【法務NAVIまとめ】システム開発契約の手引き


◆システム開発の第一歩◆
システム開発は、開発対象となる目的物が無形のものであるという特殊性があります。そして、システム開発は、複雑である上に、個別性が高いために、契約書の作成が極めて重要となります。
しかし、システム開発にかかる紛争の現実に目を向けると、正式な契約書が交わされていない事案も少なくありません。そして、システム開発は、紛争になると泥沼化することが多い類型の契約です。
従いまして、泥沼の紛争を回避するため、また、紛争が生じた場合の解決指針を示すために、各システム開発に沿った基本契約書および個別契約書を必ず作成するようにしましょう。
・なぜ、わざわざ契約書を作成するべきなのか?
(出典:べんごしNOTE「システム開発にあたって契約書を作成すべき3つの理由」 http://kondo-law.com/cms/?p=300)

◆システム開発契約の種類・契約ごとの内容の違い◆
システム開発を発注する場合には、システム開発契約の種類に応じて、報酬請求の条件や支払義務の発生条件など様々なことが変わってきます。
大きく分けて、⑴「請負契約」、⑵「準委任契約」という契約形態があります。
⑴「請負契約」とは、当事者の一方が仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約をいいます。
⑵「準委任契約」とは、法律行為以外の業務の遂行を委託する契約をいいます。
⑶なお、「委任契約」とは、当事者の一方が、相手方に対し、法律行為を行うことを委託する契約をいいます。
・システム開発契約の種類とその内容の違いとは…
(出典:システム開発プロジェクトの基礎知識「システム開発の契約の種類と、契約ごとの内容の違い」 http://system-project.info/keiyaku_syurui.html)

◆システム開発契約の契約書作成の注意点◆
上記のような事情から、システム開発契約の契約書は、慎重に作成すること、厳重にチェックすることが求められます。この際にチェックすべき事項、注意すべき事項を以下にまとめました。

⑴まず、システム開発委託のモデル契約書で、よく利用されているのは、経済産業省の研究会による「情報システム・モデル取引・契約書」です。(なお、第一版の追補版では、中小企業でのパッケージ利用等も意識されています。)
・情報システム・モデル取引・契約書<第一版>(PDFファイル)
(出典:経済産業省「産業構造・市場取引の可視化」 http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/softseibi/index.html#05)

⑵次に、システム開発契約におけるチェック事項・契約書のひな形については以下のサイトが参考になると思います。
・弁護士法人が示すシステム開発委託基本契約書ひな形(ZIPファイル)※リンクをクリックするとファイルがダウンロードされますのでご注意ください。
(出典:弁護士法人 クレア法律事務所「システム開発委託基本契約書」 https://www.clairlaw.jp/download/software_development_agreement.html)
・システム開発契約書の解説とチェック事項
(出典:IT企業・インターネットビジネスの法律相談「システム開発契約書の解説・チェック事項」 http://www.ys-law.jp/IT/450/45023/)
・わかりやすくチェックポイントを確認したければ…
(出典:あどみん 法務・知的財産部「システム開発契約書」 http://adminn.fc2web.com/houmu/keiyaku/keiyaku3.html)

⑶なお、中小企業など、いわゆるスモールビジネスにおけるシステム開発契約については、以下のサイトが参考になると思います。
・システム開発契約の契約書作成の3大チェックポイントとは…
(出典:スモビバ!「システム開発契約では契約書が超重要!3大チェックポイントとは?」 http://www.sumoviva.jp/knowledge/law/law-1.html)

◆システム開発契約トラブル事例◆
最後に、システム開発契約に関するトラブル事例を取り上げます。
以下のトラブル事例は、いずれも正しい契約によってある程度防げたと考えられるトラブルといえます。

⑴契約成立以前に作業を開始したためにトラブルになった事例

具体的には、以下の点が問題となった裁判例があります。

①契約締結前のシステム開発費用につきユーザに支払義務があるか(東京地方裁判所平成12年9月21日判決)。

②基本契約及び税関連システムに係る個別契約が成立しているか(名古屋地方裁判所平成16年1月28日判決)。

③契約書がなくとも請負契約が成立しているか(東京地方裁判所平成17年3月28日判決)。

④覚書だけであっても、ユーザに本件システムを採用する義務があるか(東京地方裁判所平成17年9月21日判決)。

⑤ベンダが正式契約書を締結していないサービスの内容を実施したことについて、ユーザに支払い義務があるか。

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例の1乃至5)(PDFファイル)

c.f.契約書がないまま着手した場合の法律関係

契約書がないまま着手した場合

⑵契約形態が請負か準委任かで、トラブルとなった事例

(東京地方裁判所平成3年2月22日判決(昭和62年(ワ)第473号、昭和62年(ワ)第4869号))

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例6)(PDFファイル)

※なお、契約形態が請負か準委任かによって、報酬を請求する条件、再委任の可否等に違いが生じます。

請負と準委任契約

⑶契約内容が不明確でトラブルになった事例

(東京地方裁判所平成12年2月25日判決)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例7)(PDFファイル)

⑷当初予定より規模が膨らんだシステム開発において、工数増加分の費用負担が問題となった事例

(東京地方裁判所平成7年6月12日判決)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例8)(PDFファイル)

⑸業務範囲が不明確でトラブルになった事例

(東京地方裁判所平成12年10月10日判決、東京地方裁判所平成17年4月22日判決)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例9、10)(PDFファイル)

⑹システム開発の仕事の完成と、不具合による解除の可否が争われた事例

(東京地方裁判所平成14年4月22日判決)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例12)(PDFファイル)

c.f.システムの完成とは

システムの完成とは?(納品・検収をめぐる問題)

c.f.システム納入後の不具合・瑕疵

システム納入後の不具合・瑕疵

⑺業務範囲・完成基準が曖昧なためにトラブルになった事例

(東京地方裁判所平成16年6月23日判決)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例13)(PDFファイル)

⑻ユーザがシステム開発に協力せず、トラブルになった事例

(東京地方裁判所平成9年9月24日判決)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例14)(PDFファイル)

⑼ベンダのプロジェクトマネージメント義務違反、ユーザの協力義務違反があった事例

(東京地方裁判所平成16年3月10日判決)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例15)(PDFファイル)

(10)役割分担やプロジェクト推進体制に問題があった事例

(日経コンピュータ2004年7月26日号28頁・2004年11月15日号15頁、日経コンピュータ2007年8月6日号128頁、日経コンピュータ2008年4月1日号130頁)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例16、18、20)(PDFファイル)

(11)サーバ・サイジングの誤り等からトラブルになった事例

(日経コンピュータ2005年8月8日号112頁)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例17)(PDFファイル)

(12)著作権の帰属が問題となった事例

(大阪地方裁判所平成13年3月27日判決)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例21)(PDFファイル)

c.f.完成したシステムの著作権

完成したシステムの権利

(13)著作権の帰属と、仕様変更による追加費用負担が争われた事例

(大阪地方裁判所平成14年8月29日判決)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例22)(PDFファイル)

c.f.仕様変更による追加請求について

仕様変更・開発スコープ変更に対する追加請求

(14)リース契約のみしかない場合に、請負契約の成否が問題となった事例

(広島地方裁判所平成11年10月27日判決)

情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(4.情報トラブル事例23)(PDFファイル)

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約2年4ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] ikeda

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務NAVIまとめ 契約法務 下請法
《東京開催》「働き方改革関連法」の施行に向けて企業が準備すべきこと
2018年12月19日(水)
09:45 ~ 12:15
18,000円(税別)
東京都港区
講師情報
高仲幸雄
中山・男澤法律事務所 パートナー 弁護士

早稲田大学法学部卒業

2003年弁護士登録(第一東京弁護士会)、中山慈夫法律事務所(現中山・男澤法律事務所)入所
2009年以降、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師、現在に至る
主な取り扱い分野は、人事労務関係・会社法務・民事全般

著書(いずれも単著):
「人事労務制度使いこなしマニュアル」 中央経済社/「実務家のための労働判例読みこなし術」労務行政/「労使紛争防止の視点からみた人事・労務文書作成ハンドブック」日本法令/「有期労働契約 締結・更新・雇止めの実務と就業規則」日本法令など

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
本年6月に成立した『働き方改革関連法』によって、これから順次、様々な規制の施行日を迎えることになり、企業はその対応に追われることになります。
その中で重要なのは、「労働基準法等の改正による労働時間・休日・年休制度の見直し」と、「非正規社員の待遇改善(同一労働同一賃金)に関する法改正」です。

本講演では、まずは、施行日が迫る労働基準法の改正分野について、【労働時間・休日・年次有給休暇】の制度設計や運用の見直しを中心に、就業規則の見直し方法やアルバイト等のシフト勤務も視野に入れた実務レベルでの労務管理方法を解説します。

次に、「同一労働同一賃金」では、現状では様々な裁判例が相次いで出されており、情報が錯綜している中で優先して改善すべき待遇や手当、非正規社員から待遇差について説明を求められた場合の対応方法などを最新の情報をもとに解説します。

実務担当者はもちろん経営者・人事・労務・総務の各部門で人事制度や賃金制度を検討するにあたって必須の内容を盛り込みます。
申込・詳細はコチラ
法務NAVIまとめ 契約法務 下請法
《大阪開催》今さら聞けない英文契約書セミナー(英文契約書の基礎、英文契約書交渉)
2018年12月15日(土)
09:30 ~ 15:15
・(午前)か(午後)のいずれか1つに参加の方:各回12,800円+税(書籍代を含む)※書籍を購入済みで持参の方:各回10,000円+税 ・(午前)と(午後)の両方に参加される方:19,800円+税(書籍代を含む)※書籍を購入済みで持参の方:17,000円+税
大阪府大阪市
講師情報
吉川 達夫
ニューヨーク州弁護士/外資系企業 VP, General Counsel

外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒


編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年),『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年),『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など,著作・論文多数


主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
ニューヨーク州弁護士で、外資系会社VP, General Counselの吉川達夫氏(元Apple Japan 法務本部長、VMware Japan法務本部長、2社合計15年以上)を講師にお招きし、東京において過去数年間にわたり毎年多くの方からご参加を頂いております「今さら聞けない英文契約書セミナー」を、初心者向けの午前の部(基礎編)と午後の部(交渉編)に分けけて初めて大阪にて開催いたします。

基礎編は、英文契約書を読んでみたい方、国際法務にこれから携わる方や弁護士の方、携わっているが改めて基礎を確認されたい方などに、この機会に是非ご参加頂きたい内容になっております(英文契約書の読み方を中心に解説します)。

交渉編は、国際法務の実務を担当されている方、多少の基礎知識はあるが自己流で勉強された方、弁護士の方、発展的な学習をされたい方などにお勧めです。

当日は講師著書の国際ビジネス法務(第2版)(第一法規株式会社/2018年3月発売 /2,800円+税)を教科書として使用します。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務NAVIまとめ 契約法務 下請法
《大阪会場》第106回MSサロン
2018年12月13日(木)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
吉田 憲
弁護士 京都大学博士(法学)
クラウド法律事務所代表弁護士
国内業務だけでなく、国際的(主に中国圏)な業務も取り扱い、
国内外の企業に法的助言を行っている。

略歴:
早稲田大学法学部卒
京都大学大学院法学研究科法政理論専攻博士後期課程修了
北京大学対外漢語教育学院留学

2006年10月 弁護士登録
2016年1月 クラウド法律事務所設立
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「中国における紛争解決手続について」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務NAVIまとめ 契約法務 下請法
《名古屋開催》ものづくり法務勉強会 ~工場における外国人雇用の留意点~
2018年12月18日(火)
19:00 ~ 21:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
原 武之
2000年 早稲田大学法学部卒業
2003年 弁護士登録(56期 第二東京弁護士会)
森・濱田松本法律事務所入所
2006年 川上・原法律事務所移籍独立(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー
中部の「ものづくり」企業を支援するための、ものづくり分野の法律問題に特化した勉強会です。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

【特集】第3回 種類株式の発行 第1 はじめに  こんにちは。企業法務ナビの企画編集部です。今回も前回に引き続き、特集記事「企業による資金調達」をお送りします。株式会社では株式を発行して資本金として資金調達をすることができます。その際、発行する株式の内容を自由に設計できる種類株式というものがあります。そこで、第3回となる今回...
企業法務向けの保険まとめ 1.はじめに  法務業務の中には訴訟対応やトラブル予防が含まれており、当然その過程で相当の損害や費用がかかる可能性があります。今回は法務業務を行うにあたり役立ちそうな保険を、典型的な業務態様ごとにまとめました。 2.法務費用に対する保険——事業者向け弁護士保険  社内に顧問弁護士や企業内弁...
食品回収(リコール)について ・はじめに 先日の11月4日(金)、大手食品メーカーであるマルハニチロは釧路工場で製造した「セブンプレミアム さんま蒲焼 100グラム」に金属の一部が混入しており、当該商品を含む3商品を着払いにて自主回収することを発表しました。近年食品事故が増えており、消費者の目も厳しくなってきています。今回...