糖質カット炊飯器で優良誤認表示、販売会社4社に措置命令
2023/11/14   コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法, メーカー

はじめに


「糖質をカットしてご飯を炊ける」と謳っていた炊飯器の表示に合理的な根拠を示せなかったとして、消費者庁は10月31日、景品表示法第5条1号違反(優良誤認)を理由に、炊飯器の販売会社4社に対し、再発防止などを求める措置命令を出しました。

 

糖質カット炊飯器にメス


消費者庁の発表によりますと、今回、措置命令を受けたのは、株式会社forty-four、ソウイジャパン株式会社、株式会社EPEIOS JAPAN、HR貿易株式会社の計4社です。

4社は、糖質カットを謳う炊飯器(以下、「糖質カット炊飯器」)を販売していましたが、自社のWEBサイトや大手ECサイトの商品ページ、動画広告、新聞広告、リリース記事などに、

・「減らす 控える 落とす 美味しさそのまま 糖質45%カット炊飯器」
・「糖質最大54%を実現しました」

などと記載していたほか、糖質カットの仕組みについても説明しており、「従来の炊飯機能でご飯を炊いた場合と同じような炊き上がりながら、糖質をカットできる」かのように表示していたということです。

消費者庁は、景品表示法第7条2項に基づき、4社に対し、期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めていましたが、提出された資料はいずれも裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかったとしています。

報道などによれば、糖質カットとして炊いたお米は、おかゆのように水分を多く含んだ米飯で、水分が増えたことで総重量に占める糖質の割合が低くなり、計算上、糖質率が下がった形になっていたということです。

消費者庁は、4社に対し、
(1)販売した糖質カット炊飯器の内容が、景品表示法違反にあたる「優良誤認」の表示であったことを消費者に周知徹底すること
(2)再発防止策を講じて、役員・従業員に周知徹底すること
(3)今後は、表示の裏付けとなる合理的根拠をあらかじめ有することなく、表示を行わないこと

などを内容とする措置命令を出しました。

糖質カット炊飯器の販売事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について(消費者庁)

 

法改正で繰返し違反業者に罰則強化


景品表示法をめぐっては、不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(令和5年法律第27号)が今年5月10日に成立し、17日に公布されています(公布日から1年半を超えない範囲内において政令で定める日より施行)。
法改正の背景として、新型コロナウイルスの感染拡大などで外出が難しくなった中、EC(電子商取引)市場やネット広告市場が拡大。それに伴い、ネット広告を不正に利用する事例などが多数指摘されていたことが大きな理由とされています。

改正点は複数に及びますが、主な改正の一つが、課徴金制度の見直しです。

課徴金の額は、原則、対象となる商品・サービスの売上額の3%と定められており、消費者庁が売上額算定の基礎となるべき事実の調査を実施します。しかし、事業者によっては、対象となる商品・サービスの品目別に売上額データが整理されておらず、正確な売上額を報告できない事例がみられていました。

そこで、今回の法改正で、「課徴金の計算の基礎となるべき事実を把握することができない期間における売上額を推計することができる規定」が整備されました(第8条4項)。また、違反行為を繰り返す事業者への取り締まり強化として、違反行為からさかのぼって10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者については、課徴金の額を1.5倍に加算する規定が新設されています(第8条5項・6項)。

さらに、罰則規定についても拡充しており、表示と商品・サービスの実態との乖離を認識しながら、優良誤認表示・有利誤認表示を行った悪質な事業者に対しては、100万円以下の罰金とする直罰(違法行為に対して即時に適用される罰則)が新設されました(第48条)。

 

コメント


2018年に日清オイリオグループとトレンド総研が共同で行った調査で、ダイエッターの56%が「糖質制限ダイエットに挑戦したことがある」と回答するなど、糖質制限は一大ブームとなっています。そのブームに乗る形で販売されていた糖質カット炊飯器。措置命令を受けた4社は、それぞれのWEBサイトなどで説明・釈明を行っています。

近年、規制が強化されている景品表示法の優良誤認表示・有利誤認表示。一度、措置命令を受けると、消費者からの信頼を大きく損なうリスクがあります。
商品・サービスの広告を検討する際、現場では他社の広告を模倣するケースも少なくないといいますが、場合によっては、一網打尽で措置命令の対象となるおそれがあります。

社内で、こうしたリスクを十分に周知したうえで、法務側で広告審査を行う際は、「表示に裏付けとなる合理的な根拠があるか」という視点で慎重な精査・ヒアリングを行うことが重要です。

 

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