SNS上でアニメキャラのアイコンを使用したユーザーの不適切発言への対応まとめ
2017/03/23 知財・ライセンス, 著作権法, エンターテイメント
1 はじめに
最近、SNS上にて、無断でアニメ画像をアイコンの画像に設定したり、投稿したりするケースが多く見られます。
特に、酷いケースですと、アニメのアイコンを使用し、外国人に対する差別的な発言や罵倒・中傷を目的とした発言をしているユーザーも見受けられます。このような場合には、著作権に違反するだけでなく、アニメキャラクターのイメージを阻害するおそれもあります。
そこで、今回はこのようなケースの場合において、アニメーションの版権を持つ企業の法務担当者がどのようなアクションを取るべきかを示したいと思います。
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2 無断転載とは
無断転載とは、著作権のある著作物を著作権者の許諾を得ないで、複製・掲載することを言います。
他方で、下記で説明する「引用」の条件に当てはまれば、自分の著作物の範囲を超えた利用ではないため、無断転載に当たらないといえます。
無断引用はOKだけど無断転載はNG?~3分で分かる引用と転載の違い~(みんなの著検)
3 引用とは
著作権法32条1項本文によると、「公正の慣行に合致」し、「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内」であれば、「公表された表現物」については「引用」することができると規定されております。
また、判例による解釈として、「引用」されている部分が明確であり、「引用」部分と自分が著作した部分の主従関係が明白である必要があるとの判断が示されています。
したがって、例えばアニメ画像を使用してアニメ作品の感想を述べる場合には、当該「引用」の要件を充足すれば、著作権には違反しないことになるといえます。他方で、今回のケースのように、アニメキャラクターのアイコンを使用し、不適切な発言をすることはそもそも「引用の目的上正当な範囲内」とは言えないので、「引用」には該当しないといえます。
4 著作人格権
著作人格権とは、著作者が自己の著作物について持つ人格的な利益を保護する権利です。未公表の著作物を「公表」するかどうかを決定する公表権(18条)、「著作者名」の「表示」の有無を決定する氏名表示権(19条)、自分の著作物の内容又は題号を自分の「意に反して」勝手に「改変」されない同一性保持権(20条1項)があります。
今回のケースにおいては、アニメキャラクターの画像を使用したユーザーが、アニメキャラクター作者の「意に反して」当該アニメキャラクターが発言しないような内容を発言したとして、同一性保持権に反するおそれがあると言えます。
著作者にはどんな権利がある?(公益社団法人著作権情報センター)
5 法務担当者が注意すべきこと
(1)ユーザーの特定について
まず、ユーザーを特定するために「IPアドレス」と呼ばれるインターネット上の住所の開示をSNSを運営する企業に求めることになります。SNSを運営する企業が情報を開示しない場合には、「IPアドレス」の情報を開示してもらうように裁判所に仮処分の申請をすることになります。仮処分が認められれば、「IPアドレス」が判明するので、プロバイダ責任制限法第4条1項に基づき、プロバイダに対して投稿者の個人情報を開示するように求めることになります。
実際に、裁判所が、SNS上で「この詐欺師!」・「自己中ぶさいく」と繰り返し中傷した者の「IPアドレス」の開示を認めた事例があるため、今回の記事において想定されるようなケースではユーザーを特定できる可能性があるといえます。
「ツイッターの投稿者特定に道が開けた」 裁判所の「情報開示命令」得た弁護士に聞く(弁護士ドットコム)
Twitterに対する発信者情報開示の仮処分(BROGOS)
ネット誹謗中傷の犯人特定・発信者情報開示の全手順【入門編】(ネット誹謗中傷弁護士相談Cafe)
(2)ユーザーに対する請求について
投稿者が特定されたならば、SNS上にてアニメキャラクターのアイコンを使用して不適切な発言をしているユーザーに対して、侵害行為の差止請求(112条)をすることが考えらます。また、当該ユーザーの発言により、アニメキャラクターのイメージが下がりキャラクター商品の売上高が減少したことで損害が生じた場合には損害賠償の請求(著作権法114条、民法709条)をすることが考えられます。さらに、名誉回復などの措置の請求(著作権法115条、116条)をする手段も考えられます。
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