東和フードが基準日を5月末に変更、基準日について
2017/06/30   総会対応, 会社法

はじめに

「椿屋珈琲店」などを運営する東和フードサービスは、4月末としていた議決権行使の基準日を1ヶ月先送りし、5月末に変更すると発表しました。これにより毎年度の定時株主総会も1ヶ月程度遅く開催されることとなる見通しです。今回は会社法上の基準日制度について見ていきます。

事案の概要

東和フードサービスの発表によりますと、26日開催の取締役会にて定款を一部変更し、議決権行使基準日と株主総会の招集時期を1ヶ月先送りする旨の決定を行ったとのことです。現行定款では議決権行使の基準日は毎年4月30日、定時株主総会は毎年7月に招集するとしています。これを変更し、基準日は毎年5月31日に、定時株主総会は毎年8月末日までに招集する旨の定款変更を7月25日の定時株主総会で行う予定とのことです。経営情報の適切な開示と株主総会開催の時期を柔軟に設定できるようにし、株主との対話を促進することを理由としています。これにより株主が有価証券報告書を熟読し、吟味した上で余裕をもって株主総会に臨むことができるというものです。

基準日とは

基準日制度とは、会社が一定の日を定め、その日において株主名簿に記載されている株主を権利行使者とする制度を言い、その日を基準日と言います。多数の株主が随時入れ替わることを予定している株式会社においては、議決権行使等を行える株主を把握し、確定することは容易ではありません。そこで会社の株主確定作業の便宜を図ることが基準日制度の趣旨と言えます。これにより株式会社は基準日時点に株主名簿に記載されている者を権利行使者と扱えばよいことになります。

基準日の定め

会社法124条2項によりますと、会社が基準日を定めるにあたっては、まず当該基準日における株主が行使できる権利の内容を定めることになります。この行使できる権利の内容は議決権だけでなく、株式の株主割当や剰余金配当、株式買取請求権など様々なものが存在します。そしてこの権利の行使は基準日から3ヶ月以内に行うものでなければなりません(同かっこ書)。つまり議決権行使基準日を3月末と定めた場合6月末頃までに株主総会を招集することになります。また行使できる権利が議決権である場合は、基準日後に株式の新規発行などによって新たに株主になった者にも議決権行使を認める旨を定めることもできます(同4項)。なお基準日を定めた場合は、その基準日の2週間前までに公告をしなければなりません(同3項)。ただし定款によって定めた場合は不要です(同ただし書き)。

基準日の定めに関する裁判例

上記のように基準日を定款で定めた場合は公告は不要としていますが、2週間という期間制限も適用がないのでしょうか。この点につき裁判例では「当該定款の定めは、基準日の2週間前までに存在することが必要であると解するのが相当である。」としています(東京地判平成26年4月17日)。確かに定款で定めるためには株主総会での特別決議(466条、309条2項11号)を要することから、株主への周知はこの時点である程度果たされていると言えます。しかしこの2週間という期間は株主に権利行使についての判断と準備の猶予を与えるものとの意味合いもあると思われることから定款による場合であっても必要と判断されたものと考えられます。

コメント

本件で東和フードサービスは、事業年度が終了し有価証券報告書が提出されてから基準日までにあまり時間がないという現状を改善するために基準日を1ヶ月先送りする方針を固めました。これにより株主に報告書を読み込む時間の余裕が生まれることになります。現状日本の多くの株式会社は事業年度を4月1日から翌3月31日までとしており、その3ヶ月以内の範囲で定時株主総会を開催します。それゆえに各社の定時株主総会は6月から7月にかけて集中することになります。上記のように基準日は議決権行使の3ヶ月以内でなければならないと定められておりますが、実は株主総会は年度終了から3ヶ月以内に開催しなくてはならないとの定めは存在しません。事業年度終了後「一定の時期」としか規定されていないわけです(296条1項)。つまり本件のように基準日をずらすことによって定時株主総会の開催時期もずらすことは可能と言えます。多くの株主が余裕をもって株主総会に臨み、会社と株主間の充実した対話を確保できる期間設計を考えることも重要と言えるでしょう。

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