TOHOシネマズ レディースデー終了、男女格差に配慮か?
2021/07/15   労務法務, 労働法全般, その他

はじめに

 国内最大手の興業会社であるTOHOシネマズが、7月7日をもって映画館の割引サービスの「レディースデー」を終了し、14日の水曜日から「TOHOウェンズデー」をスタートし、男女ともに1900円の鑑賞料金を1200円にする割引サービスを新たに設けました。

事案の概要

 「レディースデー」は毎週水曜日に女性のみを対象に1200円に割引をするものであり、同サービスの廃止に伴う「TOHOウェンズデー」の新設は実質的に水曜日の割引対象を男女共に広げるものであるといえます。

 TOHOシネマズの広報担当者はこのサービスの切り替えについて理由を述べてはいません。ジェンダーレスが社会に浸透しつつある現代の潮流に合わせ、サービスの見直しを図ったのではないかとみられます。また、割引を受けられる者が増えることで利用者の増加が見込めることから、割引による客単価の減少を差し引いても収益が伸び得るからではないかともみられます。

日本のジェンダーレスへの取り組み

 TOHOシネマズが「レディースデー」を廃止した理由はジェンダーレスへの配慮なのか憶測の域を出ませんが、結果としてジェンダーレスの社会作りに寄与していることから、今回は企業のジェンダーレスへの取り組みについて取り上げます。

 社会的な性をジェンダーと言いますが、性差を前提とする社会的・文化的な取り扱いの違いを排除しようというジェンダーレスの考え方は、古くは男女雇用機会均等法(1985年制定、翌年施行)に表れています。しかし、日本のジェンダーレスへの取り組みは、未だに世界と比較すると後れを取っています。

 そんな中でもジェンダーレスに向き合う日本企業も存在します。最近よく耳にする「持続可能な開発目標(SDGs)」は、その内容にジェンダーを含み、多くの日本企業がSDGs達成に向けた取り組みを行っています。例えば、パナソニックではジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図るべく、カンボジアにおいて幼児教育や女性の自立支援を行っています

ジェンダーと企業法務

 ジェンダーレス社会に向けた取り組みの中で、外せない問題意識としてLGBTが挙げられます。LGBTに関して経団連が2017年5月に公表した提言である「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」によると、LGBTに関する取組が急務であることを示唆し、企業が取り組むべき理由として、幅広い人材の確保及び退職の抑止・より働きやすい社内環境の整備及び生産性の向上・自社ブランドの価値向上・法的リスクの回避及び社員の人権保護・ビジネスの拡大を挙げています。

 LGBTに配慮した体制を企業内で作ることは、企業法務従事者も取り組むべき問題であると経団連は示唆しているといえます。従業員の人権保護はもちろんのこと、企業の社会的評価や従業員の確保等、企業のビジネス的側面にもLGBTは根深く関係しているといえるため、これに対する対応は急務といって差し支えないでしょう。

コメント

 ジェンダーレスの思想が広まった現代日本において、ジェンダーに配慮できない企業は社会からマイナス評価を受けるというリスクを負いかねません。

 企業法務従事者としては、ジェンダーレスに向けた取り組みをするにあたり、企業価値の向上を図るべく、人権侵害等の必要最小限のリスク管理だけではなくジェンダーにより待遇が左右されない社内の体制作り等、さらに踏み込んだ対応策を練る方がよいでしょう。

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