仮想通貨まとめ

1 はじめに

2017年4月1日から改正資金決済法が施行され、仮想通貨が正式な決済手段として認められることになりました。この改正によって、単なる投資目的ではなく、仮想通貨を通貨と同じ決済手段として利用する場面が広がることが期待されます。仮想通貨の代表例は、ビットコインであり、2010年2月頃から現実社会での取引が開始されています。その後も、成長と停滞を繰り返しながらも、ビットコインが価値を持つようになってきて、現在では様々な仮想通貨が出てきています。みずほ銀行も、IBMと開発した仮想通貨「みずほマネー」を開発しました
仮想通貨を利用するサービスや取引が今後も広がっていくと考えられるものの、このような動きに対する法的規制がまだ追い付いていないところがあります。その中で、法務担当者は、仮想通貨を用いたITサービスの契約を審査することもありえます。それだけでなく、従来の売買契約の決済手段として仮想通貨を用いることも今後あり得るかもしれません。
 ここで、仮想通貨の定義や種類をまとめたうえで、資金決済法上の規制についても解説したいと考えています。

2 仮想通貨とは

 仮想通貨とは、次の性質を持つ財産的価値をいいます(資金決済に関する法律第2条5項1号及び2号)。
①不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
②電子的に記録され、移転できる
③法定通貨又は法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない

代表的な仮想通貨として、ビットコインがあります。

参考:金融庁パンフレット・改正資金決済法等の施行(PDF直リンクです。2017年4月14日閲覧)

3 資金決済法上の規制

(1) 仮想通貨交換業者に対する登録義務付け
 まず、仮想通貨交換業を、仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換、媒介や代理、管理の業務を行うものとしています(改正資金決済法2条7項)。仮想通貨交換業を行う者は、財産的基礎や仮想通貨を適正に扱い法令を遵守する体制を備えた上で、内閣総理大臣による登録をしなければなりません(改正資金決済法63条の4、同条の5)。

(2) 利用者に対する情報提供義務
 仮想通貨交換業者は、利用者に対し、仮想通貨の概要や仮想通貨を原因として損失が生じるおそれについて、説明をしなければなりません(改正資金決済法63条の10、内閣府令案17条1項)。

(3) 利用者財産の分別管理
 システムの安全管理や利用者財産と自己財産の分別管理を行い(改正資金決済法63条の11第1項)、定期的に公認会計士又は監査法人の監査を受けることが求められている(同第2項)。

(4) 監督規制
 仮想通貨交換業者に対し、帳簿書類及び報告書の作成、公認会計士又は監査法人の監査報告書等を添付した当該報告書の提出、立入検査、業務改善命令などの監督規定が定められています(改正資金決済法63条の13から同条の20)。
 これに伴い、マネーロンダリング対策として、「特定事業者」に仮想通貨交換事業者を追加するため(改正犯罪収益移転防止法2条2項31号)、業者は口座開設時に本人確認をしなけれななりません(同法4条)。

参考:影島広泰・猿倉健司『仮想通貨をめぐる法的なポイント 第1回 資金決済法の改正に伴う「仮想通貨交換業」の規制とは』弁護士ドットコム2017年3月17日(2017年4月14日閲覧)

4 具体的な仮想通貨(ごく一部)

(1) ビットコイン
 ビットコインとは、インターネット上で取引や通貨発行(「採掘(マイニング)」と呼ばれる。)が行われる「分散型仮想通貨」のことです。時価総額約7000億円と世界で最も勢いがある仮想通貨であり、マウントゴックスによるビットコイン消失事件により、日本でも一躍有名になりました。
 今回の改正で、ビットコインも通貨として扱われ、資金決済法の規制を受けることになります。

(2) イーサリアム
 イーサリアムは、時価総額が約 830億円とビットコインにつぐ規模であり、契約の条件確認や履行までを自動的に進める仕組みを備えています
 今回の改正で、イーサリアムもビットコインと同じく資金決済法の規制を受けることになります。

(3) LINE「宝箱の鍵」
 LINE POPの「宝箱の鍵」は、ゲーム内に登場する宝箱を開けることができるアイテムです。この宝箱の鍵は、仮想通貨ルビーによって、購入することができます。
 LINEは「宝箱の鍵」について、前払式支払手段(資金決済法3条1項)に当たらないとして発行保証金を法務局に供託していませんでしたが、関東財務局により、該当すると認定されたため、120億円以上の発行保証金の供託が必要になります(同法14条)。もっとも、LINEは発行保証金を供託する代わりに、銀行との間で発行保証金保全契約の締結をしていたので(同法15条)、必要な資金は数千万円程度にとどまります。

(4) ポケモンGO「ポケコイン」
 ポケコインも、プリペイドカードと同じ資金決済法上の前払式支払手段にあたるとして、金融庁がゲームを提供するナイアンテック社にヒアリングを始めていました。そのため、2016年10月3日、合同会社ナイアンテック・ペイメントが設立され、現在同社がポケコインについて届出をしています。

参考
 渡邉雅之『ゲームアプリの仮想通貨と資金決済法―何が前払式支払手段に該当するか?』ビジネス法務2017年5月号81頁(中央経済社)

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mir21

詳細情報はありません。

このニュースに関連するセミナー

法務NAVIまとめ 金融法務 金融商品取引法
【国際法務入門】M&A 合弁会社設立
2017年07月19日(水)
19:00 ~ 22:00
25,000円(税込) ※平成29年2月15日開催のLBS体験講座に参加された方は10,000円減算した金額とさせていただきます。 なお、単回申込みを複数回される場合は、上記減算は初回分のみ適用となりますのでご了承ください。
東京都新宿区
講師情報
登島 和弘
インヴェンティヴ・ヘルス・ジャパン合同会社 アジア太平洋地域法務責任者
1961年神戸市生まれ
中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、
日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、
を歴任し、現職。
*企業名は当時のまま。
※日本企業・外資系企業両方での国際法務経験が有り、両者の観点から国際法務
について指導を行います。
国際法務入門者向けの契約法務習得セミナーになります。
当日は、下記の流れで、こちらで用意したビジネスシチュエーションを題材に、
国際法務経験豊富な講師との双方向でのコミュニケーションを行い、
ときに、少人数のグループでのディスカッションを織り交ぜながら、
参加者が思考しアウトプットするプログラムとなっております。

売買契約・共同開発契約の審査や作成に必要な「知識」を習得するのはもちろんのこと、
一方的に話を聞くセミナーとは異なり、各契約を検討する上での「思考法・仕事術」などの
実践的な能力を習得出来るのが特徴です。

【講師からケースの説明】→【グループディスカッション】→【各グループの発表】→【講師レビュー】

★「体験講座」(2月15日開催)の参加者の声★
・書籍等では実務に近い情報が無い為、講座で具体的なケースを想定し仕事の進め方を理解出来てる内容がとてもよかったです。
・少人数で法務業務を担当している為、自分自身の経験、知識、感覚で仕事をしてしまう事が多く、
法務業務をする上で大事な思考のフレームワークを学べて良かったです。
・講義内容はもちろんですが、他社の法務担当の意見を聞く事が出来て、とても参考になりました。

★今回のテーマ★
「M&A 合弁会社設立」
日本の製薬企業が豊富なノウハウと経験を有する自社のIT部門を独立させ、自社を含む他の製薬企業向けに幅広くITサービスを提供できる企業を設立しようとするとき、同社にメインフレームを提供している米国のコンピュータ会社の協力を仰ごうとするケースを題材に、企業間における事業協力の形態を検討します。
※ こちらで事前課題を用意し、受講前にケース理解を深めていただきます。
※ 本講座は「リーガルビジネススクール 国際法務担当者育成コース(全六回)」の第五回講座を兼ねております。そのため、そちらの申込者と一緒に本講座を受講いただく形となります。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務NAVIまとめ 金融法務 金融商品取引法
第85回MSサロン(東京会場)
2017年07月26日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
東京都新宿区
講師情報
大東泰雄
のぞみ総合法律事務所 弁護士

平成13年慶應義塾大学法学部卒業,平成24年一橋大学大学院国際企業戦略研究科修士課程修了。
平成14年弁護士登録。
平成21年4月から平成24年3月まで,公取委審査局審査専門官(主査)として,独占禁止法違反被疑事件の審査・審判実務に従事。

公取委勤務経験を活かし,独禁法違反事件対応(リニエンシー申請,社内調査,公取委対応,審判等),企業結合審査対応,独禁法関係民事訴訟,下請法,景品表示法等に関する業務を主軸とし,その他企業法務全般を扱っている。
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「下請法運用強化と対応のポイント」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)

あわせて抑えておきたい関連記事

著作物の利用まとめ はじめに 滋賀県立琵琶湖博物館の学芸員が、昆虫に関する記載を他の図鑑の説明文から盗用していたことが発覚し、懲戒処分を受けました。 琵琶博学芸員を盗用で処分 琵琶湖博物館学芸員による著作物からの不適切な引用について そこで、今回は著作権法上許される著作物の利用についてまとめたいと思います。 ...
【法務NAVIまとめ】OEM契約書の注意点 OEM契約で取り決めるべき項目 OEM契約は、自社ブランドで商品を作る意向はあるものの、製造能力がないという企業が、製造能力を有する別の企業に製造等を委託する契約です。 目的、仕様、製品の表示、相互保証…etc.出典: 契約書生成ツール(OEM基本契約書) 弁護士事務所作成...
【法務NAVIまとめ】M&Aについて はじめに 2005年のライブドアによる日本放送株の敵対的買収は記憶に新しいものであるが、それ以来、M&Aという言葉をよく耳にする。M&Aは、コア事業強化や、事業の成長・展開の効率化を進めるために頻繁に行われている。そこでM&Aとはどのようなものなのかを見ていきます。 ...