実際のところ、法務パーソンは何をリスキリングすればいい?

 
 

こんにちは。法務専門キャリアアドバイザーの潮崎です。

近年耳にする機会が増えた“リスキリング”。

 

第四次産業革命とも言われる急激なビジネス環境の変化に合わせて新たなスキルを学び直すという意味合いです。

リスキリングの具体例として、プログラミングやデータ分析、情報セキュリティなどが挙げられることが多いですが、実際、法務パーソンがこれらを学ぶことの意義が見出しにくいという声も耳にします。

今回のコラムでは、この、「法務パーソンのリスキリング問題」を考察してみます。

 
 

1. 何のためにリスキリングするのか?

リスキリングという言葉が陽の目を浴びたきっかけは、2018年のダボス会議(世界経済フォーラム)と言われています。

人工知能(AI)やロボット、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、量子コンピューターなどの技術の急速な進歩(いわゆる「第四次産業革命」)と、それに伴うビジネス環境の大きな変化。

こうした大きな変化に対応できるよう人材を再教育しようという考え方です。
個人の視点でのリスキリングの目的は、主に以下の2つです。

 

(1)自身の職種での雇用が大幅に減少したときに“職種変更”するため
(2)自身の職種で仕事の進め方が大きく変わったときに“新しい仕事の進め方に対応する”ため

 

(1)の職種変更を見据える場合には、第四次産業革命以降でニーズが高まる職種にジョブチェンジすることを念頭に、必要なスキルを学ぶことになりますし、(2)の新しい仕事の進め方への対応を見据える場合には、法務職の働き方の未来から逆算して必要なスキルを学ぶことになります。

そのため、リスキリングに取り組む際は、上記(1)と(2)のいずれを視野に入れて学び直しを行うのかを明確に意識する必要があります。

 

2.法務からジョブチェンジするなら・・

2022年11月にOpenAI社が人工知能チャットボット「ChatGPT」を公開したのを皮切りに、生成AIが急速な発展・普及を見せています。
その結果、頭脳労働を行う人材が持つスキルセットの多くが、その価値を低下させると予想されています。一方で、デジタルデータの取扱量が増えることから、

 

・データサイエンテイスト
・サイバーセキュリテイ専門家

など、デジタルに関する高度なスキルを持つ人材へのニーズは高まると言われています。

リスキリングすべきスキルとして、プログラミングやデータ分析、情報セキュリティなどがしばしば挙げられるのは、こうした理由です。
逆に言うと、法務職以外へのジョブチェンジを視野に入れていないのであれば、これらを学ぶ意義は小さくなるとも言えます。

 

3.生成AIと法務職の共存

では、ジョブチェンジを前提としない場合、どのようなリスキリングを行えばよいのでしょうか?法務領域に高度な生成AIが進出したときに、法務職の仕事がどのような変化を見せるかにかかっています。

この点、リーガルテックの開発者や生成AIの専門家のお話を伺う限り、以下のような未来が予想されます。

 

 

従前から行っていた業務も一定数残る一方、新たに、「生成AIのマネジメント」業務を行う必要がありそうです。

 

・明快で具体的な指示出し
・丁寧な成果物確認
・成長を促す適切なフィードバック

 

今まで法務のマネージャーがメンバーに対して行っていたようなマネジメントを、マネージャーかメンバーかを問わず、全ての法務パーソンが生成AIに対して行うことを意味します。

 

それに伴い、法務組織も、現状の[複数名のメンバー+マネージャー]という構成から、
[生成AI+少数のプレイングマネージャー]という構成へと変遷していくのではと予想しています。

 

その意味では、新たな分野・職種の専門スキルを備えていることよりも、

・“優秀なプレイングマネージャー”であること
・生成AIへの理解が深いこと

が、これからの法務パーソンに求められるところかもしれません。

 

また、生成AIの発展により、ある種、正解を示すことの難易度は下がると言えますが、そこに説得力を持たせられるかは“人”にかかっています

抽象的な理由づけではなく、「以前に〇〇な対応をしたときには、こんなことが起きた」と、具体的な体験を語れる法務パーソンのニーズが高まると考えられます。

 

プレイヤーとしての地力・経験値を高めつつ、意識的に、マネジメントスキル、生成AIに対する知見(プロンプトエンジニアリングスキル)を向上させる。

このような方向でリスキリングに取り組んでみてはどうでしょうか。

 

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株式会社パソナ
法務・ハイクラス専門キャリアアドバイザー
潮崎明憲
大阪市立大学法学部卒、近畿大学法科大学院修了。法務・総務担当として入社した営業研修会社の事業を4年にわたって支えた後、2014年より、米国訴訟における日本企業支援(eディスカバリー)業務に従事。2016年からは、法務専門エージェンシー、株式会社More-Selectionsにてエージェントとして、1000社超の企業の法務職採用に携わる。2021年9月、同社のパソナへの吸収合併を機に、株式会社パソナにて法務・ハイクラス専門のキャリアアドバイザーを務める。
 
 
 
 

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