最高裁が仮差押での成立を認定、「法定地上権」とは
2016/12/02   不動産法務, 民法・商法

はじめに

土地と建物のうち、建物だけが差押えられた場合に発生する法定地上権を巡る訴訟の上告審で最高裁は2日、仮差押段階で土地と建物の所有者が同一であれば法定地上権が成立するとの判断を示しました。民法や民事執行法等で規定されている法定地上権。その概要を見ていきます。

事件の概要

判決書によりますと、平成14年5月当時、福岡県の男性は本件土地とその上に建てられていた建物を所有しておりました。同5月23日、本件土地の一部と建物について債権者により仮差押がなされました。その後平成19年3月、所有者の男性は本件土地の仮差押がなされていない一部を男性の妻に贈与しました。平成20年2月、強制競売手続の開始決定により差押えがなされ被告側業者が落札し、男性の妻が所有する土地の上に本件建物を所有して占有するに至っております。男性の妻は所有権に基づき土地の明け渡しと明け渡しまでの賃料相当分の損害金の支払を求めて福岡地裁に提訴しました。一審二審は原告側の主張を認め、土地明け渡しと月5000円の割合による明け渡しまでの損害金の支払を命じました。

法定地上権とは

法定地上権とは土地およびその上に存在する建物が同一の所有者に属している場合に、強制競売の実行によって異なる所有者に属することになったときに法律上発生する地上権を言います。民法(388条)や民事執行法(81条)、工場抵当法(16条1項)等に規定があります。土地と建物が同一人の所有に属するときは建物のために土地利用権を設定できないことから強制競売後の所有者のために法律が特別に地上権を認めたものです。これが無い場合は建物を落札しても土地の所有者から明け渡しを求められることになり強制競売の実効性が失われることになります。この規定は公益上の理由によるものなので契約当事者間の特約で排除することはできません。土地や建物に抵当権が設定されている場合は民法の規定が、抵当権が設定されていない場合は民事執行法等の規定が適用されることになります。

法定地上権の成立要件

民法388条によりますと、「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、・・・抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは・・・地上権が設定されたものとみなす」としています。また民事執行法81条では「土地及びその上にある建物が債務者の所有に属する場合において、・・・差押えがあり、その売却により所有者を異にするに至ったときは・・・地上権が設定されたものとみなす」としています。つまり①抵当権設定時または差押え時に土地の上に建物が存在すること②土地と建物が同一人の所有に属すること③競売により所有者が異なったことが要件として挙げられます。設定時や差押え時に土地が更地であったり、建物が別人所有であった場合には成立しません。後に同一人所有となった場合でも同様に成立しません。設定当時同一人所有の建物が存在していれば、後に再築した場合でも原則成立することになります。

本件の問題点

本件では仮差押の段階では土地と建物は同一人の所有に属していましたが、その後本差押の段階では土地は男性の妻の名義となっておりました。民事執行法81条では「差押え」となっていることから仮差押の段階で同一人の所有であれば成立するのか、それとも本差押の時点でも同一人所有でなくてはならないのかが問題となっております。

コメント

本件で一審二審は仮差押の時点で同一人所有であっても、強制競売手続に基づく本差押の時点で別人所有となっていた場合には法定地上権は成立しないとしました。別人所有となった時点で土地利用権を設定することが可能となるし、そう解釈したほうが条文の文言に忠実だということです。一方最高裁は仮差押の時点で同一人所有であればその後所有者が異なっても法定地上権は成立するとしました。仮差押後に別人所有となっても建物所有者が土地利用権を設定するとは限らないことから事後別人所有となったことをもって不成立としたのでは酷であること、また仮差押の段階で債権者は法定地上権の成立を前提としていることから不測の損害を与えることになることを理由としています。本判決により仮差押がなされた後に強制競売を妨害する目的で所有名義を他人に移すといったことができなくなると言えます。抵当権の場合は設定時にさえ同一人所有であれば成立すると解されている点に鑑みれば妥当な結論と考えられます。競売物件の取得を検討している場合には本件判決を参考にして、仮差押段階で同一人所有であれば明け渡し請求はなされないと判断しても良いと言えるでしょう。

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