配転命令のまとめ
2018/08/23 労務法務, 労働法全般

1.はじめに
「子どもを自宅近くの保育園に預けている。」、「親の介護で実家に通わなければならず、引っ越しを避けたい。」。
このような家庭の事情は、どの程度配慮しなくてはならないのでしょうか。
2.配転命令とは
配転命令とは、同一企業内における職種・勤務場所の変更をいいます。
労働契約上の根拠があり、職種の限定・勤務場所の限定がされていない場合は、権利の濫用にあたらない限り認められます。
3.判例
(1)判例では、以下のような基準で権利濫用を判断しています。
①当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合
②当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき
③労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき
このうち、①②についての判断は比較的緩やかであると考えられます。
(2)まず、①業務の必要性については、高度の必要性でなく、企業の合理的運営に寄与する程度、で認められます。
【判断のポイント】
労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化等の使用者の合理的運営に寄与する点があるか、など
( ・ 異職種、遠隔地への配置転換命令につき、権利の濫用であるとした事件(NTT東日本(北海道・配転)事件)
(3)次に②不当な動機目的が認められるのは、限られた場合といえます。
【判断のポイント】
労働組合の弱体化を狙う、嫌がらせとして退職に追い込むための配転か
・自宅から50キロ以上、元の職場から60キロ以上離れた温泉宿泊施設での勤務を命じられたとして認められた例
(4)③通常甘受すべき程度を著しく超える不利益か、が最も問題となると考えられます。
配転により職務内容または勤務場所の変更が生じ、一定程度の不利益は予測されますが、その程度が著しい場合には、権利の濫用にあたるおそれがあります。
【参考になる裁判例】
・71歳の母親、無認可保育所の運営委員を務める妻および2歳の娘と同居する社員に対する転勤命令が濫用に当たらないケース(東亜ペイント事件)
・共働き家庭で子どもの保育園送迎に支障が出るケース
・病気や障害を抱える家族がいるケース(育介26条。ネスレ日本配転本訴)
ここでも上と同様で、配転命令権の権利濫用に当たる場合について簡単に触れておくとよいと思います。
4.今後の展望について
(1)関係法令について
権利の濫用について、比較的緩やかな判断がされていますが、
平成29年3月に育児介護休業法の改正がされるなど、
関心が高まっており、配慮の必要があります。
(2)対応について
配転命令に先立つ対応としては、以下のものが考えられます。
①業務上の必要性
配転命令に先立ち、説明する。
②不当な動機目的でないこと
客観的な基準を設け、対象社員に公表する。
また、訴訟に備え、選定の過程を示した会議録を保存する。
③通常甘受すべき程度を著しく超える不利益か
家庭事情等の聴取を行う。
保育園や入院先、転勤先住居の手配の期間、資金の考慮、単身赴任手当を行う。
質疑応答の機会を設ける。
また、正当な団体交渉の申入れに対して真摯に応じる。
配転命令に先立ち、上記のような対応を行うことで、
トラブルの予防を期待できると考えます。
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