エイト日技に賠償命令、消滅時効の起算点について
2017/06/02   訴訟対応, 民法・商法

はじめに

日経新聞電子版は5月31日付で、宮崎県の廃棄物処理施設の水槽に亀裂が生じるなどの不具合生じていた問題で設計者のエイト日技に対し県環境整備公社が賠償を求めていた訴訟で19日、宮崎地裁が約11億円の賠償を命じていたと報じました。エイト日技側は時効消滅の主張をしていたとのことです。今回は時効の起算点について見ていきます。

事件の概要

宮崎県環境整備公社が運営する廃棄物処理施設「エコクリーンプラザみやざき」は株式会社エイト日本技術開発が設計し三井住友建設、吉原建設、竹盛工務店JVが施行し2005年11月から稼働を始めました。しかし浸出水調整池の水槽に亀裂が生じ漏水を起こすなどの不具合が生じていました。2009年1月、外部調査委員会の調査で盛り土地盤が吸水と乾燥を繰り返し脆くなる「スレーキング」現象により沈下していることが判明し、エイト日技の設計の不備と施行不良があった可能性を指摘したとのことです。公社は他社に約12億円で補修工事を発注し、エイト日技、三井住友建設等に対し約19億円の賠償を求めて宮崎地裁に提訴しました。エイト日技側は賠償請求権は提訴時に既に時効により消滅している旨反論しました。

時効とは

時効とは一定期間の経過により権利を取得したり、権利が消滅する制度を言います。一定期間継続した事実状態を保護して法的安定性を確保し、また証拠の散逸等による立証の困難を救済すること、権利を行使せず放置する者を保護しないといった点が根拠と言われております。なお時効はそれによる利益を受ける者がその利益を受ける旨の意思表示すわなち「時効の援用」をしなければ効果は発生しません(民法145条)。たとえ時効だとしてもあえて義務を履行したいといった当事者の意思を尊重する趣旨です。

消滅時効の期間

(1)債権の消滅時効
売買代金や貸金返還債権などの債権の消滅時効は原則民法上は10年(167条)、商行為による商事債権は5年(522条)となっております。一定の債権についてはそれよりも短い短期消滅時効が定められております。医療行為、工事の設計・施行等に関する請負代金債権は3年(170条)。弁護士報酬は事件が終了してから2年(171条)。従業員の給料、運送費、旅館、飲食店、娯楽施設の料金等は1年となっております(174条)。なお現在審議中の民法改正案では債権の消滅時効は権利行使ができることを知ったときから5年、行使ができる時から10年となる予定です。

(2)判決で確定した権利の消滅時効
裁判所の判決や裁判上の和解、調停等で確定した権利の場合は10年となります。本来仮に10年よりも短い短期消滅時効が定められている債権であったとしても、裁判所による訴訟等を経て確定した場合はその時から10年とされることになります(174条の2)。

(3)その他の消滅時効
これら以外にも債務不履行責任による賠償債権は10年、不法行為による賠償請求債権は損害と加害者を知ったときから3年または不法行為時から20年(724条)、不当利得返還請求債権は10年となっております。また約束手形3年、小切手は6ヶ月などの短期消滅時効も存在します。

時効の起算点

それでは時効はいつから進行するのでしょうか、時効の起算点が問題となります。時効は上記の通り権利の行使ができるにもかかわらずそれをせず放置していることへの一種の制裁といった意味合いもあることから、権利の行使ができる時から起算されます(民166条)。たとえば弁済期が到来したとき、不法行為による損害と加害者を知ったときなどが当たります。

コメント

本件でエイト日技側は宮崎県環境整備公社が水槽の不具合を把握したのが2005年5月頃であるとして、その時から賠償請求が可能になっていたのであるから、そこから既に3年が経過し時効消滅していると主張しました。本件の債権は短期消滅時効にかかる工事の設計・施行に関する債権ではなく不法行為による賠償債権であると考えられます。この場合損害の発生と加害者を知ったときから3年で時効となります。しかし宮崎地裁は賠償請求が可能となったのは外部調査委員会が最終報告をまとめた2009年1月であり提訴した2010年4月時点では時効は未完成であったとしています。つまり最初に不具合を発見したときではなく、調査委員会の調査結果が出たときを起算点としているということです。過去の判例でも権利を行使できるとは、法律上の障害が無くなっただけでなく、「権利の性質上その行使が現実に期待できることを要する」としています(最判昭和45年7月15日)。本件でも不具合だけでなくそれが誰のミスによるものかは調査結果を見なければわからず提訴は期待できなかったということです。このように訴訟で時効を主張する場合、または時効主張をされた場合は、いつから現実に権利行使ができたかを吟味することが重要と言えるでしょう。

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