【法務NAVIまとめ】雇用形態の選択肢としての短時間正社員
2016/08/04   労務法務, 労働法全般, その他

 昨今のワークシェアリングや産後の女性の職場復帰の観点から、厚生労働省は、短時間正社員の制度について推奨しています。
そこで、他の雇用形態と比較しながら、短時間正社員の制度について紹介したいと思います。さまざまな雇用形態もご覧ください。

短時間正社員とは?
 厚生労働省は、短時間正社員を、フルタイム正社員と比較して、1週間の所定労働時間が短い正規型の社員であって、①無期労働契約を締結し、②時間当たりの基本給及び賞与・退職金等が同種のフルタイム正社員と同等の者と定義しています。
 なお、正社員・正規社員は、法律で定義づけされているわけではありませんが、雇用期間の定めがないことが一般的な特徴といえそうです。(正規社員と非正規社員との違いとは?
 
メリット
 短時間正社員の特徴の1つは、上述のとおり、通常の正社員と比較して従業員の労働時間が短いことです。ところで、同様の特徴を持つ雇用形態としては、アルバイト・パートや契約社員があります。それらと比較した場合の短時間正社員のメリットを紹介します。
① 出産・育児による社員の離職防止
 短時間正社員の場合、正社員の身分を維持しつつ短い労働時間で働くことができる分、出産・育児をする方にとって望ましい雇用形態であるといえます。そして、企業にとっても、出産・育児をする従業員を支援するという姿勢を打ち出すことができますので、イメージアップというメリットがあります。
② 契約社員の無期労働契約への転換の選択肢
 平成25年の労働契約法の改正により、5年を超えて数回有期労働契約を締結していた労働者から申込があった場合には、企業は無期労働契約への転換が義務付けられています。
 短時間正社員としての雇用契約も、この無期労働契約に該当しますので、有期契約社員や派遣社員と異なり、上記の転換の選択肢になるというメリットがあります。

デメリット
① 管理職への昇進の困難
 通常の正社員の場合、1日の労働時間は8時間程度が一般的です。これに対して、短時間正社員の場合、差異はありますが、1日の労働時間は4~6時間が目安です。したがって、短時間正社員は突発的なトラブルに対応することが困難であるといえます。したがって、短時間正社員については、通常正社員への転換についてあらかじめ制度を整え、昇進の余地を残しておくことが必要です。
② 通常の正社員との調整
 これは、上述のことと関連しますが、トラブル対応は、在社する者が行います。したがって、どうしても、短時間正社員より通常の正社員の方がその処理件数が多くなります。このように、短時間正社員と通常の正社員との間には、その負担程度に差が生じやすく、通常正社員に不満が生じる恐れがあります。
 このような不満は、職場の雰囲気と相まって発生しやすいものですから、管理職等による配慮が必要であると思います。

短時間正社員制度を導入するメリットとデメリットもご覧ください。

手続
① 労働条件・就業規則への記載について
 短時間正社員を雇用する場合には、1年間の所定労働日数・所定労働時間点・1日の労働時間について合意する必要があります。
(例) 「短時間正社員は、1年間の所定労働日数を 150 日以上 250 日以内、所定労働時間数を1,000時間以上1,700時間以内の範囲で雇用契約により定めるものとする。」,「短時間正社員の労働時間は、1日6時間とする。各勤務日の始業・終業時刻は前月20日まで にシフト表により定めるものとする。」
 また、就業規則には、短時間正社員についての定義規定を置くのが望ましいです。
(例)  「 短時間正社員とは、期間の定めのない雇用契約であって、1年間の所定労働時間数を1,000 時間以上1,700時間以内の範囲で労働契約書により定めたものとする。」
② 通常の正社員への移行について
 そして、前述の通常の正社員への雇用の移行のシステムの内容についても、導入理由によって配慮する必要があります。
 たとえば、以前から働いていた通常の正社員の離職を防止を目的として短時間正社員制度を導入する場合には、社員が希望する限り、通常の正社員への移行の条件を緩やかなものにすべきでしょう。
 これに対して、パートタイム労働者・契約社員のモチベーションの向上等を目的とする場合、離職防止の場合とは別の考慮が必要になります。
 そのような労働者のうち希望者のすべてを正社員にすることは、人件費を増加させかねないからです。
 そこで、上司の評価や筆記試験・面接結果から一定以上の評価を得た者といったしっかりした要件を定めて置く必要があります。
③ 短時間正社員が配置される職場への配慮
 さらに、短時間勤務者がいる職場への配慮が必要です。具体的には、短時間勤務者は、労働時間について制限がある以上、要員カウントをする際にも、通常の正社員と異なったカウントをするといった配慮をするのが望ましいです。具体例としては、労働時間が4時間の短時間正社員を0.5人カウントすると定めることが考えられます。

参考(PDFファイル)「多様な正社員」の導入状況

さいごに
今日では、企業に対して、個人が自分らしく生きていけるように働くことができる職場を提供することを要求する動きが広がっており、これに応えることは企業のイメージアップにもつながると考えられます。
 その一環として、短時間正社員導入についても関心を持っていただければ幸いです。

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