非番中に救命処置を行った救急救命士、停職6ヶ月の懲戒処分

非番中に救命処置を行った救急救命士、停職6ヶ月の懲戒処分

4月14日に静岡県内の東名高速道で、非番中に交通事故の負傷者に救命処置を行った救急救命士の男性が、5月31日付で同本部から停職6か月の懲戒処分を受けた。

消防署から無断で持ち出した注射針などを使用し、勤務時間外に医師の具体的な指示を受けることなく処置を行ったことが、各種関係法令に抵触する可能性が高いと判断されたためだ。男性は、「法律に触れる可能性があることは分かっていたが、助けたい一心だった」と語っている。なお、この救命救急士の男性は懲戒処分を受けたその日に依願退職している。

救命救急士法

第四十三条  救急救命士は診療の補助として救急救命処置を行うことを業とすることができる。

第四十四条  救急救命士は、医師の具体的な指示を受けなければ、厚生労働省令で定める救急救命処置を行ってはならない。
2  救急救命士は、救急用自動車その他の重度傷病者を搬送するためのものであって厚生労働省令で定めるもの以外の場所においてその業務を行ってはならない。ただし、病院又は診療所への搬送のため重度傷病者を救急用自動車等に乗せるまでの間において救急救命処置を行うことが必要と認められる場合は、この限りでない。

※ まとめると、(1)救急救命士はあくまで、診療の補助しか出来ないこと、(2)医師の具体的な指示なしに救急救命処置は出来ないこと、(3)原則として救急車の中でしか業務が行えないことが規定されている。

雑感

救急救命士の救命行為をめぐっては、愛知県でも、交通事故の負傷者を病院に搬送する際に点滴を行った救命救急士の男性が、救急救命士法違反に問われている。救急救命士が心肺停止前の患者に点滴を行うことは、禁止されているからだ。この男性もまた、「何とかしてあげたいと思った」と語っている。失われゆく目の前の命を前に、出来る限りの処置を行いたいと考えるのは、救急救命士を志すような人にとっては、当たり前のことなのかもしれない。

また、東日本大震災の被災地においても、心配停止患者へ医療行為を行おうとした救急救命士が、被災地の通信事情の悪化で医師の指示を得られないことで、業務にかなりの支障が出たという報告もある。厚生労働省は一応、このような場合には、違法行為には当たらないとする通知を都道府県などに出しているが、救急救命士の職域拡大は、緊急の課題となっている。

一方で、やみくもな職域拡大は、負傷者が、医師の監督下での高い質の医療行為を受ける機会を奪うことにも繋がるのであり、医療の知識に劣る救急救命士の独断の治療により、医療過誤が生じるおそれも大きい。重症者であれば、なお一層、医療の知識が豊富な専門家による慎重な治療を要するケースも多いであろう。

職域拡大にあたっては、救急救命士の持っている知識・経験でどこまでの処置が安全に行いうるのかの再検証と共に、医師の指導の下での厳しい研修が必要となってくるのではないだろうか。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約7年4ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
 
[著者情報] mo.saito

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2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
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2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
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東北大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了

平成27年改正個人情報保護法の全面施行前後に、
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近時の著書等には『個人情報管理ハンドブック[第4版]』(商事法務、2018)、
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東京大学法学部卒
1999年弁護士登録(第二東京弁護士会)
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