医療広告法務まとめ
2017/01/27   薬事法務, 広告法務, 薬機法, 医療・医薬品

はじめに
 広告法務の中で、医療広告については、厳格な法規制がされている分野です。例えば、街の立て看板の病院の広告がシンプルなものであるのには理由があり、「不特定多数へ広告」する場合、虚偽広告の禁止、比較広告の禁止、誇大広告の禁止という三つの規制があります。このような規制を順守しなければ、罰則の適用があり、広告代理店等の法務担当者は、この点について、規制の趣旨を理解し、具体的に適用する必要があります。そこで、医療広告規制をまとめます。

医療広告規制の趣旨
それでは、なぜ医療広告は、他の広告とは区別された特別な規制が存在するのでしょうか。厚生労働省の医療広告規制のガイドラインによれば、

①医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘 引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しい
②医療は極めて専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から提供さ れる実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難である

とあります。
厚生労働省 医療広告ガイドライン(pdf)
つまり、医療は不適当なサービスがされた場合に、人の生命・身体に被害を与える可能性があり、広告が例えば過度なものとなれば、患者を誤って誘因し
、健康被害などのリスクを生じさせます。
また、医療は専門性の高い領域であり、受け手の側でサービスの質について判断するのが難しく、事前の規制に服します。

医療広告規制の適用対象
医療広告規制は、「広告」に対して適用されます。医療広告には、ホームページ、立て看板、ビラなど様々な方法がありますが、まず、「広告」に該当するかどうかを判断する必要があります。
① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性)
② 医業若しくは歯科医業を提供するものの氏名若しくは名称又は病院等の名称が特定可能であること(特定性)
③ 一般人が認知できる状態にあること(認知性)
→上記1~3のいずれの要件も満たす場合に、広告に該当するものと判断
参考 医療広告ガイドラインの概要

※実質的に「広告」にあたるもの
広告規制の対象となることを避ける意図をもって外形的に上記1の①~③に該当することを回避するための表現を行う者があることが予想される。しかしながら、実質的に要件を満たすと評価される場合にも、広告規制の適用対象となる。

※暗示的又は間接的な表現の扱い
1)名称又はキャッチフレーズにより表示されるもの

 例えば「アンチエイジングクリニック」等は診療科として認められていないため、広告としては認められません。また、「最高の医療を提供」等の「最高」は、最上級の比較表現と認識されるとともに客観的な事実を証明することができないため、広告としては認められません。

2)写真、イラスト、絵文字によるもの

 他の病医院の写真を使用したもの(自病医院のものであれば可)や病人が回復して元気になる姿のイラストは、回復を保障すると誤認を与える誇大広告に該当するため、広告としては認められません。

3)新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、体験談等を引用又は掲載したもの

 新聞が特集した治療法や専門家の談話を引用したものは、患者等に内容が保障されたものと著しい誤認を与える恐れがあります。そのため、厚生労働大臣が定める診療報酬の算定方法に規定する検査、手術その他の治療の方法等を含む「治療の範囲」以外の引用は認められません。また、自らの医療機関や勤務する医師らが雑誌等に掲載された記事や薬事法上の未承認医薬品を使用した治療の内容も、認められません。

4)病院等のホームページのURLやEメールアドレス等によるもの

 「Gankieru.ne.jp(ガン消える)」や「No1-hospital@XXX.or.jp(NO.1 Hospital)」等、治癒や日本1を暗示するような病院等のホームページURLやE-メールアドレス等は、誇大広告や比較広告に該当するため認められません。

参考 精神科医医療情報総合サイト e-ラポ~ル

※ホームページの取扱い
インターネット上の病院等のホームページは、当該病院等の情報を得ようとの目 的を有する者が、URLを入力したり、検索サイトで検索した上で、閲覧するもの であり、従来より情報提供や広報として扱ってきており、引き続き、原則として広告とは見なさない。

※例外として、バナーに表示される内容や検索結果として画面上に表示される内容等については、「実質的に広告にあたるもの」と取り扱われる場合もあるため、注意が必要です。

「広告」に該当する場合の取扱い
「広告」に該当する場合、規制対象はポジティブリスト方式がとられている。
ポジティブリストとは、個別的に規制対象となる表現を規律するのではなく、医療広告を原則として禁止したうえで、書ける表現を包括的に規定する方式です。

施設名称、住所、連絡先、ウェブサイトのアドレスなど

診療日時

医師の氏名・学歴・専門医資格など

医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴など

職種別、診療科別など従業者の人員配置に関する事項

敷地内の写真、建物の外観または内装、医療機器などを撮影した写真や映像

厚生労働大臣が定める検査、手術その他の治療方法など、医療の内容に関する事項

医療選択に資するものとして厚労大臣が定めるもの(セカンドオピニオンの実績など)

治験に関する事項(当該治験薬の一般名称など)
受診の便宜を図るためのサービス(「予約診療あり」「携帯電話使用可」「インターネット接続可」「送迎サービスあり」など)

その他(人間ドックの実施日時・費用など)

※ 列挙された事項以外を記載した場合には、次のような効果が生じる。

参考 精神科医医療情報総合サイト e-ラポ~ル

違反の効果および罰則など
罰則の適用について、以下のような制裁があります。
ア 行政指導 
イ  報告命令又は立入検査
ウ  中止命令又は是正命令
エ  告発
オ 公表

まとめ
医療広告規制について、個別具体的な現場判断が求められる。企業のコンプライアンス維持の観点から、迷った場合には、
詳細に具体例が記載された厚生労働省 医療広告ガイドライン(pdf)を参照したり、
外部の弁護士や規制官庁に相談するなど、違法行為とならないような対応が求められます

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