関東財務局がLINEに立ち入り調査。資金決済法の規制対象とは?

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はじめに

無料通信アプリ大手LINEに関東財務局が立ち入り調査を行っていることが4月6日判明しました。LINEが運営するゲームのアイテムが資金決済法の規制対象に該当するかを調査しているものと見られています。資金決済法が規制する前払式支払手段とその手続について概観します。

事件の概要

LINEは2012年からスマートフォン用のパズルゲーム「LINE POP」等を運営していました。ゲーム内では「宝箱の鍵」と称されるアイテムが販売され、それを使用することによってゲーム内の宝箱を開ける他、使用キャラクターを増やしたり、ゲームを先に進めることができるようになっていました。昨年5月、社内で本件宝箱の鍵が資金決済法の前払式支払手段に当たり、財務局への届出等が必要なのではないかとの指摘がなされていました。それを受け7月には本件宝箱の鍵の用途を制限し、仕様を変更して規制対象に該当しないとの立場を取っていました。関東財務局は今年1月から資金決済法に基づく立ち入り検査を開始し、他のゲームも含めLINEの社内の管理体制についても調査を継続しています。

前払式支払手段とは

資金決済法は、資金決済サービスに関して登録等の必要な措置を講じて利用者を保護し、安全で効率的な資金決済システムの促進を目的とする法律です。そして同法が規制する前払式支払手段を発行する場合は所管の財務局への届出や供託が必要となってくることもあります。前払式支払手段に該当するには次の要件を満たす必要があります(3条)。①金額、物品、サービスの数量が証票、電子機器、または電磁的方法で記録されていること②証票等に記載、記録されている金額等に応じる対価が支払われていること③これらの証票等や財産的価値と結びついた番号、記号等が実際に発行されていること④物品購入、サービスの提供を受ける等の場合にこれらを提示、公布、通知することによって使用できるものであること。具体的にはギフト券、商品券、テレホンカード、ウェブマネー等が該当します。公共団体が発行するものや、乗車券、映画館等の入場券などは除外されております。またこれら4要件に該当しても使用期間が6ヶ月以内であるものも除外となっております(4条1号、施行令4条2項)。

届出義務

前払式支払手段を発行する事業者はその発行者の種類に応じて届出義務が課されております。
(1)自家型発行者
自家型発行者とは、その発行する前払式支払手段を使用し商品やサービス等の役務を得る相手を自社のみとする発行者を言います。つまり商品券や電子マネーを発行し、顧客がこれらを使用してサービスを受ける相手は自社のみであり、第三者に対しては使用できない場合が該当します。この場合には、未使用残高が1000万円を超える場合に、超えた日から2ヶ月以内に所管の地方財務局に届出る義務が生じます(5条1項)。

(2)第三者型発行者
第三者型発行者とは、自家型と違いその発行する前払式支払手段を使用してサービスを受ける相手を自社以外の第三者も含める場合の発行者を言います。つまり発行者以外の加盟店で使用できるギフトカードや図書券等の発行者が該当することになります。この場合には予め財務局に登録することが必要であり、登録業者以外はこの支払手段を発行することはできません(7条)。

供託義務等

前払式支払手段を発行する業者は、倒産等の不測の事態に備えて利用者を保護するために一定の資金を保全する義務を負います。基準日(3月31日、9月30日の年2回、3条2項)において未利用残高が1000万円を超える場合には次のいずれかの措置を取る必要があります。 ①未利用残高の2分の1以上の金額を供託する(14条1項)②一定の政令の要件を満たす銀行と保証契約を締結し財務局に届出る(15条)③信託会社と信託契約を締結し一定の財産を信託した上で財務局に届出る(16条1項)。

コメント

LINEは「LINE POP」内で発行されている宝箱の鍵は当該ゲーム内でしか使用できないもので、その概観や使用態様はあくまでもゲーム内アイテムであり、資金決済法の規制する通貨や前払式支払手段等には当たらない旨発表しています。しかし鍵の数に応じて対価が支払われ、その鍵の使用数に応じてサービスが変化し、使用の際には電磁的に提示または通知することから上記4要件を満たし前払式支払方法に該当すると判断される可能性は高いものと思われます。宝箱の鍵は1個110円相当で、未使用残高は230億円分に登ります。前払式支払方法に該当する場合、財務局への届出と、100億円を超える供託義務を負う可能性もあります。財務局の立入検査の結果によっては業務改善命令(25条)によってこれらの義務を課され、場合によっては罰則の適用もあり得ます(109条)。スマホのアプリやソーシャルゲーム等が爆発的に発展する中、その利用に関しては思わぬ法規制に抵触することもあり得ます。アプリやゲーム内でポイント等を販売している場合は今一度、資金決済法についても見直すことが重要ではないでしょうか。

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本記事は、約4年2ヶ月前に投稿された記事です。法律に関連する記事の特性上、法改正や特別法の施行、経過措置期間の経過、新たな条文解釈を示唆する判例の登場などにより、記事の内容と現在の法律運用・解釈との間に齟齬が生じている可能性もございます。何卒、ご注意ください。
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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

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