最高裁が否定、盗難車所有者の責任について
2020/01/22 危機管理, 民法・商法

はじめに
盗まれた車が起こした交通事故について所有会社が賠償責任を負うかが争われていた訴訟の上告審で最高裁は21日、所有会社は責任を追わないとして賠償請求を退けていたことがわかりました。管理上の責任は無いとのことです。今回は盗難車が事故を起こした場合の所有者の責任について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、2017年1月18日未明に川崎市内にある築炉会社の独身寮に停めてあったワゴン車が盗まれ、午前5時半頃に横浜市内で停車中の大型トラックに追突し計4台が絡む多重事故となったとされます。同社では車の鍵は寮内の食堂で保管することになっていましたが、当時従業員が車の施錠をせずに鍵を運転席の日除けに挟んだままにしていたとのことです。事故に巻き込まれた車を所有する会社と保険会社が同社と相手取り提訴しておりました。一審は責任を否定したものの二審東京高裁は一転して責任を認めました。
盗難車と事故の責任
車が盗難にあい、盗んだ者がその車で交通事故を起こした場合、誰が賠償責任を負うのでしょうか。車を盗み事故を起こした窃盗犯人自身が責任を負うのは言うまでもありませんが、車を盗まれた所有者にも賠償請求されることがあります。通常窃盗犯には資力が無く十分な賠償を期待できないからです。また所有者側にも車を適切に管理せずに盗まれてしまったという落ち度がある場合があるという点も理由となります。以下法的構成と裁判例を見ていきます。
自賠法による責任
自動車損害賠償保障法によりますと、「自己のために自動車を運行の用に供する者」は「これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる」としています(3条)。このいわゆる運行供用者に該当する場合は所有者である会社も責任を負うということになります。この運行供用者は、雇用関係など日常の自動車の運転および管理状況からして客観的外形的に自動車の所有者のためにする運行と認められる関係にある場合に認められるとされております(最判昭和39年2月11日)。つまり運転していた者と雇用関係などの身分関係があり、所有者が運転者に運転を許容すると予想されるような関係の場合と言えます。そのため盗難の場合は原則として認められないと言えます。
民法上の責任
次に民法の不法行為責任の規定(709条、715条)に基づいて賠償請求することが考えられます。このような場合、一般的に賠償責任発生の要件は①管理上の過失の存在、②損害発生との相当因果関係、とされております。たとえば車のドアを施錠せずに鍵を刺したまま路上や公衆が立ち入る場所に駐車していた場合などには管理上の過失が認められると言えます。また盗難と事故が時間的・場所的に近い場合には過失と事故との間に因果関係が認められる場合があると言えます。つまり管理上の過失があっても、事故が発生するまでに時間が空いていたり、運転者の不注意な行為などが介在している場合は認められにくいと考えられます。
コメント
本件でも車の所有会社側に管理上の過失があるのか、事故との因果関係はあるのかが争点となっておりました。最高裁は会社側が寮内の食堂で鍵を保管する旨の内規を定めていたことから車盗難の防止措置を講じており保管上の過失があるとは言えないとしました。従業員自身に不注意な行為があったものの、会社の管理体制としては過失があったとまでは認められないと判断されたものと考えられます。以上のように車が盗難にあった場合、本来被害者であるはずの所有者も場合によっては事故の責任を負わされる場合が有りえます。その要件は上記のように管理上の過失と因果関係です。従業員が会社所有の車などを使用している場合は駐車時などの管理方法を今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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