新型コロナで相談多数、整理解雇の要件について
2020/04/09   労務法務, 労働法全般

はじめに

 新型コロナウィルスによる業績悪化で解雇されたり雇い止めされたりする見込みの労働者が約1000人に上るとされております。学生の内定取り消しも既に22件32人とのことです。今回は会社の業績悪化などを理由とする整理解雇について見ていきます。

事案の概要

 厚生労働省の発表によりますと、全国の労働局を通じて集計した結果、約1000人の労働者が整理解雇される見通しとされております。新型コロナウィルスの影響により中国からの部品調達の遅れや観光客の激減によって製造業や宿泊業、サービス業などを中心に業績が悪化しており、全国の労働局では従業員を整理解雇したいとの相談が多く寄せられているとのことです。2月の有効求人倍率も前月を下回っており、全国の労働局は雇用調整助成金の特例措置などを生かして企業支援に力を入れたいとしています。

整理解雇とは

 整理解雇とは通常の解雇と違い、労働者ではなく経営不振や事業縮小といった会社側の事情による人員削減のための解雇を言います。整理解雇について直接に規定した法律はなく、多くの判例や裁判例によって確立してきた法理です。会社側の事情でなんら落ち度のない従業員を解雇することから従業員の生活基盤や将来設計に与える影響は重大です。そこで整理解雇として有効と認められるためには4つの要件を満たす必要があるとされており、満たさない場合は解雇権の濫用として無効とされております。以下具体的に要件を見ていきます。

整理解雇4要件

(1)人員削減の必要性
 まず最初の要件は人員削減の必要性です。経営状態が悪化して経営不振を打開するためには従業員を削減しなくてはならないという状況でなければなりません。これには具体的な数値や指標からどの程度の人員削減が必要かを資料などで客観的に説明していく必要があります。

(2)解雇回避努力
 人員削減の必要があるとしても解雇という最後の手段に出る前に希望退職の募集や配転、出向など、より労働者に影響が少ない手段を講じることが重要です。会社として従業員に対し真摯にあらゆる努力をすることが信義則上求められております。どの程度の努力が必要かは会社や市場などの具体的状況の下で各事案ごとに異なると言えます。

(3)人員選定の合理性
 どの従業員を解雇するのか、その選定には公平で合理的かつ客観的な基準によることが必要です。勤務地や貢献度、年齢、家族構成などが考慮されることが一般的と考えられます。人員整理を利用して労働組合員を解雇するといった恣意的な運用は許されないとされております。

(4)手続きの相当性
 整理解雇をする際には、対象となる労働者や労働組合と十分に協議し、整理解雇の必要性や時期、人数などを真摯に説明し、配転や待機、希望退職者募集などの努力を講じる必要があります。これらの手続きを経ずに抜き打ち的に解雇することはできません。

雇止め法理

 従業員が有期雇用の場合には雇止めが問題となります。労働契約法19条では、契約更新が反復継続しており正社員の解雇と同視できる場合や契約更新がされると期待するにつき合理的な理由がある場合には、更新の拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は同一条件で更新したものとみなされます。この客観的に合理的な理由とは上記整理解雇4要件と内容はほぼ同じと言われております。やはり必要性や解雇回避の努力、人選や手続きが重要です。

コメント

 世界的な新型コロナウィルスの蔓延により経済活動が低迷し、多くの企業では業績が悪化しております。それに伴い整理解雇や雇止めを考えている事業者も多いとされております。コロナウィルスによる業績悪化は上記要件のうち人員削減の必要性要件に影響を与える可能性は高いと考えられます。しかしそれは飽くまでも4要件のうちの一つに過ぎず、やはりその他の3要件も満たす必要があると言えます。従業員側には人員整理をしなくてはならない旨の十分な説明と、解雇以外の手段の提示や相談を真摯に行っていく必要があります。人員整理や雇止めを検討している場合には、これらの要件を念頭に慎重な検討と十分な手続きを履践していくことが重要と言えるでしょう。

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