不当表示の摘発について

1 はじめに

 商品や役務を取引する際、企業は広告に当該商品や役務に関する情報を載せます。一般消費者の合理的な選択の妨げとならないよう、表示は適切に行う必要があります。景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、広告の不当表示を禁止しています。
 近年、消費者庁は不当表示の摘発を加速しており、17年度の措置命令件数(50件)は前年の2倍近くに達しています。そこで今回は、①不当表示の類型②不当表示認定のリスクについて③打ち消し表示について④企業における今後の方針について検討していきます。

2 不当表示の類型

 景表法が定める不当表示には、3つの類型があります。

 ①優良誤認表示(5条1号)
 商品等について、実際のものよりも著しく優良であると示すもの
 ②有利誤認表示(5条2号)
 商品等について、同種の商品等を提供する他の事業者によるものよりも、取引の相手方にとって著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
 ③その他誤認されるおそれのある表示(5条3号)

 従来は①優良誤認表示の摘発が中心でしたが、近年は②有利誤認表示の摘発が増えており、17年度の摘発50件のうち20件を占めるようになっています。②の摘発が増えた理由について、消費者庁表示対策課は、「摘発件数を目標として掲げている訳ではない」としていますが、「どのような表現が有利誤認に当たるのか、情報やノウハウを蓄積できていることが大きい」としています。今後も、「違反が疑われる事例は積極的に調査していく」との方針です。

3 不当表示認定のリスクについて

 不当表示を行ったと認定された企業に対しては、再発防止策の策定などを内容とする措置命令(第7条)がなされることがあります。措置命令に従わない場合は、必要な措置を講じるように勧告(第28条1項)されることもあり、勧告に従わない場合はその旨が公表(同条2項)されることもあります。公表された場合、企業のイメージが悪化することは避けられません。
 悪質な不当表示と認定された場合は、制裁措置として、課徴金納付命令(第8条)がなされることがあります。対象となるのは、売上額が5000万円以上あり、企業側が「相当の注意」を怠っていたとされる場合です。2016年の導入時は1件でしたが、17年度は19件に増えています。
 課徴金の額は売上額の3%であり、会社に対して少なくない損害になる可能性があります。今年3月、SIMフリースマホ製造・販売、MVNOサービスを展開するプラスワン・マーケティングは、8824万円の課徴金納付命令を受けています。

4 打ち消し表示について

 今後、いわゆる「打ち消し表示」が争点になっていくと見られています。打ち消し表示とは、体験談などに「個人の感想です」などの文言を添えたり、キャンペーンの例外条件を注釈でつけたりする手法を指します。消費者庁は昨年7月、これらの小さな注釈を多くの消費者が見落としているといった調査結果を発表しています。適切な表示方法についての判断基準は、今後の措置命令を通じて明らかになっていくと思われます

5 企業における今後の方針

 景表法は不当表示該当性について明確な基準を置いていないため、消費者庁は「一般消費者の目から見てどうか」という観点から総合的に判断しているようです。打ち消し表示について適切な表示方法の基準が固まっていくのはまだ先になりますが、一般消費者の立場に立って、自社の広告を客観的に眺めることが有用であると考えられます。
 措置命令を受ける企業の業種は多岐に渡っており、不当表示のリスクが高まっていく中で、独自の対応を取っている企業もあります。
 ・表示コンプライアンス委員会の設置(パナソニック)
 ・最新技術と表示の知識を持つ担当者を製品開発研究所に配置(花王)
 ・開発担当者と品質管理者で広告を二重に確認する体制の整備(グリー) *全て敬称略
 景表法は、企業に表示管理担当者の設置などを義務付けています。上記企業の例を参考にしたり、措置命令の事案を検討したりすることで、自社に最適な表示管理方法を模索していくことが必要です。

【参考サイト】
薬事法マーケティングの教科書ー景品表示法とは?初めてでも分かる簡単解説
シマウマ用語集ー打ち消し表示

【企業法務ナビ内関連記事】
法務ナビまとめー景表法における有利誤認表示についてまとめ
法務ニュースーエネルギアに納付命令、景表法と課徴金について
法務ニュースー湯迫温泉に対する措置命令、景品表示法について

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] arai

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務ニュース 広告法務 景品表示法
第99回MSサロン(名古屋会場)
2018年06月20日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「秘密保持契約 ~ その作成・交渉の実務及び英文となった場合の留意点」です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース 広告法務 景品表示法
第98回MSサロン(大阪会場)
2018年06月13日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
河端 直 根本 俊太郎
■河端 直
経歴
2013年(平成25年)11月
司法研修所入所(67期)
2014年(平成26年)12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所

著書
野村剛司編「法人破産申立て実践マニュアル」(青林書院)(共著)
スポーツ問題研究会編「Q&Aスポーツの法律問題」(民事法研究会)(共著)

■根本 俊太郎
経歴
2004年(平成16年)4月
株式会社朝日新聞社入社(記者職)
2016年(平成28年)11月
司法研修所入所(70期)
2017年(平成29年)12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「民法改正への対応」です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース 広告法務 景品表示法
【名古屋】システム開発におけるトラブル発生時の対応《ITビジネス法務勉強会:第2回》
2018年07月12日(木)
15:00 ~ 17:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
田代 洋介
略歴:
愛知県名古屋市出身
2010年 静岡大学人文学部法学科卒業
2013年 南山大学法科大学院法務研究科修了
2014年 弁護士登録(67期 愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
ITに関する法律を学び、ビジネスに活かしていただくためのITビジネス法務セミナーです。第2回目のテーマはシステム開発におけるトラブル発生時の対応です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース 広告法務 景品表示法
【名古屋】準拠法条項/裁判・仲裁条項《法務担当者のための英文契約セミナー:第2回》
2018年05月30日(水)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第2回目のセミナー内容は準拠法条項/裁判・仲裁条項です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース 広告法務 景品表示法
【名古屋】国際取引契約(英文契約)審査の基礎《法務担当者のための各分野の重要法務セミナー:第2回》
2018年05月29日(火)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
各弁護士が日常の実務経験の中でご質問を受けることの多いトピックについてのセミナーです。今回のセミナー内容は国際取引契約(英文契約)審査の基礎です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース 広告法務 景品表示法
【名古屋】債権保全・回収《初めての法務部から不祥事対応まで 基礎セミナー:第3回》
2018年06月06日(水)
14:00 ~ 17:00
10,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
川上 敦子 石井 大輔
■川上 敦子
略歴:
大阪教育大学附属高等学校卒業
1980年 京都大学法学部卒業
1982年 弁護士登録(34期 愛知県弁護士会)
青山法律事務所入所
1988年 川上法律事務所パートナー
2010年 川上・原法律事務所に名称変更
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■石井 大輔
略歴:
静岡県三島市出身
静岡県立沼津東高校普通科卒業
2011年 同志社大学法学部法律学科早期卒業
2014年 名古屋大学法科大学院未修コース修了
2015年 弁護士登録(68期愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
新規配属法務担当者の方・実務対応はしているものの不安がある法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第3回目のテーマは債権保全・回収です。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

未払い賃金、時効見直しか 1.未払い賃金問題とは あらかじめ労働契約や就業規則で定められた賃金を、所定の支払日に支払わなかった場合には、その使用者たる会社は、労働基準法に違反することになります(労働法第11条、第24条)。 したがって未払賃金があるときにまず確認するべきことは、支払われなかった賃金の種類(定期賃金、諸手...
秘密保持契約書で本当に秘密は守られるか①... 概要 企業間での取引前に交わされることの多い秘密保持契約。しかし、その内容は以外にも簡潔なものが多く、実際秘密が守られるのか疑問を抱かざるを得ないものも多い。そこで、今回から数回に渡り、秘密保持契約書の在り方を考えてみたい。 よくある問題点 (1)口頭で開示した秘密情報の特定の問題 はじ...
憲法改正に向けた動き 国民投票法改正案国会提出へ... 事案の概要 自民、公明、民主など与野党7党が8日、憲法改正の手続きを定めた国民投票法改正案を国会に提出した。衆参の9割の議員での共同提出となっており、今国会で成立する見通しとなっている。 国民投票法改正案が成立すれば、改正法施行の4年後から、国民投票の投票年齢について、20歳以上から18歳以上に...