イベント中のDJ SODAさんの性被害、主催者が刑事告発
2023/08/23   危機管理, 刑事法, エンターテイメント

はじめに


韓国の人気女性DJ「DJ SODA」さんが、野外音楽イベントでの公演中、付近にいた観客から胸などを触られる被害に遭いました。イベント運営会社はこの事態を受け、8月21日、不同意わいせつと暴行の容疑で大阪府警に刑事告発したということです。
事件の概要を追うと共に、今年7月に改正、施行された不同意わいせつ罪について確認していきます。

 

公演中に突然胸を触られた


今回、被害に遭ったのは韓国人DJ・DJ SODAさん。彼女はソウルの有名クラブのDJとして人気となったのち、アジアや欧米の様々なイベントやフェスにも出演するなど活躍の場を広げていました。Instagramのフォロワー数は500万人を超えていて、インフルエンサーとしても知られています。

DJ SODAさんは今月13日に大阪・泉南市で開かれていた音楽イベント「MUSIC CIRCUS’23」で、パフォーマンス中に観客席に近づいた際に、複数の観客から胸を触られるなどの被害にあったということです。
DJ SODAさんは公演の翌日に、「数人が突然私の胸を触ってくるというセクハラを受けました」などと投稿し、被害を訴えていました。

イベントを主催した株式会社TryHard Japanは15日、文書をホームページに掲載し、「性暴力、性犯罪であり、断じて許すわけにはいきません」と主催者として事実関係を調査し、再発防止を徹底すると声明を出しました。

MUSIC CIRCUS’23で発生した性暴力事件について(TryHard Japan)

そして21日、TryHard Japanは観客の男女3人について、氏名などを特定しないまま不同意わいせつなどの疑いで警察に刑事告発しました。警察は告発を受理し、当時撮影された動画やSNSの画像を解析するなどして捜査を進めるとしています。

 

不同意わいせつ罪とは


今年7月13日、性犯罪規定を見直す改正刑法が施行され、強制・準強制性交罪が統合されて「不同意性交罪」に、強制・準強制わいせつ罪は「不同意わいせつ罪」となりました。
不同意性交罪と不同意わいせつ罪の要件は、以下の8つの行為又は事由等により、「同意しない意思を形成、表明、全うすることのいずれかが難しい状態」にすることとなっています(改正刑法第176条1項)。

①暴行または脅迫
②心身の障害
③アルコールまたは薬物の影響
④睡眠その他の意識不明瞭
⑤同意しない意思を形成、表明または全うするいとまの不存在(不意打ちなど)
⑥予想と異なる事態との直面に起因する恐怖または驚愕(フリーズ)
⑦虐待に起因する心理的反応(虐待による無力感、恐怖心)
⑧経済的または社会的関係上の地域に基づく影響力による不利益の憂慮
(祖父母・孫、上司・部下、教師・生徒などの立場ゆえの影響力によって不利益が生じることを不安に思うこと)

また、上記に当てはまらなくても、「わいせつな行為ではないと誤審させたり、人違いをさせること、または相手がそのような誤信をしていることに乗じること」でも成立します(同法第176条2項)。

罰則については、性行等をした場合(不同意性行等罪)、5年以上の長期懲役。わいせつな行為をした場合(不同意わいせつ罪)、6月以上10年以下の懲役が科せられます。

性犯罪関係の法改正等 Q&A(法務省)

 

コメント


不同意わいせつ罪をめぐってはすでに逮捕者が出ています。プレジャーボート内で、船酔いをしてぐったりしていた40代女性の胸を触るなどしたとして、会社員の男が逮捕されたほか、広島市の17歳の男子高校生は、面識のない10代女性の胸などを触ったとして逮捕されています。

わいせつ関連の犯罪では、逮捕後に被疑者が「相手も同意していると思っていた」と主張することが少なくありません。しかし、法改正により、今後は、「同意があった」とする根拠を8つの要因などと照らし合わせて証明していく必要があります。具体的には、出会いの経緯、性行為が行われた状況や場所、前後の会話や行動などが重要になると考えられます。

この不同意わいせつ罪については、企業も無関係ではいられません。今までは、プライベートな恋愛の延長線として捉えていた社員同士の関係や取引先担当者等との関係が、経緯によっては、後日、不同意わいせつ罪に問われるおそれがあるためです。
いまだ、同意の有無についての判例の蓄積がないため、法務として同罪の線引きを示すことは難しい状況ですが、まずは、今回の改正内容とリスクとなる行為の社内周知から、始めてみてはいかがでしょうか。

 

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