食品の「原産地表示」制度(特に加工食品の原料)のまとめ
2016/10/26   広告法務, 景品表示法, 食料品メーカー

 昨今、加工食品の原料の原産地表示について、TPP対策と併せて注目を浴びています。では、現状として、食品の原産地表示がどのような規律となっているのか。また、これからどうなっていくのか、特に加工食品における原料原産地表示を中心にまとめました。

1 原料の「原産地表示」はなぜ必要か?
 食品(原料)の調達先のグローバル化を受け、また、食品の品質に対する消費者の関心が高まっていることを背景に、国内で製造・加工される加工食品の原料の原産地が、食品の品質に関する情報として重要視されるようになりました。

2 食品表示基準(食品表示法)の制定
(1) 経緯
 「安全性の確保」と「選択の機会の確保」、すなわち消費者の権利尊重と自立支援とともに、「小規模の食品関連事業者の事業活動に及ぼす影響や食品関連事業者間の公正な競争の確保」という事業者の利益、双方に対する配慮の下、散在していた食品表示に関する規定が、食品表示基準(食品表示法)として一元化されました(2015年)。
cf.従来:食品衛生法、JAS法、健康増進法に規制が分散

〔参考・詳細〕
・消費者庁「食品表示法の概要」(pdf)
・国民生活センター「食品表示法の概要」(pdf)
 
(2) 義務主体
 「食品関連事業者」、「食品関連事業者以外の販売者」

(3) 規制内容
 食品表示法は、食品を3つに分類し、それらの性質に照らして、食品表示について規制を施しています。

ア 「加工食品」:加工食品の原料に使われた一次産品(農畜水産物)の原産地に関する表示の義務を負う
[対象]
食品表示基準別表第15の対象加工食品に当たる「22食品群」及び「個別4品目」
(具体的な食品群と品目つきましては、こちらを参照してください)
[対象選定の理由]
①生鮮食品に近いと認識されているものであり、②重量割合50%以上である商品(「① 原産地に由来する原料の品質の差異が、加工食品として品質に大きく反映されると一般的に認識されている品目のうち、② 製品の原材料のうち、単一の農畜水産物の重量の割合が50%以上である商品」)。

表示例1
名 称   緑茶(清涼飲料水)
原材料名 緑茶(日本

イ 「生鮮食品」:加工食品及び添加物以外の飲食物として別表第2に掲げるもの

生鮮食品の表示に関する概要は、下記をご参照ください。
・消費者庁「生鮮食品Q&A(回答)
・国民生活センター「生鮮食品の原産地表示

ウ 「添加物」:食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するもの

添加物の表示に関する概要は、下記をご参照ください。
・消費者庁「食品添加物表示Q&A
 

(4)指示・罰則等
 違反した場合は、指導(「食品表示法の食品表示基準に係る指導の件数等」(pdf))、指示・命令、刑事罰が科される等、適格消費者団体による差止請求制度の対象にもなっています。

3 その他関係法令
(1)不正競争防止法
 商品の原産地〜について誤認させる表示をして商品を譲渡等することを禁止しています(同法2条1項14号)。違反した場合は、懲役または罰金(または併科)が科されます(同法第21条2項1号)。

(2)景品表示法(5条3号等)
 違反には、措置命令等の行政処分、これに従わない場合には刑事処分が科され、また、新たに課徴金制度も制定されました。

(3)関税法
 上記法とは規制の性格を違えますが、食品の輸入(輸出)を伴う場合は、更に、関税法との関係でも、「原産国表示」とその証明方法が重要となります。本まとめとの関係では、内容を割愛いたしますが、詳細については、下記リンクの詳細をご参照ください。

〔2と3⑴〜⑵についての参考・詳細〕
・東京弁護士会「食品表示に関する法-最近の法改正を中心に」(pdf)

〔3⑶についての参考・詳細〕
・東京商工会議所「原産地証明とは
・税関HP「原産地を偽った表示等がされている貨物についての規制の概要
・大阪税関 「EPA原産地規則・入門編~食品の輸入の事例で考える~」(pdf)

4 今後
 冒頭でもご紹介した通り、今月(10月)5日に、消費者庁・農水省より全加工食品の原料原産地表示の義務づけを内容とする素案(下記参考・詳細)が示されました。
 この素案については、全加工食品に表示義務が課されることから、製造業者等では、仕様変更を求められることとなるため、中小事業者にとって負担が大きいとする意見、調達する原材料は、コストと品質のバランスをとりつつ配合するため変動的であり、これを表示することが困難であるとして実効性に不安や疑問を呈する意見があります。
 また、原料原産地表示の提供を受ける消費者においても、そもそも以下に紹介する表示例2のような、「可能性表示」、「大括り表示」などの表示方法も認められる場合があることから、真に消費者の自立的な判断に資する情報提供となるのかを疑問視する声も上がっています。

【素案の概要】
・対象:「国内で製造し、又は加工した全ての加工食品
・対象原材料の産地について、国別に重量の割合の高いものから順に国名を表示することを原則とする。
・同原則に4つの例外を設け、一定の要件を充たせば、「可能性表示」(ex.A国又はB国)または「大括り表示」(ex.A国、B国、C国→「輸入」)などの表示方法も、認められる(表示例2)。

表示例2(大括り表示+可能性表示)
名 称 ポークソーセージ
原材料名 豚肉(輸入又は国産)、豚脂肪、たん白加水分解物、還元
水あめ、食塩、香辛料
※豚肉の産地は、平成○年の取扱実績順

〔参考・詳細〕
・消費者庁・農林水産省(平成28年10月5日)「今後の加工食品の原料原産地表示制度(案)について(pdf)」
・消費者庁「加工食品の原料原産地表示に対する要望
・毎日新聞「原産地表示 全加工食品に「最も重い原料、義務づけ」素案

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