ネーミングライツ契約は当事者だけのものではない?

1 ネーミングライツとは
ネーミングライツとは、スポーツ施設等の名称にスポンサー企業の社名やブランド名を付与する権利(命名権)のことである。1990年代後半から米国のプロスポーツ施設を中心に急速に広まっていき、日本でも施設維持の資金を調達することなどを目的として普及していった。国内の公共施設として初の事例となる「味の素スタジアム」は多くの方がその名称をご存知かと思う。
現在では、スポーツ施設に留まらず、歩道橋や道路、駅、公衆トイレなどでもネーミングライツが積極的に導入されている。
今回は、ネーミングライツについて触れてみようと思う。
2 メリット
施設等の所有者・管理者側のメリットとしては、施設維持費の負担を軽減できることが挙げられる。施設利用料だけでは経費を賄うことが難しい状況において、資金を確保することが可能となる。
これに対し、ネーミングライツを購入する企業側のメリットとしては、宣伝効果や社会貢献による企業イメージの向上が挙げられる。施設は多くの利用者が見込めるため、施設等に企業名やブランド名、商品名を付与することで、多くの人に認識してもらうことが可能となる。
3 デメリットや問題点
契約当事者の双方がメリットを得られる関係にあるネーミングライツは、一見デメリットや問題点がないようにも思えるが、実際には、次のようなデメリットや問題点が存在する。
① 利用者の混乱
ネーミングライツ契約の内容の変更や期間の満了により、短期間に幾度も施設等の名称が変更されることがあるため、利用者が混乱し、地域施設として浸透しない可能性がある。そして、地域施設として浸透しなかった場合は、広告価値や企業イメージが低下する結果に繋がることも十分にあり得る。
② イメージ低下の連鎖
購入した企業側に不祥事が生じた場合、名称を付された施設等のイメージまで損なわれる可能性がある。
③ 地域住民の反発
施設等の従来の名称を変更し、企業名等を付すること自体だけでなく、付された名称が施設名として適切か、といった点においても、地域住民の反発にあう可能性がある。また、公共施設に一企業の名称等を付与することが、公共性を喪失すると問題視する声もあるとのことだ。
④ 施設等の所在や機能の不明瞭化
施設等の名称から地名や施設機能の語句等が除外される結果、施設等の所在地や機能等が分かりづらくなってしまう。
ネーミングライツを導入し、施設等に名称を付する場合は、企業名やブランド名等を単純に付して宣伝効果を期待するというだけではなく、利用者や当該施設等がある地域住民に配慮し、その同意や理解を得ることも重要といえるだろう。
4 契約期間・金額
筆者が調べた限りでは、契約期間は2年~5年の短期間が多く、中には10年程度の長期間に及ぶものも存在した。金額は、対象施設が何か(スポーツ施設、歩道橋、道路等)や契約期間だけでなく、おそらくは施設の規模や所在場所等も加味して決定されていると考えられる。
冒頭で紹介した味の素スタジアムの契約期間と金額は次の通りだ。
「第1期契約が5年間(平成15年3月1日~平成20年2月末日)で12億円、第2期契約が6年間(平成20年3月1日~平成26年2月末日)で14億円。また、平成25年10月30日にネーミング・ライツ契約を更新し、新たな契約期間は、5年間(平成26年3月1日~平成31年2月末日)で10億円(いずれも消費税等別途)。」(※ 味の素スタジアムHPより)
5 おわりに
近年では、新たな財源の確保や地域活性化等を目的としてネーミングライツを導入する自治体も増加している。また、ネーミングライツは、対象をトンネルや海岸にまで拡大する動きを見せている。もっとも、企業側が募集自体を認識していないため、契約締結に至らないことも珍しくないようだ。また、最近では、名称に変わったものを付し、注目を集めているものもある。ネーミングライツを巡っては様々な動きがあるが、いずれにしても、契約当事者間の利益だけでなく、利用者や地域住民への理解を求める活動が重要な要素となる点には、留意しておく必要があるだろう。
このニュースに関連するセミナー
法務コラム1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所
2000年 ハーバードロースクール 修士課程(LL.M)卒業
Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設
弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員
企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士
主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
「Q&A 災害をめぐる法律と税務」新日本法規 共著
これは、ヤフオク・メルカリ等のインターネットやスマートフォンを使った売買プラットフォームサービスが増えたことが要因となっております。
そこで今回は、主に古物を取り扱う売買プラットフォームサービスを開発リリースする際に注意すべき問題について、長年売買・輸出ビジネス関連サイトに携わった経験をもとにお話しします。
DLA Piperは、日本を含め40カ国以上にオフィスを備える国際法律事務所です。
デール・ラザール氏は、ソフトウエア及びエレクトロニクスの特許出願業務において40年の経験を有します。
日本でも多数の講演を行っており、分かりやすさで高い評価を得ています。
■特許弁護士 アンドリュー・シュワブ Greenberg Traurig USA
Greenberg Traurigは、日本を含む10カ国にオフィスを構える国際法律事務所です。
特に米国には29のオフィスがあります。
アンディ―・シュワブ氏は知的財産法について20年以上の経験を有し、エレクトロニクス及びソフトウエア関連の特許出願の他、顧客企業への戦略コンサルティングを得意とします。
■特許弁理士 チェ・セファン 第一特許法人 韓国
第一特許法人は、所員数200名を超える韓国の大手特許事務所です。
第一国際法律事務所との親密な協力関係により、特許侵害訴訟事件も数多く受任しています。
会長、代表を含め、多くの所員が日本語に極めて堪能です。
セファン氏は、精密機械・特殊加工・メカトロニクス・自動車・造船海洋を専門としており、一時は日本の特許事務所でも業務を行っていました。
■欧州特許弁理士 ベルナルド・ガナル PATRONUS IP ドイツ
ベルナルド・ガナル氏は、エレクトロニクス、ソフトウエア分野の特許出願、異議申立、特許訴訟において30年の経験を有します。
ソフトウエアの特許適格性においては、代理人として欧州審判部で重要な審決を築いており、堅実な仕事に定評があります。
■欧州特許弁理士 ロビン・コウレッツ OLBRICHT PATENTANWALTE ドイツ
OLBRICHT PATENTANWALTEは50年以上の歴史を持つドイツの特許法律事務所です。
ロビン・コウレッツ氏は、機械分野を中心とする権利化業務を専門としています。
多様な業務や無理難題にも柔軟に取り組んでくれる姿勢が、顧客から評価されています。
■欧州特許・商標弁理士 アッツ・カドール博士 KADOR & PARTNER ドイツ
アッツ・カドール博士は40年以上前にドイツにてKADOR & PARTNER 特許弁理士事務所を開設しました。
化学技術者としての背景を持ち、物理、製鋼業での特許および商標やライセンス契約も取り扱っています。
ライセンス協会(LES)ドイツ支社の秘書も務めました。
■カナダ弁護士 ロニ・ジョーンズ Oyen Wiggs カナダ
Oyen Wiggsは技術部門の実務経験を持つ弁理士を多く抱えるカナダの知財事務所です。
ロニ・ジョーンズ氏は機械工学およびコンピュータ関連分野の特許を得意とし、医療機器やファイナンス関連ソフトウェアなど多岐にわたり専門的なアドバイスを顧客へ提供しています。
■カナダ弁護士 ステファニー・メルニチャック Oyen Wiggs カナダ
ステファニー・メルニチャック氏は化学、クリーンテクノロジー、バイオテクノロジーや製薬関連を強みとし、ベンチャー企業や大学など幅広い顧客層から支持されています。
■米国弁理士・台湾弁理士・中国特許代理人 童 啓哲(Chi-Che Tung) 寰瀛法律事務所 台湾
寰瀛法律事務所(フォルモサンブラザーズ法律事務所)は国際資格を保有する弁理士・弁護士が多数在籍している台湾の法律事務所です。
童氏は機械工学、ソフトウェア、通信技術、電子工学、建築構造などに関する技術分野を得意とし、米国や台湾、中国、日本などを舞台に国際的に活躍しています。
■タイ弁護士・特許弁理士 マヌーン・チャンチュムニ ROUSE タイ
ROUSEはアジアを中心に欧州、アフリカなどを含め世界中で15か所以上の拠点を持つ国際知財事務所です。
■欧州特許・商標弁理士 アダム・ボグシュ VJP シンガポール
Viering, Jentschura & Partner(VJP)は23名のパートナー、170名以上の従業員を抱え、ドイツを拠点に各地に支店を持つ国際法律事務所です。
ボグシュ氏は電子工学、自動制御や医用技術分野を得意としています。
VJPシンガポール支店を開設し、講義やセミナーを多数開催しています。
■弁理士 劉 新宇 Linda Liu & Partners 中国
■特許弁理士 孫 徳崇 Linda Liu & Partners 中国
■米国弁護士、日本弁理士 龍華 明裕 RYUKA国際特許事務所 日本
RYUKA国際特許事務所は39名の弁理士、3名の米国弁護士を含み、約100名の従業員を抱える日本の国際特許事務所です。
龍華氏は電気通信分野を得意とし、日本及び米国の法律事務所勤務の経験をもとに、権利化業務、ライセンシング、訴訟、鑑定などで20年の経験を有しています。
主催:RYUKA国際特許事務所
協力:レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
国際(PCT)出願時には、世界各国の要件を考慮する必要があります。
例えば米国に最適なPCT明細書は、EPOには好ましくなく、逆も同じです。
このため国際出願時には、各国の要件を比較考慮して、「最適な明細書」を記載する必要があります。
中国や東南アジアで、方式的な拒絶理由を受けないための対応も重要です。
複数国間の最適な審査の進め方や審査順序を考慮するためにも、各国の要件を考慮する必要があります。
Patent Summit Tokyoでは、一つの国の要件のみでなく、主要国の要件全体を考慮したうえでの、PCT明細書の作成方法や、審査の進め方をご提案いたします。
非常に実践的なセミナーなので、現場で実務を担当されている方に役立つことを願っています。
※各講演は日本語または英語で行われます。英語の講演は日本語での逐次通訳があります。
※英語での講演時のスクリーン投影資料ならびに配布資料は英語表記です。日本語訳はありません。
大阪府立四條畷高等学校卒業
一橋大学社会学部卒業
立命館大学法科大学院修了
2009(平成21)年12月
大阪弁護士会に弁護士登録(新62期)なにわ共同法律事務所入所
2010(平成22)年10月 - 2012(平成24)年3月
立命館大学エクステンションセンター講師
■河端 直
私立桃山学院高校卒業
同志社大学法学部法律学科卒業
大阪大学大学院高等司法研究科修了
2013(平成25)年11月
司法研修所入所(67期)
2014(平成26)年12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所
今回のセミナー内容は、「最高裁判決から読み取る同一労働同一賃金の論点」です。