改正消費者契約法が施行、過量契約とは
2017/06/07   コンプライアンス, 消費者取引関連法務, 消費者契約法, その他

はじめに

改正消費者契約法が3日、施行されました。高齢者や認知症患者が不必要に過量な物品を買わされた場合に取り消すことができるようになります。また契約の際に虚偽の説明をする不実告知による取消の範囲も拡大されます。今回は改正消費者契約法について見ていきます。

改正の経緯

高齢化の進展やIT技術の発展にともない消費者が受ける消費契約被害がますます多様化してきた昨今、内閣府の消費者委員会は消費者契約法の解釈の明確化、それで対応できないものは法改正を目指してきました。それを受け昨年6月3日、消費者の利益を図るため取消の対象となる消費者契約の範囲を拡大し、無効とする消費者契約の条項を追加する改正消費者契約法が公布されました。消費者契約法の改正は2007年の団体訴訟制度導入以来となります。以下改正点について具体的に見ていきます。

過量契約の取消し

改正前の消費者契約法4条では契約の際に事業者が消費者に対し、不実告知や重要事項の不告知等を行った場合に取り消すことができるとしていました。改正法4条4項では新たに過量契約の条項が追加されました。「物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの分量、回数又は期間」が「消費者にとっての通常の分量等」著しく超えるものであることを事業者が知っていた場合に取り消すことができるようになりました。そしてここに言う「通常の分量」とは契約目的物の内容、取引条件、勧誘の際の消費者の生活状況、消費者の認識に照らし、通常想定される分量を言います。一人暮らしの高齢者に対し通常は消費しきれない健康食品や布団、着物等が該当します。そしてそのことにつき事業者が悪意である場合、すなわち過量であることを知っていた場合に取り消されることになります。常識から見て過量の場合は悪意性を否定することは困難と言えるでしょう。

不実告知の範囲拡大

改正前の不実告知の規定では消費者契約の目的となるものについての「質、用途その他の内容」「対価その他の取引条件」であって通常契約締結についての判断に影響を及ぼすものについて不実告知、不利益な事実の不告知を行った場合に取り消すことができるとしていました。改正法4条5項ではそれらに加えて「目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情」も追加されました。従来は販売目的物についての不実告知、たとえば「このタイヤは溝がすり減っても滑らず安全です」といったものが該当し、「お客さんの車のタイヤ減ってて危ないですよ」という事実は該当しませんでした。改正法では後者についても該当することになります。

その他の改正点

改正前の取消権の消滅時効は「追認することができる時から6ヶ月間」となっていたところを1年間に伸長されました(7条1項)。また事業者側に債務不履行があった場合や、目的物に隠れた瑕疵があった場合の契約解除権を排除する契約条項を置いた場合は、その条項は無効となります(8条の2)。また消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする規定に具体例として「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約を申し込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項」が例示されました(10条)。

コメント

以上のように今回の消費者契約法の改正で新たに取消事由や無効事由が追加されております。特に過量契約では不実告知等を行っていなかったとしても、社会通念上不必要と思われる量を販売した場合には取り消される可能性があります。また不実告知においてもこれまでは取消の対象とはならなかった販売目的物以外についての不実告知についても取消の対象となります。また無効とされる契約条項も追加されております。これらを踏まえて、通常不必要な量を販売していなかったか、今後どのような契約が取り消されることになるかを調査・周知するとともに、従来使用していた基本契約約款を見直して無効事由が含まれていないかを見直すことが重要と言えるでしょう。

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