労働基準法改正案から見える今後の企業の在り方
2015/01/08 労務法務, 労働法全般, その他

事案の概要
厚生労働省は、今月26日召集予定の通常国会に提出する労働基準法改正案の骨子を明らかにした。
今回の改正案のポイントは、大きく2つあり、1つ目は働く時間ではなく成果で賃金を払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の導入、2つ目は年次有給休暇の取得について、企業に対し、従業員がいつ有給休暇を取得するか時期を指定することを義務づける「年次有給休暇の時季指定権の企業側への一部移行」である。
「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度とは、いわゆるホワイトカラー労働者(主に事務に従事する人々を指す職種・労働層)に対する労働法上の規制を緩和・適用免除する制度である。今回の改正案では、年収1075万円以上の専門職(金融ディーラー、アナリスト、医薬品の開発者、システムエンジニア等を想定)に限り、週40時間を基本とする労働時間規制から外すものであり、働いた時間ではなく短時間で成果を上げた者をより評価して柔軟で効率的な働き方を促進する狙いがある。
「年次有給休暇の時季指定権の企業側への一部移行」については、低迷する年次有給休暇の取得率への対策である。従来、年次有給休暇の時季指定権は従業員が自ら、いつ休むか時期を指定して請求することが前提となっており、職場への遠慮から申請をしない従業員が多く、企業側に時季指定権を一部移行させることで、計画的に有給休暇を消費させることが狙いである。
コメント
「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度については、年収及び職種により対象が限定されおり、今回の改正案が成立したとしても、その効果は限定的になると考えられる。そもそも、現在でも労働時間と成果が比例しやすい業種は多岐に渡っており、これらの業種に同制度を導入しようとすれば、成果を求めるあまり、かえって無償残業を誘発しかねない。また、成果をいかに判断するかも困難な側面がある。企業側としては成果の客観的な査定方針を明らかにする等の対策が必要となる。いかに同制度を定着させていくかが課題であろう。
また、年次有給休暇の取得については、企業側としては、年末年始やゴールデンウィーク等の大型連休にかけて有給休暇を消費させる等により、効率的に年次有給休暇を消費させて企業の生産性を高めることが可能となる。しかし、企業側主導とすることで、今度は休むことを断れない従業員が出るものと思われる。有給休暇を取得させた結果、従業員が病気等によりやむを得ず休暇を取らなければならない場合に有給休暇が残っていないのでは本末転倒になりかねない。
より良い労働環境の整備は、企業にとって生産性を高めることのできる機会となる。今後の展開が注目される。
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