アウトドア用品大手パタゴニア、雇い止め訴訟が和解
2025/04/28 契約法務, 労務法務, 訴訟対応, 労働法全般, 民事訴訟法, メーカー

はじめに
アウトドア用品メーカー大手「パタゴニア・インターナショナル・インク」の日本支社に、無期転換前に雇い止めされたとして、元パート従業員の女性が地位確認などを求め、訴訟を提起していました。
この訴訟に関し、4月18日、札幌地方裁判所で和解が成立したということです。
裁判までの経緯
原告となったのは、2019年4月からパート従業員として札幌市の直営店舗で勤務していた女性です。女性は6ヶ月更新の有期労働契約を会社と結んでいましたが、2024年春に入社5年目を迎える予定でした。
労働契約法では同一の会社で有期労働契約が更新されて通算5年を超えた労働者は、「無期労働契約」に転換できると定められています(法第18条)。しかし、雇用期間制限が終了する直前で、雇い止めとなりました。
入社時の面接の際、女性は「契約は5年を超えて更新されない」旨の説明を受けていたといいます。パタゴニア日本支社がパート従業員に対して設けている5年を限度とした“不更新条項”の存在があったからです。
女性は採用当時、パタゴニアでの就業意欲が高く、パート従業員としての契約終了後に正社員になる方法も提示されたことなどから入社を決めたといいます。
しかし、その後、同僚のパート従業員が不更新条項により雇い止めになった現実を目の当たりにしたことから、札幌地域労組に個人加盟し団体交渉を行ってきました。
その際、会社側はこの不更新条項に関し、
・パート従業員を定期的に入れ替えて組織の新陳代謝を図ること
・パート従業員の成長を評価し、5年を超えられる人材を厳しく選別すること
・パート従業員の契約更新への期待権をコントロールし、労働契約法第18条に対応すること
などを目的に定められたもので違法ではない旨説明したといいます。
そこで、女性は社内のスタッフに呼びかけ、2022年の7月に労組・パタゴニアユニオンを結成。代表に就任しました。
しかし、女性は2023年4月下旬、勤務先の店長との面談で「人事評価制度に基づくパフォーマンスが基準に満たない」として雇用契約を更新しない旨、告げられたといいます。
具体的には、現在の雇用契約が終了する同年6月末か、少なくとも次回更新の契約が終了する12月末で退職するように会社側から通告されたということです。
パタゴニア日本支社、労組代表のパート従業員に雇い止め通告(企業法務ナビ)
解決金14万円と口外禁止なしで決着
女性は12月末で雇い止めになったのは不当だとして、雇用の継続や賃金の支払いを求め、2024年2月に訴訟を提起しました。
6月に行われた第一回口頭弁論でパタゴニア側は請求棄却を求めていましたが、10月、パタゴニア側から和解の申し出があり、和解協議が始まったということです。
原告の女性によりますと、会社側は当初、和解交渉の中で、和解内容や原告の感想をはじめ、「和解した事実」以外の内容を全て守秘義務の範囲に含めるよう求めてきたといいます。
しかし女性は、「和解できたとしても感想すら言えないのであれば、訴訟の意義が損なわれかねない」と考え、会社の提案には同意できないこと及び訴訟継続の意向を伝達。最終的に解決金14万円、口外禁止無しで和解決着しました。
なお、和解の条件に女性の復職は入っていないとのことです。
コメント
今回の裁判では無期転換ルールと、企業が設ける「更新上限ルール(不更新条項)」との関係が争点となりました。
事業者側があらかじめ更新上限を設けて雇用契約を終了させること自体は、必ずしも違法とはいえません。しかし、近年ではこの運用が「無期転換逃れ」として社会的に批判されるケースが増えています。
今回の裁判のようなリスクを回避するためには、従業員への透明性のある説明や、労使間での丁寧な合意形成が重要になります。
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