マスク・消毒液の価格指示は適法? 再販売価格の拘束について

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はじめに

 公正取引委員会は23日、品薄で価格高騰中のマスクや消毒液に関しメーカーなどが販売価格を指示することは独禁法違反には当たらない旨発表しました。価格高騰を抑えるための価格指示は正当理由に当たるとのことです。今回は再販売価格の拘束について見直していきます。

事案の概要

 公正取引委員会は公式HP上で新型コロナウイルス感染症への対応のための取組に係る独占禁止法に関するQ&Aを公表しております。それによりますと、マスクや除菌剤等について価格の高騰をおさえるためにメーカー等が小売業者に対し一定の価格以下で販売するよう指示する行為は消費者の利益となり「正当な理由」があると認められ、独禁法違反とはならないとしております。逆に価格指示によって価格上昇をまねくような場合には正当な理由とは認められないとされております。

再販売価格の拘束とは

 独禁法2条9項4号によりますと、自己の供給する商品を購入する相手方に、「正当な理由」がないのに販売価格を定めてこれを維持させること、その他販売価格の自由な決定を拘束することは再販売価格の拘束として禁止されております(19条)。また相手方だけでなく、その相手方の取引先に対しても間接的に価格を維持させる行為も該当します。対象となるのは「商品」であって自己の提供する「役務」は該当しないとされております。「拘束」とは取引条件に従わない場合は経済上のなんらかの不利益を伴うことにより実効性が担保されていれば足りるとされております。典型的には提示した条件に従わない場合に出荷停止や出荷量の削減などを行う場合です。違反した場合には排除措置命令(20条)、課徴金納付命令の対象となっております(20条の5)。

公正競争阻害性

 再販売価格の拘束における公正競争阻害性は自由競争の減殺と言われております。本来事業者間で価格競争が行われるべきところ、製品を提供するメーカーが販売業者に対して一定の価格設定を強いることから自由競争への影響が大きいと言えます。そこで価格拘束が行われた場合には「正当な理由」がなければ原則として公正競争阻害性は認められるということです。

正当な理由

 それではどのような場合に「正当な理由」が認められるのでしょうか。判例では「専ら公正な競争秩序維持の見地から観念であって、当該拘束条件が相手方の事業活動における自由な競争を阻害するおそれがないことをいう」としています(最判昭和50年7月11日)。事業経営上必要、あるいは合理的というだけでは認められないとされております。公取委のガイドラインでも価格拘束によって競争が促進され消費者の利益の増進が図られる場合としています。

コメント

 通常再販売価格の拘束の事例では一定の価格よりも下げてはならないという条件を相手方に強制する場合がほとんどと言えます。昨年公取委により排除措置命令を受けたベビー用品メーカーの事例でも自社の定めた価格に同意した小売店にだけ出荷しておりました。このような行為は原則として価格競争を阻害し違法となります。しかし今回のようにコロナウイルスの感染拡大によって暴騰したマスクや消毒液の価格の上限を設定する行為は逆に適正な価格競争を促し、消費者の利益となると言えます。上記のように再販売価格の拘束における正当な理由は要件が相当厳しく値下げを制限する方向での拘束の場合はほぼ認められることは無いと言えます。取引相手に自社製品の販売価格を提示する場合には、事実上相手に強制することがないように、また自由な競争を阻害するものでないかを慎重に検討しておくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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