中日新聞に是正勧告、年次有給休暇について

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はじめに

 中央労働基準監督署(東京)は15日、中日新聞東京本社に対し労働基準法違反で是正勧告を出していたことがわかりました。同社記者の年次有給休暇取得を拒否していたとのことです。今回は年次有給休暇について見直していきます。

事案の概要

 報道などによりますと、中日新聞東京本社は同社の女性記者(48)が2月に年次有給休暇を取得したところ、休んだ分の賃金を支払わなかったとのことです。女性記者は同社で日決めの「原稿料契約」でスポーツの報道記者として芸能取材を担当し、長年通常の記者と同様に会社の指揮監督下で働いていたとされます。同社は女性記者とは雇用関係にないとして有給分の賃金支払いを拒否しました。これに対し労基署は記者は労働者に該当するとして是正勧告を出しております。

年次有給休暇

 労働基準法39条によりますと、雇入れの日から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10日間の有給休暇が付与されるとしています。これは業種や業態に関わらず、正社員、非正規社員、パートタイムなど雇用形態の区分もなく要件さえ満たせば全ての労働者に与えられます。定年退職したあとの嘱託社員も同様です。また業務上の怪我などで休んでいる期間や法律上認められている育休、介護休業取得中も出勤したものとみなされ継続勤務に該当することとなります。違反した場合には罰則として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課される場合があります(119条1号)。

有給付与日数と取得時季

 労働者に付与される有給の日数は、通常の労働者の場合、継続勤務年数が半年で10日、1.5年で11日、2.5年で12日、3.5年14日と1年ごとに増加していき、6.5年で最大の20日となります。週の所定労働日数が4日以下で週の労働時間が30時間未満の労働者の場合は週の労働日数ごとに決められており、例えば継続勤務年数半年で、週の労働日数1日の労働者は1日、2日の労働者は3日、3日の労働者は5日等となります。取得時季は原則として労働者側が指定することになります。労働者が指定した日に有給休暇を与えなければなりません。ただし同時期に有給取得者が集中するなど、「事業の正常な運営を妨げる」場合には他の日を指定することができます(39条5項)。

有給休暇取得の義務化

 働き方改革関連法により2019年4月から全ての企業で年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については会社側が時季を指定して取得させることが義務化されました。有給休暇の取得は上記のとおり原則として労働者側が指定しますが、取得率の低さに鑑み、一定の範囲で会社から取得させることが必要になったということです。時季の指定に当たっては労働者の意見を聞いて、労働者の希望を尊重するよう務める必要があります。なお既に5日以上有給を取得している労働者に対しては会社側からの時季指定は不要です。

コメント

 本件で中日新聞は女性記者と日決めの原稿料契約を締結していたことから雇用関係にはなく、有給休暇を取得させる必要はないとしておりました。しかし同記者は同社において正社員と同様に指揮監督下で勤務してきており、労基署は労働者に該当するとして是正勧告をだしております。上記のように労働基準法では業種、業態、雇用形態に労働態様に関わらず法律上当然に有給休暇が付与されるとしています。産休や育休などの法律上認められた休暇中も継続勤務に算定されることになります。日本は主要先進国の中では有給取得率は今なお最下位となっており、労働者にとっても依然として取得しにくいのが現状です。義務化された5日分だけでなく、労働者側からも取得しやすい社内環境作りが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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