今から「法務以外の職種」へのキャリアチェンジは現実的か?

 

こんにちは。法務専門キャリアアドバイザーの潮崎です。

少しずつ秋めいた気候になって来ました。
秋の夜長に、今後のキャリアについて悩む人も少なくないようで、この時期は毎年、キャリアの相談を受ける機会が増えます。

職場の人間関係の悩み、組織・社風・業務内容・給与の悩みなど、寄せられる悩みは様々ですが、中には、「今さらながら自分が法務に向いているか疑問に思えてきた」と、法務への適性に悩む方もいます。

 

1.「法務以外の職種」での転職を模索する法務課長

数年前に相談に来てくれた、とあるメーカーで法務課長を務める40代半ばのNさん。彼も、自身の法務への適性・志向性に疑問を持ち、「今後も法務としてキャリアを歩むべきか」と悩んでいる方でした。

実は、長年、法務キャリアを歩んだ後に、違う職種へのキャリアチェンジを模索する人は少なくありません。

「長年法務に携わり、課長にまで昇りつめたのに、どうして、法務に向いていないと思うのですか?」

そう私が尋ねると、以下のように分析してくれました。

 

【気に入っている点】
・仕事の専門性が高い(誰にでも出来る仕事でない)
・地道に知識やスキルを積み上げていける

【合わないと感じる点】
・いろいろ言っても守りの仕事が多く後ろ向き
・あまり感謝されない、社会貢献・事業貢献の実感が薄い
・わがままな事業部からの無茶な要望に対応するのが辛い
・クライアントワークゆえに業務量のコントロールが難しい

 

別の会社の法務部門に転職すればモヤモヤが解消するかもという思いもなくはないそうですが、前職でも同じようなモヤモヤを抱えていたそうで、

「そもそも、自分は法務という仕事を続けたいのか?」

という疑問が頭を離れないといいます。

 

2.法務パーソンはどんな職種で転職できるか?

では、ある程度キャリアを築いた法務パーソンが、法務以外の職種で転職するのは現実的なのでしょうか?結論として、

 

簡単じゃないし、おそらく給料は下がるけど出来なくはない
というのが正直なところです。

やはり、キャリアの積み重ねがある分、法務パーソンは法務職で転職した方が高い年収が期待でき、選考通過率も高いということです。

そんな中で、過去に法務パーソンが別職種で転職に成功した事例としては以下のようなものがあります。

 

・法律関連WEBメディアの編集・ライター職
・リーガルテック企業でのサービス開発職
・弁護士事務所でのパラリーガル職
・司法試験塾でのコンテンツ制作職
・法律系出版社での編集職
情報セキュリティコンサルタント
M&Aコンサルタント

だいたいイメージどおりの職種が多いと思いますが、下二つはやや興味深いと思います。

情報セキュリティコンサルタントは、ルールを読み解き、要件を理解し遵守させるスキル、M&Aコンサルタントは会社法やデューデリジェンスに対する知識が評価されての採用となりました。

 

3.法務パーソンが別職種にチャレンジしたくなったら・・

このように、法務パーソンが別職種で転職することは一応可能ですが、年収がダウンする可能性が高く、さらに新しい職種もミスマッチに終わるおそれもあることから、相応のリスクを伴います。

そのため、別職種へのチャレンジを希望する法務パーソンには、以下のような動きも検討いただくことが多いです。

 

(1)現職で他部署への異動届を出す
転職に比べて、大きく環境を変えずに新職種にチャレンジできるのは魅力です。また、会社によっては異動後も給与がそれほど下がらないケースもあるため、その面でもリスクを抑えることができます。

 

(2)法務+他の管理部門業務を担当するポジションで転職する
求人の中には、法務業務のみならず、総務・人事・IRなど、法務以外の仕事も合わせて担当して欲しいとする求人もあります。
その業務の幅広さゆえに、「自分の経験やスキルでは期待に応えられない」と、応募に二の足を踏む求職者も少なくありませんが、法務の経験しかない求職者でも、選考が通過するケースは少なくありません。すべての業務の経験を積んだ求職者は市場にほぼ存在しないからです。

そのため、こうした求人に応募し、法務以外の管理部門職へのキャリアチェンジの足掛かりとする法務パーソンもいます。

 

(3)法務ポジションで規模の小さな企業に転職する
もう一つは、規模の小さめなベンチャー企業の法務ポジションで転職し、経営層に対し、他職種への関心・志向を発信し続けるというやり方です。
人材リソースが十分でなく、人事登用が柔軟なベンチャー企業では、意欲の高い人材に対し、法務にプラスアルファして希望職種の業務にチャレンジさせてくれるケースがあります。

実際、法務ポジションで入社し、途中で財務業務に手を挙げ、最終的に同社のCFOに就任した法務パーソンもいます。

この場合、入社後、別職種へのチャレンジが確実にできるか不透明な点がネックになりますが、「法務」という現在の武器を最大限生かしつつ別職種へのチャレンジを模索できるのは魅力です。

 

4.法務以外の職種へのチャレンジは変数が多い

冒頭でご紹介したメーカー法務課長のNさん。さまざまな選択肢を模索した結果、最終的に、「法務+他の管理部門業務を担当するポジションで転職する」という選択をしました。

確実に法務以外の職種にチャレンジできつつ、法務業務も一部担当し続けることで、純粋な法務キャリアに戻る道筋も残せる点が決め手となったようです。
現在は、徐々に人事業務の割合が増えているそうで、緩やかな職種チェンジができているといいます。

ここまで、法務パーソンが別職種にチャレンジするための方法をご紹介してきましたが、やはり、通常の転職よりも変数が多くなる分、リスクは少なくないといえます。
職種チェンジではなく、別の選択肢で問題が解決する可能性もあります。

そもそも、本当に法務から職種チェンジをしたいのか。自分自身の現状に照らして、各選択肢にどのようなメリット・デメリットがあるのか。
ぜひ一度、立ち止まって、慎重に検討してみてください!

 
 

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株式会社パソナ
法務・ハイクラス専門キャリアアドバイザー
潮崎明憲
大阪市立大学法学部卒、近畿大学法科大学院修了。法務・総務担当として入社した営業研修会社の事業を4年にわたって支えた後、2014年より、米国訴訟における日本企業支援(eディスカバリー)業務に従事。2016年からは、法務専門エージェンシー、株式会社More-Selectionsにてエージェントとして、1000社超の企業の法務職採用に携わる。2021年9月、同社のパソナへの吸収合併を機に、株式会社パソナにて法務・ハイクラス専門のキャリアアドバイザーを務める。
 
 
 
 

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