福井コンピュータ社長解任請求、役員解任の手続きについて

はじめに

福井コンピュータホールディングス(福井市)は4日、筆頭株主のアセットマネジメントから現社長の解任を請求する書面を受けた旨発表しました。それを受け今後臨時株主総会が開催される見通しです。今回は株主による役員解任請求とその手続きについて見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、福井コンピュータの筆頭株主であるアセットマネジメント社は、現代表取締役である蕗野勝氏の解任を目的とした臨時株主総会の招集請求書を同社に送付しました。アセット社はその理由として「蕗野氏が代表取締役として従業員の管理監督ができていない」「ガバナンスを強固なものとするため」としています。アセット社の持株比率は現在発行済株式の42.42%を占めております。福井コンピュータの取締役は現在蕗野氏を含めて7名でアセット社の会長が社外取締役を努めております。臨時株主総会の開催日は未定となっております。

株主による株主総会招集

株主総会の招集は原則として取締役が招集することになりますが(会社法296条3項)、一定の場合には株主が招集請求することができます。議決権の3%を6ヶ月保有する株主はその目的と理由を示して会社に対し株主総会の招集を請求することができます(297条1項)。議決権割合と保有期間については定款で減少させることも可能で、非公開会社については保有期間制限はありません。この3%の議決権は1人の株主で満たす必要はなく、数名で3%以上を確保し共同で招集請求することも可能です。

役員解任手続き

役員の解任は選任と同様に株主総会の普通決議で行ないます(339条1項、341条)。対象となっている取締役が累積投票で選任された者であるときは特別決議を要します(342条6項、309条2項7号)。累積投票制度とは複数の取締役を選任する場合に各株主が1株(1単元)につき選任する取締役の数だけ投票権を持ち、それを集中して投票することも分散させて投票することもできる制度です(342条)。これは少数株主の意思も反映させようとする趣旨です。また解任の対象が監査役である場合も特別決議を要します(343条4項、309条2項7号)。

解任請求

上記株主総会で解任決議が否決された場合でも、一定の要件のもとで裁判所に役員解任の訴えを提起することができます(854条)。具体的な要件としては、①総議決権または発行済株式の3%以上を6ヶ月間保有していること、②解任決議が否決されたこと、③役員が職務執行に関し「不正の行為」「法令若しくは定款に違反」する重大な事実があったことが挙げられます。議決権割合については株主総会招集と同様に定款で引き下げることができ、非公開会社では6ヶ月制限はありません。解任決議での否決は定足数が満たずに決議を取れなかった場合も含みます。なお判例では任期満了後に員数不足でなお「権利義務」を有することになる役員に対しては解任の訴えは許されないとしています(最判平成20年2月26日)。また就任前に行った「不正の行為」を理由とする解任請求も認められないとされております(宮崎地判平成22年9月3日)。

コメント

本件でアセット社は福井コンピュータの発行済株式の42%を保有していることから株主総会の招集請求要件は満たすことになります。しかし議決権の過半数には及ばないことから臨時株主総会における解任決議が可決されるかどうかは不透明と言えます。否決された場合には裁判所への解任請求が検討されると思われますが、その場合には法令、定款違反の有無が争点となると考えられます。以上のように役員の選任、解任については原則として株主がイニシアチブを持っており、解任要件なども複雑な点が多々あります。また解任された役員は解任に「正当な理由」がある場合を除き損害賠償請求を会社にすることができます(339条2項)。この損害とは残りの任期分の報酬ということになります。非公開会社では取締役の任期は10年まで伸ばすことができますが、任期が長ければその分解任した場合の賠償額が多額なものとなります。役員の解任を求める意見が株主等から出た場合には、これらの点に留意して手続きを進めることが重要と言えるでしょう。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約1年1ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

企業 法務ニュース 商事法務 会社法
第104回MSサロン(名古屋会場)
2018年11月07日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「国際取引契約の実務入門~英文契約を取り扱う際に最低限知っておくべきこと~」です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 商事法務 会社法
【名古屋開催】自動運転技術に関する法律問題《ITビジネス法務勉強会:第6回》
2018年11月22日(木)
15:00 ~ 17:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介 杉谷 聡
■和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■杉谷 聡
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高等学校卒業
2016年 一橋大学法学部卒業
2017年 弁護士登録(70期 愛知県弁護士会)
オリンピア法律事務所入所
ITに関する法律を学び、ビジネスに活かしていただくためのITビジネス法務セミナーです。第6回目のテーマは自動運転技術に関する法律問題です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 商事法務 会社法
《東京開催》GDPR対応の実務 日本企業にとってのFAQと優先順位
2018年11月16日(金)
09:45 ~ 11:45
17,000円(税別)
東京都港区
講師情報
石川 智也
西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録

日本における知的財産法、営業秘密保護、個人情報保護法のほか、
EUにおける知的財産制度・競争法、EUデータ保護規則をはじめとする
グローバルベースでのデータ規制についても詳しい。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
本講演では、多くの日本企業のGDPR対応をサポートしてきた講師が、その過程でよく質問を受ける事項を解説するとともに、
作業の優先順位を明確にして、日本企業がどのようにGDPR対応を行い、今後どのようにGDPRコンプライアンスを維持していくべきかについて解説いたします。

解説に際しては、欧州データ保護評議会(EDPB)が公表・承認しているガイドラインの内容を踏まえることはもちろんのこと、各国の監督当局が公表している情報・オピニオンや、
GDPR施行後の当局の執行状況を含め、現地の最新動向について、お話ししいたします。

また近時、M&Aのデューディリジェンスの過程で買収する会社のGDPRコンプライアンスが問題になることがしばしばありますので、その際のチェックポイントについても触れたいと思います。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 商事法務 会社法
《東京開催》企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点
2018年11月07日(水)
14:00 ~ 16:30
18,000円(税別)
東京都港区
講師情報
野呂悠登
TMI総合法律事務所 弁護士

東北大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了

平成27年改正個人情報保護法の全面施行前後に、
個人情報保護委員会事務局において、
法令関係とデータの利活用関係を担当

近時の著書等には『個人情報管理ハンドブック[第4版]』(商事法務、2018)、
「AIによる個人情報の取扱いの留意点」(Business Law Journal、2018年6月号)、
「ビッグデータ・個人情報の利活用と先端ビジネス」(Business Law Journal、2018年8月号付録〔LAWYERS GUIDE〕)等がある。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
最近、AI関連技術の発展等により、AIの活用に対する期待が高まっており、ビジネスにおいて実際にAIの活用を始める企業が増えてきています。

AIを活用する場合、従来人間の脳が行っていた知的な作業をコンピュータに行ってもらうことになるため、従来想定されなかった様々な法的問題点が生じることが想定されます。
特に、機械学習を用いたAIを用いる際には、従来とは異なる方法で大量の情報を集積し又は処理を行うため、個人情報保護法やプライバシー権との関係が問題となりやすいと考えられています。

本セミナーでは、平成27年の個人情報保護法の全面施行前後において、同法を所管する個人情報保護委員会にて法令の担当者を務めた講師により、
AIを活用することを検討している企業の担当者向けに、企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点を具体的な事例を基に解説します。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 商事法務 会社法
《東京開催》海外企業との販売店契約/ディストリビューション契約 -豊富な実例に基づく、各条項の検証-
2018年11月06日(火)
09:30 ~ 11:45
17,000円(税別)
東京都港区
講師情報
豊島 真
小島国際法律事務所
パートナー 日本及びカリフォルニア州弁護士

東京大学法学部卒
1999年弁護士登録(第二東京弁護士会)
カリフォルニア大学デービス校ロースクール修士課程卒(LL.M.)
国内外の販売店契約に関する取扱い案件多数
著作に「販売店契約の実務」(中央経済社・共著・編集担当)

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
販売店契約(ディストリビューション契約)は、サプライヤーの商品を、販売店(ディストリビューター)の販売チャネルを通じて販売するための契約です。
本セミナーではかかる販売店契約を取り扱いますが、その意義・目的は以下のとおりです。

①実際の事例の紹介を多く行います。よく見かける契約書の条項の一言一句の大切さは、実際に問題が起こってから初めて思い知らされることが多いものです。
実際に起こった問題に触れながら、これまで見過ごしていたかもしれない各条項の重要性について見ていきます。

②販売店契約は、企業間取引で最も頻繁に使われる契約の1つであり、英文契約の入門科目として最適と言えます。

これから英文契約について本格的に学びたいという方にも役立ちます。
(参考資料として、英文販売店契約のひな型をお配りします。)
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

マイナンバー制度で事業者が注意すべき点... 1.はじめに  12月1日(火)、マイナンバー制度は個人情報漏洩の危険が高く、憲法13条が保障するプライバシー権を侵害するとして、弁護士や住民で構成されるグループが国を相手取り、東京、金沢、大阪等の地方裁判所に一斉に訴訟を提起した。原告らは、個人情報管理の安全性を問題視したうえで、個人情報の漏洩...
朝来市、2社相手に仕組み債損失で提訴へ 自治体初...  事案の概要  兵庫県朝来市は、6月21日、為替相場に連動する「仕組み債」で多額の評価損を抱えたとして、SMBC日興証券と三井住友銀行に約4億8千万円の損害賠償を求める訴訟を起こすことを決定した。朝来市によると、各地の自治体が仕組み債で損失を抱えているが、提訴は全国で初めてということだ。 ...
商標権を侵害された場合に企業が取れる対策... 1 事案の概要 大阪の洋服店6店舗が有名ブランドに似せたロゴマークやデザインが書かれたパロディー商品などを販売していた為、商標法違反の疑いで6店舗の従業員13人が逮捕されました。警察が押収したパロディー商品は数百点にも及びます。 2 商標権  商標とは、事業者が、自己の取り扱う商品・サービ...