調理の在留資格ない外国人を違法に働かせた疑い、「ジャパンチキンフードサービス」社長ら逮捕
2023/11/21   外国人雇用, コンプライアンス, 労働法全般, 入管法, 外食

はじめに


恵比寿エリアで複数の飲食店を集中展開する株式会社ジャパンチキンフードサービス。「調理」を担当できる在留資格のない外国人を違法に店舗で働かせたとして社長ら3名が逮捕されました。

在留資格外の労働させた


報道などによりますと、社長ら3人は2021年3月から去年6月まで、経営する飲食店「sacra(渋谷区恵比寿)」にて、調理を担当できる在留資格のないスリランカ国籍の男性を違法に働かせた出入国管理法違反(不法就労助長)の疑いが持たれています。

スリランカ国籍の男性は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で滞在しており、同在留資格では本来、機械工学などの技術者、通訳、デザイナー、企業が運営する語学学校の教師、マーケティング業務従事者などの活動のみが許可されています。
しかし社長らは、スリランカ国籍の男性が資格外活動の許可を受けていないのに調理担当などとして働かせたとみられています。

3人は容疑を否定していますが、この飲食チェーンでは今回のスリランカ国籍の男性を含み、スリランカ国籍とネパール国籍の25~41歳の男性8人が、合わせて4店舗で在留資格外の労働をした疑いが持たれており、そのうち6人が書類送検されているということです。また、法人としてのジャパンチキンフードサービスも17日に書類送検されており、警察は雇用形態を含め、詳しい実態を調べています。

スリランカ国籍の男性は数年前に来日し、友人の紹介でジャパンチキンフードサービスの採用面接を受けたということです。その際、長時間労働でき、かつ取得が比較的簡単な「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更させたうえで採用し、在留資格外の活動である調理を担当させられたといいます。男性は報酬として月40万円程度もらっていたそうですが、勤務実態としてほぼ休みがなく、1日平均で12時間以上働いていたということです。さらに、外国人従業員の中には、1カ月に31日出勤し、合計で304時間労働した人もいたと報道されています。

 

不法就労とは


では、そもそも不法就労となるのは、どういったケースなのでしょうか。

(1)不法滞在者や被退去強制者が働く
・密入国した人や在留期限の切れた人
・退去強制されることが既に決まっている人

(2)出入国在留管理庁から就労の許可を受けていないのに働くケース
・観光等の短期滞在目的で入国した人
・留学生や難民認定申請中の人が許可を受けずに勤務

(3)出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働くケース
・外国料理のコックや語学学校の先生として働くことを認められた人が工場で作業員として勤務
・留学生が許可された時間数を超過して勤務

今回の逮捕容疑である「不法就労助長罪」は、事業者が不法就労させた又は不法就労をあっせんした場合に適用されます。仮に企業側が不法就労の事実を知らなかった場合でも、在留カードを確認していない等の過失があるときには処罰対象となり、3年以下の懲役・300 万円以下の罰金となります。

また、不法就労させたり、不法就労をあっせんした外国人事業主は退去強制の対象となるほか、外国人の雇入れまたは離職をハローワークに届出をしなかった又は虚偽の届出をしたなどのケースでは、30 万円以下の罰金となる恐れがあります。

 

外国人雇用の際には


外国人労働者数は、届出が義務化された平成19年以降増加しており、令和4年に過去最高を更新しています。そんな中、企業が知らない間に外国人労働者を不法就労させていたケースもあるといいます。
では、外国人雇用の際にはどのようなポイントに気をつければよいのでしょうか。以下のポイントを確認する必要があります。

○在留カード表面の「就労制限の有無」欄に“就労不可”と書いてないか
○在留カードの有効期限
○在留カード裏面の「資格外活動許可」欄に記載があるか
・「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」
(複数のアルバイト先がある場合にはその合計が週28時間以内)
・「許可(「教育」「技術・人文知識・国際業務」「技能」に該当する活動・週28時間以内)」
(地方公共団体等との雇用契約に基づく活動である必要あり)
・「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」

不法就労防止に(法務省)

 

コメント


不法就労助長の疑いが持たれている今回の事案。それとは別に、外国人労働者が置かれている劣悪な労働環境も見え隠れしています。
一般的に、労働基準法などの「公法」は、事業者と外国人労働者間の労働契約で定めた準拠法に関わらず、労働者が日本国内で就労している限り適用されます。そして、それは労働者が不法就労者か否かを問わないとされています。

しかし、外国人労働者側の日本法の不知や、不法就労への罪悪感などから声があげられず、一部の事業所で、労働基準法違反の労働環境がまかり通っているといいます。

飲食・小売業界などを中心に人手不足が叫ばれている中、外国人労働者の雇用は有力な選択肢の一つとなりつつあります。まずは、外国人労働者であっても、通常の労働関係法規の適用を受けることを十分に念頭に置いたうえで、慎重な在留資格の確認が求められます。

 

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