テキシアジャパン幹部を起訴、預かり金の禁止について

はじめに

 架空の投資話で多額の出資金を集めた事件で名古屋地検は先月24日、投資コンサルティング会社「テキシアジャパンホールディングス」(千葉市)の幹部遠藤善治容疑者(49)を起訴していたことがわかりました。同社経営者は既に詐欺罪で起訴されております。今回は出資法の預かり金規制を見直します。

事件の概要

 報道などによりますと、テキシアジャパンは平成25年7月~29年9月にかけて架空の出資話で全国の会員約1万3千人から計約460億円を集めたとされます。その際に元本を保証した上で年36%の利息をつけて返還するなどと説明していたとのことです。同社の実質的経営者である銅子正人被告(41)は既に詐欺罪と出資法違反で起訴されており、同社幹部の男女8人もそれぞれ出資法違反で起訴されております。この件で先月18日に被害対策弁護団が結成されており今後訴訟も視野に準備を進めていくとしています。

出資法による規制

 出資法2条1項によりますと、「他の法律の特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない」とされております。つまり銀行などの金融機関でない者が預貯金等に類する行為を行うことはできないということです。違反した場合には3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となります(8条3項1号)。以下要件を具体的に見ていきます。

預り金の要件

 出資法が規制する預り金に該当するための要件としてはまず、①不特定多数の人間への勧誘が挙げられます。狭い範囲の会員に限定されている場合などは該当しません。そして②元本保証の下に③金銭その他有価証券等を集めること、それに対し④金銭が返還されることとなります。つまり金銭や有価証券等を集め、マイナスとならない元本保証をした上で金銭を返還するといった内容で資金を集めることが違法となります。その際の名目は問わないと言われており、たとえば入会金や融資、出資金、借入金、利益分配金等どのような名目で行われても、実質的に上記内容となっているのであれば違法となります。

罪数および詐欺罪との関係

 預り金の勧誘行為は通常、不特定多数の人間に行われ、多数の人間から多数回にわたり金銭を受けるといった例が多いと言えます。この場合でも勧誘内容が同一であれば全体で一つ罪になると考えられております。また預り金の受け入れは同時に刑法の詐欺罪(246条)に該当することもあります。詐欺罪にも該当する場合とは、返還が不能であることを認識しつつ勧誘するなど、騙し取る意思(故意)がある場合などが挙げられます。この場合は実務上は詐欺罪だけが適用されると言われております。

コメント

 本件でテキシアジャパンは架空の投資話で全国の不特定多数の人間に対し元本保証を謳った上で出資を募っていたと言われております。これらの行為は出資法の預り金に該当すると判断される可能性が高いと言えます。以上のように出資法の預り金は不特定多数への勧誘と元本保証がポイントとなります。本来この規定は詐欺罪が適用できない事例、つまり詐取の故意が立証できない場合を想定して制定されたという背景があり、だまし取るつもりは無かった場合、事業のための出資のつもりであり問題なく返還できると考えられていた場合などでも適用があります。共同で事業を行うなど、多数の者から資金を集める場合には上記の要件を念頭に、違法な預り金に該当しないよう慎重に行うことが重要と言えるでしょう。

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元ITエンジニア・ライター。

東証一部上場企業からシードステージのベンチャーまで、約60社の顧問弁護士等、イースター株式会社の代表取締役、株式会社KPIソリューションズの監査役、株式会社BearTailの最高法務責任者などを務める。JAPAN MENSA会員
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編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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■上田潤一
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/パートナー弁護士

01年東京大学法学部卒業
04年弁護士登録
12年米国Vanderbilt University卒業(LL.M.)
13年ニューヨーク州弁護士登録、英国University College London卒業(LL.M.)
労働法、社会保険・労働保険・年金に関連する法律、会社法、個人情報保護法等の法分野に関する業務を中心に、労働案件、一般企業法務の案件、紛争案件等を取り扱っている。
著作に『仕事でよく使う・すぐに応用できるビジネス契約書作成ガイド』(共著)(清文社、2017)、『実務Q&Aシリーズ 懲戒処分・解雇』(共著)(労務行政、2017)等がある。

■荻野聡之
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/アソシエイト弁護士

03年東京大学法学部卒業
06年東京大学法科大学院卒業(法務博士(専門職))
08年弁護士登録
労働法、危機管理、事業再生等の法分野に関する業務を中心に取り扱っている。
著作に『企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職』(共著)(商事法務、2013)、『労使双方の視点で考える 27のケースから学ぶ労働事件解決の実務』(共著)(日本法令、2015)、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(共著)(商事法務、2017年)等がある。

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ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士

1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

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