3割超が株式報酬を導入、役員報酬について
2017/07/11   商事法務, 会社法

はじめに

日経新聞電子版は10日、上場会社の3分の1が役員への報酬として株式報酬を導入した旨報じました。固定の基本報酬に加えて中・長期の業績連動型報酬制度の導入が進んでいるようです。株主と同じ目線で業績アップを目指す経営が期待されているとのことです。今回は業績連動型報酬と会社法上の規制について見ていきます。

業績連動型報酬とは

業績連動型報酬とは、特定の期間における企業の業績評価に基づいて報酬を支払う制度を言います。たとえば毎年度、会社の業績に応じて役員にポイントを付与し、その後ポイントを株式に変えて支給するといったものや、予め定めた目標の達成度合い、自己資本比率などに応じて報酬額を決定するといったものが挙げられます。また一定の期間内に一定の価格で株式を購入する権利を報酬として与える、いわゆるストックオプションも業績連動型報酬としての機能を有していると言えます。業績を上げ株価を上昇させ、固定額で購入してその後売却すれば差額が利益となります。いずれも会社の業績向上へのインセンティブを付与する報酬制度と言えます。

会社法上の規制

会社法361条1項によりますと、取締役の報酬、賞与その他職務執行の対価として会社から与える財産上の利益については定款か株主総会の決議によって定めなければならないとしています。具体的には①額が確定しているものについてはその額、②額が確定していないもの、例えば業績連動型報酬などについてはその具体的な算定方法、③金銭でないもの、たとえばストックオプションや株式報酬などの場合にはその具体的な内容を予め定めることになります。「取締役の報酬の総額は年◯億円までとする」などと定め、具体的な配分は取締役会決議に委ねる場合が一般的です。

役員報酬に関する判例

(1)退職慰労金
退職慰労金が361条の「報酬」に該当するかについて判例は、取締役の在職中における職務執行の対価として支給されるものである限り「報酬」に該当するとしています(最判昭和39年12月11日)。つまりいかなる名目であっても職務執行の対価としての意味合いがあれば報酬に該当し、定款または株主総会による決定が必要であるということです。

(2)使用人兼務取締役の場合
取締役が使用人としての給与も支給されている場合にその給与分についても「報酬」に該当するかにつき判例は、使用人としての給与体系が確立しており、使用人分は別に支払う旨が明示されていれば「報酬」には含まないとしています(最判昭和60年3月26日)。このような場合であれば使用人分は明確なので361条の脱法行為には当たらないということです。

(3)報酬の事後的変更
定款や株主総会に基づいて一旦具体的に定まった役員報酬につき会社が事後、一方的に変更することができるのかという点に関して判例は、報酬額が具体的に定まった場合、その報酬額は会社と取締役の契約内容となり契約当事者である会社と取締役の双方を拘束するとし、その後仮に株主総会で無報酬とする決議があったとしても当該取締役が同意しない限り報酬債権を失わないとしました(最判平成4年12月18日)。これはたとえ取締役の職務内容に著しい変更があったとしても同様としています。

コメント

業績連動型報酬の制度はもともとは欧米の企業で始まったものです。会社役員の報酬はその働きに見合ったものでなければならないとの考えによるものとされております。日本においては役員報酬の額自体は欧米に比べて高くはないものの、固定報酬の比率が大きすぎるとの批判がなされてきました。これを受けコーポレート・ガバナンスコードでは日本の役員報酬体系についても業績連動型の比率を増大させていくものとしています。日本において従来から使用されてきたストックオプションは業績を株価という指標で評価する形のインセンティブ報酬ですが、会社の業績とは無関係に経済状態によって株価が下がる恐れもあることから役員の働きに必ずしも連動しないという弱点があります。そこで売上高や自己資本比率などを評価の指標としてポイントを付与するといった新しい形の業績連動型報酬が広まっております。株主総会によって定めることにより柔軟な報酬体系を検討することも重要です。なお一旦具体的に定まった額を変更する場合は当該取締役の合意が判例上求められているという点についても留意することが重要と言えるでしょう。

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