特定商取引法に改正の動き
2016/02/25 消費者取引関連法務, 特定商取引法, その他
はじめに
悪徳業者による高齢者宅等への訪問販売、訪問購入の被害が増加の一途をたどっている昨今、消費者庁は特定商取引法を改正し規制の強化に乗り出す方針を固めました。金相場が高騰し、訪問購入被害対策として成立した平成24年改正が記憶に新しいことと思いますが、今回の改正案は違法と知った上でなお悪徳商法を継続する業者への対策に主眼が置かれているようです。改正案の主な点について見ていきたいと思います。
主な改正のポイント
(1)罰則強化
虚偽の説明をして契約を迫る等の不当勧誘行為に対する罰金刑を300万円以下から1億円以下に大幅に引き上げること。また立入検査を拒否した者に対しては懲役刑を科すことが盛り込まれています。これまでの改正でも効果の薄かった悪徳業者に対して、厳罰化をもって対抗しようというわけです。不当違法な勧誘行為によって得た利益が悪徳業者のもとに残らないように剥奪するという意味合いもあるようです。
(2)業務禁止命令新設
従来までの業務停止命令では、業者は新会社を設立するなど社名を変えて違法行為を繰り返していました。それに対抗する手段として業務禁止命令を新設する方針です。業務禁止命令を受けた業者は、これに従わない場合には3億円以下の罰金が課され、業務停止期間も現行の1年から2年に延長されるようです。
(3)代金返還を命じる措置
現行法では、不当勧誘業者に対し国や自治体が「必要な措置」を指示できるという規定があります。これに加え代金を消費者に返還する等の被害回復措置を命じることができるよう規定を盛り込む方針です。これにより、国や自治体は悪徳業者に返還計画を作成させ、誠実に履行がなされているかを監視監督することができ、従わない場合は6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金を科すことができるというものです。
コメント
特定商取引法は悪徳業者による新たな被害態様が発生するたびに、後追い的に規制を強化してきましたが、これまでの規制強化では功を奏さないことに業を煮やした消費者庁が大幅な規制強化に乗り出したものと言えます。今回の改正案で一番目立つのが罰則の強化です。現行法では行政からの指示違反、検査拒否に対しては100万円以下の罰金しか定められておりません。しかし改正案では、そうした罰金しか定められていない罰則に懲役を追加し、もともと懲役が定められていた業務停止命令違反についても、2年から3年に引き上げるといった、個人の身体に対する罰則を強化しています。また法人である業者自体に対しては罰金の額が300万円から1億円に大幅に増額されています。多少の懲役刑をうけてでも利益を残そうという悪徳業者から利益を剥奪し、違法行為へのインセンティブを無くそうという趣旨だと考えられます。また被害者の現実的な救済を確保するために、被害者からの訴訟提起を待たずに能動的に行政が回復措置を講じれるように考えられています。被害額に対して訴訟負担が大きい人、そもそも被害に気づいていない人の被害回復を促進することが狙いです。これらの改正によって現行法下より悪徳商法が行いにくくなることは確実ではないかと思われます。
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