リニエンシー(課徴金減免)制度とは~住友電工の株主代表訴訟を受けて~

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 住友電工の株主が、旧経営陣に対して提起していた株主代表訴訟の和解が5月7日に成立した。
 旧経営陣が支払う和解金は約5億円となっており、株主代表訴訟の和解金としては過去最高額であるとのことである。
 住友電工は光ケーブルなどのカルテルで、課徴金約88億円を納付し、これを受けて株主の男性が当時の経営陣に対し、会社への賠償を求め株主代表訴訟を提起していた。
 原告側は旧経営陣がリニエンシー(課徴金減免)制度を利用していなかったことで損害の拡大を招いたと主張していた。以下では、このリニエンシー制度について概観したい。

リニエンシー制度とは

 リニエンシー(leniency:寛大さの意)制度は談合、カルテルなどの不正に関わった企業であっても、公正取引委員会の調査開始前(場合によっては後にでも)に不正を自己申告すれば、課徴金の減免あるいは刑事告発の免除がなされる制度である。
 アメリカで始まった制度であるが、2006年施行の改正独禁法によって日本でも導入された。当制度の減免額等の概要は以下の通りである。

①公取委の調査開始前であれば、1番目の申請は全額免除、2番目は50%の減額、3番目は 30%減額される。
 また4番目、5番目であっても30%減額の対象になりうるが、公正取引委員会が把握していない違反行為の事実を報告しなければならない。

②公取委の調査開始後であれば、3番目までの事業者が課徴金30%の減額対象となる。もっとも、調査開始前に申告した事業者と合わせて最大5事業者までの範囲に限定される。また、公正取引委員会が把握していない違反事実を申告しなければ課徴金減免の対象とはならない。更に調査開始後の減額が適用されるのは、調査開始日から20日以内との期限が設定されている。

一定の要件を満たす場合(複数事業者が相互に子会社の関係にある場合等)には、複数事業者による共同申請も認められる。共同申請者には同一の順位が割り当てられることになる。

また公取委は、調査開始前の1番目の申告事業者には刑事告発を行わない事とされている。

リ二エンシー制度に関わる事例

①建材用亜鉛めっき鋼板の価格カルテルをめぐる事件で、日新製鋼、淀川製鋼所、日鉄住金鋼板の3社が刑事告発された。
 2009年東京地裁は関与した3社のうち、日新製鋼と淀川製綱所に1億8000万円、日鉄住金鋼板に1億6000万円の罰金を言い渡した。
 JFE鋼板もこのカルテルに関与していたが調査前に違反を申告したことにより、課徴金が全額免除された。またJFE鋼板、その従業員に対する刑事告発も行われなかった。

②2009年シャッター販売をめぐるカルテルに関し、調査開始後に違反を申告した文化シヤッターに対して公取委は、申告に虚偽があったとして課徴金の減額を認めなかった。
 文化シヤッターは全国販売でのカルテルでは争う姿勢を見せていたが、近畿地区での販売価格の会合には同社幹部が出席したことを認める資料を提出し、減免措置を求めていた。しかしその後、会合の存在自体を否定する内容の追加資料を提出し、申告を修正していた。これは同制度発足後、減免制度の適用が見送られた初の事例である。

関連サイト

課徴金減免制度(公正取引委員会HP)

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本記事は、約5年11ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
 
[著者情報] ryo

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