高裁で初判断、ワンセグ携帯でも受信料支払い義務認定
2018/03/28

はじめに
東京高裁は22日と26日、テレビを視聴できるワンセグ機能付き携帯を所持している男性がNHKに受信料の返還を求めていた2件の訴訟の控訴審で請求を棄却する判決を相次ぎ出しました。受信設備の携帯も「設置」に当たるとのことです。今回は昨今問題となっている放送法上の受信設備について見ていきます。
事案の概要
事件はいずれもワンセグ機能付き携帯を所有していることからNHKに受信契約を締結させられ、受信料を支払ったことから受信契約の不存在確認と支払い済み受信料の返還を求め提訴されていたものです。一審判決は千葉地裁とさいたま地裁で出され、千葉地裁では受信契約の締結義務有りとする判決が、他方さいたま地裁では義務無しと結論を二分する判決出されておりました。同様の訴訟は全国で5件存在し、義務の不存在を認めた例はさいたま地裁のみとなっております。
問題の所在
近年NHKとの受信料を巡る紛争は多数起こっておりますが、その内容は主に物件の所有者か利用している顧客のどちらが受信料を負担すべきか、そもそも受信契約の締結義務自体が存在するのかという問題に分けることができます。前者では各部屋にテレビが備え付けられているホテルや家具付きマンションで問題となり訴訟に発展しました。後者では契約締結義務発生の根拠となる受信設備の意義や受信形態について問題となります。本件は後者の問題ということです。
放送法の規定
放送法64条1項によりますと、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」としています。一方ただし書で「放送の受信を目的としない受信設備…については、この限りでない」としています。NHK側としてはNHK放送が受信できるものであればテレビに限らず、PCや携帯電話、スマホ、カーナビ、DVDプレイヤーなども「受信設備」に該当するとしています。ただし書の放送受信以外を目的とする設備とはゲームやDVDなどの視聴のみを目的とするテレビなどを指しますが、これについてNHK側の公式な見解は現時点では公表されておりません。今回問題となったのは受信設備を携帯する場合でも「設置」と言えるかという点です。
地裁の判断例
「受信設備を設置した」の解釈について一審判決は割れております。ワンセグ機能付き携帯を「携帯」することも「設置」に当たるとした水戸地裁判決では「設置」とは放送を受信することのできる受信設備を使用できる状態におくことを言い、「携帯」の概念を包含するとしています。一方で否定したさいたま地裁判決では受信料は租税に類する性質を有するとして、支払いの対象は明確にする必要があるとし、放送法の条文上も「設置」と「携帯」区別していることから携帯することは「設置」には該当しないとしています。
コメント
以上のように見解が分かれていた「設置」の解釈について東京高裁は、携帯することも「設置」に該当するとの見解を示しました。原告男性らは上告する方針を示しています。受信設備を保有する者に強制的に受信契約を義務付ける放送法の合憲性が争われ、昨年12月に最高裁で合憲判決が出ましたが、契約義務発生の要件である「設置」の解釈については今後最高裁の判断が待たれることになります。NHKの受信契約の扱いは、一般家庭なら世帯ごとに、事業所の場合は部屋ごとの契約となります。またワンセグ機能やインターネットによる視聴が可能な場合も契約義務ありとしています。店舗等でもっぱら展示やディスプレイ用としてモニターを設置している場合などに関しては今の所公式見解が無くはっきりしておりませんが、テレビ等を設置している場合は放送法上のどの部分が問題となるかを把握した上で今後の判例の動向に注視していくことが重要と言えるでしょう。
新着情報
- まとめ
- 独占禁止法で禁止される「不当な取引制限」 まとめ2024.5.8
- 企業同士が連絡を取り合い、本来それぞれの企業が決めるべき商品の価格や生産量を共同で取り決める行...
- 解説動画
大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間
- 弁護士
- 境 孝也弁護士
- さかい総合法律事務所
- 〒105-0004
東京都港区新橋3-9-10 天翔新橋ビル6階
- ニュース
- 要件の厳格化を経団連が提言、株主提案について2025.12.11
- NEW
- 経団連は12月8日、コーポレートガバナンスに関し、株主提案権の要件を厳格化すべき旨を提言しまし...
- セミナー
殿村 桂司 氏(長島・大野・常松法律事務所 パートナー)
板谷 隆平(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 【アーカイブ配信】24年日経弁護士ランキング「AI・テック・データ」部門1位の殿村氏が解説 AIに関する法規制の最新情報
- 終了
- 2025/05/23
- 23:59~23:59
- 業務効率化
- クラウドリーガル公式資料ダウンロード
- 解説動画
江嵜 宗利弁護士
- 【無料】今更聞けない!? 改正電気通信事業法とウェブサービス
- 終了
- 視聴時間53分
- 業務効率化
- 法務の業務効率化
- 弁護士

- 横田 真穂弁護士
- 弁護士法人咲くやこの花法律事務所
- 〒550-0011
大阪府大阪市西区阿波座1丁目6−1 JMFビル西本町01 9階










