サン電子株主が仮処分申立て、新株発行差止について
2020/07/30   商事法務, 戦略法務, 会社法, メーカー

はじめに

サン電子は20日、新株予約権の行使による新株発行について一部株主から差止めの仮処分申し立てが名古屋地裁になされた旨発表しました。著しく不公正な方法による発行であったことを理由としているとのことです。今回は新株発行の差止めについて見ていきます。

事案の概要

 サン電子の発表によりますと、2019年12月20日開催の取締役会で第三者割当による新株予約権及び転換社債型新株予約権付社債の発行が決議され、そのとおり発行されました。それら新株予約権の行使による新株発行に先立ち、同社株主であるOASIS
INVESTMENTS2社が名古屋地裁に新株発行差止め仮処分を申し立てたとされます。同株主の持株比率は約3%とされ、申し立て理由は2019年12月20日開催の取締役会において決議された新株予約権の発行に著しく不公正な方法があったとのことです。サン電子は現在申し立て内容について精査中としています。

新株発行差止め

 募集株式発行につき法令や定款違反があった場合、新株発行無効の訴えを提起することができます(会社法828条1項2号)。提訴期間は公開会社で6ヶ月、非公開会社で1年となっており株主や取締役、監査役などに提訴権が認められております(同2項2号、3号)。しかし新株発行の無効は多くの株主や利害関係人に影響を及ぼすことから裁判所も無効原因は限定的に扱っております。法令の手続きや定款記載の発行可能数を超える場合が典型例と言えます。そこで発行されるまえに差し止めることが重要となります。発行される前であれば法令・定款違反に加え「著しく不公正な方法」による発行の場合でも差し止めることが可能です(210条1号、2号)。著しく不公正な方法とは、発行の主要な目的が特定の株主の持株比率を低下させ現経営陣の支配権を維持することである場合と言われております(主要目的ルール、東京地裁平成元年7月25日)。

新株予約権の差止め

 発行差止め請求は新株発行だけでなく新株予約権に対しても行うことができます(247条)。差し止め原因は新株発行の場合と同じく法令・定款違反、著しく不公正な方法による発行となっております(同1号、2号)。この著しく不公正な方法も新株発行と同じく主要目的ルールに基づいているとされております(東京高裁平成17年3月23日)。ただし新株予約権の場合は経営支配権維持が目的であっても、それが敵対的買収に対する防衛であり、株主全体の利益にもなる場合は適法となるとされております。

新株予約権行使による新株発行差止め

 それでは新株予約権の行使による新株発行を差し止めることは可能なのでしょうか。本来このような場合はまず新株予約権の発行を差止めたり、新株予約権発行無効の訴えによることが考えられます。しかし取締役会で新株予約権の発行の決定と発行が同時になされ、期間を置かずして行使された場合、差し止める機会を得られないといった事態も有りえます。そこで新株予約権発行段階での法令・定款違反、著しく不公正な方法を理由に新株発行差止めが申し立てられる場合があります。裁判例でもこのような差止めは認めております(新潟地裁平成20年3月27日)。

コメント

 本件ではサン電子の新株予約権および新株予約権付社債は既に発行されており、それらの行使による新株発行の差止め請求となっております。原告側の主張する著しく不公正な方法の具体的な内容は不明ですが、今後新株予約権発行の主要な目的が争点となってくるものと考えられます。以上のように新株予約権や新株の発行に問題がある場合は差止め請求をすることができます。一般的にこのような差止請求がなされる場合は経営支配権に争いが生じている場合や敵対的買収がなされ、その防衛策として新株予約権が発行された場合(ポイズンピル)が多いと考えられます。新株予約権や新株を発行する場合にはその手続きだけでなく、差止めや発行無効の訴えについても予め対応を検討しておくことが重要と言えるでしょう。

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