キッズパーク元会長を逮捕、会社法の特別背任について
2018/10/26   コンプライアンス, 会社法, 刑事法

はじめに

 岐阜県警がキッズパークを運営する会社の元会長らを会社法の特別背任容疑で逮捕していたことがわかりました。会社の売上を自分たちが運営する別会社に移し替えていた疑いがあるとのことです。今回は会社法の特別背任について見ていきます。

事件の概要

 報道などによりますと、キッズパークを運営する「あそびの森」(岐阜市)の元会長長谷部浩一容疑者(57)ら2人は、2013年11月から2017年3月にかけて、あそびの森の取引先に対し、自分たちが役員を務める別会社に合わせて約800万円を振り込ませ、あそびの森の利益を移し替えていた疑いがもたれております。長谷部容疑者は「自分のためにやったことではない」と供述しているとされます。

背任罪とは

 「人のためにその事務を処理する者」が、「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」で「その任務に背く行為」をし、本人に「財産上の損害」を加えた場合に背任罪が成立します(刑法247条)。簡単に言いますと、人のためにその人の事務を処理する人が、利益を得る、またはその人を害する目的で任務に背く行為をすることです。典型的には融資担当者が回収の見込みがない融資をしたり、会社員がライバル会社に機密情報を漏らすといったことがあげられます。違反した場合は5年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

背任罪の具体的要件

(1)事務処理者
 背任罪の対象は、信任関係のもとに他人の事務をその人に代わって行う事務処理者です。いわゆる身分犯で事務処理者でなければ成立しません。この関係は契約や法令、慣習などあらゆる原因から生じます。典型的には会社に雇用されている従業員などです。ただし事務の内容が裁量の無い機械的事務に過ぎない場合は該当しません。

(2)図利加害目的
 背任罪が成立するためには、自分または第三者の利益を図るか、本人に損害を与えることを目的としていることが必要です。事務の主体たる本人、通常は会社等ですが、その利益を図ることを目的としているなら仮に任務に背く行為であったとしても成立しません。

(3)任務違背行為
 背任罪の任務に背く行為とは、その事務の処理者として信義則上当然に行うべき行為しなかった場合、つまり通常の事務処理の範囲を逸脱していた場合を言います。この範囲内であれば多少の冒険的判断があったとしても該当しないことになります。

会社法の特別背任

 会社法の特別背任とは、取締役や監査役といった特別の身分のある者が背任行為を行った場合に成立する特別な背任罪です(会社法960条)。具体的には取締役、監査役、会計参与、支配人、検査役、執行役、発起人、清算人などが該当します。たとえば会社の取締役が不正融資を行った場合などが典型例です。違反した場合は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金となり、かなり法定刑が加重されております。なお通常の背任罪にも言えることですが、これらの事務処理者以外の者がこれらの者に協力した場合などは身分がなくても共犯となります(刑法65条)。

コメント

 本件で長谷部容疑者は「あそびの森」の元会長という事務処理者としての身分があります。また「あそびの森」の売上を自己の運営する別会社に移し替えた疑いがもたれており、事実であった場合には通常の事務処理の範囲を逸脱していると言えます。また同容疑者は自分のためにやったことではないと主張しておりますが、図利加害目的は第三者の利益を図る場合や会社に損害を与える目的である場合も含まれます。以上のように背任罪は刑法犯のなかでも企業活動に関わりの大きい犯罪と言えます。特に会社の役員が別会社に財産を移したり、不正融資を行った場合などは注意が必要です。どのような場合にどのような法令に違反することになるかを正確に把握しておくことが重要と言えるでしょう。

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