの、その大半はオランダ法人に「配信料」などの名目で流れており、多国籍企業への様々な税優遇制度があるオランダに法人税が集中していました。
大手IT企業への課税を強化するデジタル課税
今回の事件のように、海外進出の際に現地に工場や販売施設を持たずにビジネス展開が可能なIT企業などにおいて、いくら現地で利益を挙げていても、その国が十分な課税をすることができていませんでした。代表的な例が「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業群であり、莫大な利益を上げているにもかかわらず、利用者がいる国に十分な納税がなされない点が国際的に問題視されてきました。そこで日本を含む136カ国・地域の間で2021年10月、国際的な法人税改革である「デジタル課税」に大枠合意しました。今回の合意により現地に支店や工場などがない企業に対しても、利用者がいる国は課税することができるようになります。デジタル課税の対象は、売上高200億ユーロ超で利益率10%超の多国籍企業グループとされており、全世界で100社程度が対象となる見込みです。また最低税率は15%とすることが予定されており、法人税率が低いタックスヘイブンに子会社を設立している企業にも課税が強化されることになりました。これによりタックスヘイブンとされる国や地域が税率を引き下げあう租税競争の防止にもつながり、世界の競争条件が整うことも期待されています。経済協力開発機構(OECD)では、デジタル課税の導入目標を2023年としています。
コメント
従来の国際ルールでは、店や工場などを持たない外国企業の事業所得に対して原則課税できないという税制になっており、デジタル経済やIT企業の発展に制度が追いついていない状況でした。今回合意されたデジタル課税が導入された場合、世界全体の税収は毎年1500億ドル増加するとも言われており、特に大手IT企業がひしめくアメリカの企業に大きな影響を及ぼすと見られています。今後、多国間条約の締結によりデジタル課税が導入される予定ですが、アメリカ議会における条約承認など、いまだ超えるべきハードルは残っており、目標どおり2023年に導入が開始されるか、注視して行く必要がありそうです。
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