三菱自動車が報酬額を3倍に、「役員報酬規制」について
2016/12/16   商事法務, 会社法

はじめに

三菱自動車は14日、臨時株主総会で役員報酬の上限を現在の3倍に増額する議案を提出し可決されました。会社法上、株式会社の役員の報酬に関しては一定の規制が設けられております。今回は役員等の報酬規制について概観していきます。

事案の概要

燃費不正に関する不祥事から再建を目指す三菱自動車は14日、千葉の幕張メッセで臨時株主総会を開催しました。山下副社長による燃費不正問題に関する経過説明のあと現三菱自動車の筆頭株主である日産自動車からカルロス・ゴーン氏ら首脳陣の取締役就任の件とともに役員報酬の上限額を現在の約10億円から3倍の30億円に引き上げる案が上程されました。来年1月1日から経営体制を抜本的に見直す上で役員には業績改善に責任を持つ仕組みが必要とし、業績連動型報酬制度を取り入れ、額も増額する必要があるとしています。出席株主からはまだ黒字化への道筋も立っていないことから時期尚早である等の批判の声も上がりましたが、過半数の賛成により可決となりました。

会社法上の報酬規制

役員等の報酬の決定は本来業務執行の一環であり取締役会や代表取締役が決定することができるはずですが、会社法ではそれを制限しております。役員等が自己の報酬を決定するといわゆるお手盛りとなり過剰な報酬額となる恐れがあるためです。会社法361条によりますと取締役の「報酬、賞与その他の職務の対価」についてはその額、算定方法等を定款か株主総会決議によって定めるとしています。また監査役についてはその定められた額の範囲で監査役の協議によって個々の額を決定でき(387条2項)、株主総会で報酬について意見を述べることができます(同3項)。会計監査人については取締役が報酬を決定することができますがその際には監査役の同意が必要となります(399条1項等)。これらは監査の独立性を確保することが目的です。

報酬とは

では規制の対象となる報酬とはどのようなものでしょうか。判例によりますと、名称の如何を問わず取締役等の業務執行の対価として支給されるものである限り「報酬」に該当するとしています(最判昭和39年12月11日)。判例の事例としては退職慰労金、ストックオプションとしての新株予約権等が報酬に該当するとしています。なお使用人兼務取締役の使用人分給与については給与体系が確立しており、使用人分は別に支払う旨を明示すれば報酬には該当しないとしています(最判昭和60年3月26日)。

報酬の決定方法

会社法上は定款に定めるか株主総会の決議による旨規定されておりますが、一般に定款に報酬額を記載する方法は採られておらず、総額や限度額を株主総会によって決定し、個々の役員への報酬は取締役に一任するという方法が多く採用されております。また毎事業年度ごとに株主総会の決議を要するわけではなく、内容を変更する場合のみ決議をすればよいとされております。取締役会に一任された個々の報酬額の決定をさらに代表取締役に再委任することも判例は認めております(最判昭和34年10月5日)。要はお手盛りの弊害を防ぐという会社法の趣旨の範囲内であれば決定方法はある程度融通がきくということです。

事後承認の可否

では株主総会の決議を経ずに決定され支払われた報酬につき、事後的に株主総会の承認決議を得ることは許されるのでしょうか。この点につき判例は、事後的であっても株主総会の決議を経ることによりお手盛り防止の趣旨目的は達せられるのであるから、この趣旨を没却する特段の事情がない限り認められるとしています(最判平成17年2月15日)。事後承認であっても決議を得れば原則有効となるということです。

コメント

三菱自動車の定款によりますと、その36条で報酬については株主総会の決議によるとしています。そして今回の臨時株主総会で業績連動型報酬制度となり限度額が30億円となりました。これにより毎年度の当期利益の応じて30億円の範囲で個々の役員の報酬を取締役会で決定することが可能となると考えられます。このように役員報酬の枠を増額する場合はその都度株主総会の承認を要します。株主総会の承認がない報酬の支払は違法となり不当利得返還の対象となることもあります。また定款や株主総会で定められた報酬限度額を超える報酬の支払は税法上も不相当な額として損金に計上できないという扱いをうける場合もあります(法人税法34条)。過度な報酬は会社財産に負担となり健全な経営を脅かしますが、一方で役員の業務取組に対するインセンティブを与える意味で重要なものと言えます。両者のバランスを取り、株主も納得できる報酬体系を構築することが重要と言えるでしょう。

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