カルテル・談合リスクに対し事前予防の見地からいかに対処すべきか
2015/10/23 独禁法対応, 独占禁止法, その他

1 概要
平成22年5月にベアリング(軸受け)の販売を巡りジェイテクスト・日本精工・NTN・不二越の大手メーカーが価格を形成したベアリングカルテル事件、平成23年10月に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が発注した北陸新幹線消雪・融雪設備工事に関し事業者間で入札談合が行われたいわゆる北陸新幹談合事件などが記憶に新しい。ベアリング事件で公正取引委員会はNTN社に対し約70億円の巨額な課徴金を課されたこともあってカルテル・談合が発覚すると課徴金を含めた深刻な打撃を受けるリスクがあり、企業の法務部としても対策を練る必要があります。
2 リスクの内容
(1)課徴金納付命令
課徴金額はカルテル実行期間(最長三年)における対象商品・役務の販売額×課徴金算定率から成り1社あたり100億円以上の課徴金納付命令を受ける事案も珍しくありません。
(2)行政処分(場合によっては刑事罰)
カルテル・談合がなされると課徴金納付命令に加えて排除措置命令もなされます。さらに北陸新幹線談合事件のように公益性が認められる事案だと刑事事件として関係者8名が起訴されています。
(3)株主代表訴訟
東日本電信電話株式会社等発注の光ファイバーケーブル製品の製造業者が価格カルテルを行った事件について株主は同社の取締役に対し本件カルテルに関与又は黙認した過失、カルテル防止に関する内部統制システム構築義務違反等を根拠に約67億円の株主代表訴訟(会社法847条)が提起されました。
(4)社会的制裁
会社のコンプライアンスの重要性が叫ばれるなか独占禁止法に反するカルテル・談合行為をしたことは法令順守の姿勢に欠ける企業として社会的イメージ・信用不安の低下が考えられます。
3 事前の対策
(1)モニタリング
自社の営業社員等がとりわけ同業他社と接触していないかサーバー上のデータの監視、自社施設利用のチェック、社員のヒアリング、顧問弁護士への相談が考えられます。カルテル・談合事例に精通する弁護士であれば効果的なチェックポイントを熟知しているため、顧問弁護士と相談・協働のもとにモニタリングを行うことが考えられます。
(2)社内での周知活動
①従業員の意識改革
日本は伝統的に談合自体が慣習として行われた文化的背景も影響して談合・カルテルに関する従業員の意識が低いことが大きな要因として考えられます。そこで社内での周知活動を行うにあたって上記2で指摘したリスクだけではなく研修会等で企業の経営者・社長等も積極的に参加し全社的に取り組む姿勢を見せることで従業員の意識を変える必要があります。
②リニエンシー(課徴金減免)制度の説明・社内的導入
リニエンシーは談合・カルテルを自主申告し必要な報告を行った企業に対し課徴金を減免する制度です。自主申告をした順に課徴金額が異なるだけでなく(免除の可能性も)、行政上の排除措置命令の対象外となりかつ刑事罰も課さない運用が行われています。
リニエンシーは申告順によりますが様々な恩恵を受けられるため事前予防の観点からも極めて重要です。談合・カルテル行為を自主申告してきた従業員に対しては匿名性の保障、懲戒処分等にあたって自主申告した事実を考慮すること等が考えられます。リニエンシー制度を利用する場合談合・カルテルをした企業間で申告レースになるためリニエンシー制度の説明とその社内的導入は必須となります。なお上記2(3)の株主代表訴訟においてはリニエンシーの内部統制システム構築義務違反も争われました。
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