愛知県警が「株主総会特別警戒本部」を設置、総会屋対策について
2026/05/12 総会対応, コンプライアンス, 会社法

はじめに
定時株主総会が集中する時期を前に、愛知県警が8日、株主総会特別警戒本部を立ち上げていたことがわかりました。企業に不当な利益の要求などが行われていないか警戒するとのことです。今回は会社法が規制する利益供与規制と総会屋対策について見直していきます。
事案の概要
愛知県警によりますと、愛知県内の上場企業約220社のうち、149社が5月~6月にかけて株主総会を開く予定で、集中美は5月28日と6月26日とされています。
愛知県警は警戒期間中、延べ300人体制で取り締まりにあたり、企業に不当な利益を要求する総会屋の動向に関して情報収集や回g条周辺の警戒などを行うとのことです。
同様の警戒は他府県の警察でも行われており、兵庫県警本部も11日、暴力団対策課の入口に株主総会特別警戒対策室の看板が掲げられ、組織犯罪対策局長をトップとして約340人体制で警戒に当たるとしています。
総会屋の推移
一般に総会屋とは、上場企業等の株式を取得し、株主総会の議事運営を妨害するために株主権を行使し、会社に金品などを要求する者を言います。総会屋は反社会勢力の資金源にもなっており、株主総会を平穏に乗り切りたい経営陣の心理につけ込んだ行為とも言えます。
警察庁の統計では1980年代初頭には総会屋は数千人規模で存在していたとされ、83年には少なくとも約1700人程度いたものとされています。その後商法改正により総会屋への利益供与が禁止され、90年代には取り締まりの強化があり、また暴排条例などの強化などもあって2000年代にはその数は300人程度にまで激減しています。
現在では総会屋の数は約130人程度が確認されており、警視庁や各都道府県警察でも毎年定時株主総会のシーズンには特別警戒本部を設置して取り締まりに当たっているとされています。
会社法による利益供与規制
会社法120条1項によりますと、「株式会社は、何人に対しても、株主の権利…の行使に関し、財産上の利益を供与…をしてはならない」としています。これは利益供与と呼ばれる行為で、株主総会の議事侵攻を妨害しないよう総会屋に金品を提供するといった場合が典型例と言えます。しかし、こういった場合だけでなく、一般の株主に対して利益を提供した場合も同様に規制の対象となっています。
具体的に要件を見ていきますと、まず「何人に対しても」とあるように供与の相手は自体は株主に限定されていません。これは株式を取得せずに会社に金品等を要求してくる総会屋も存在するためと言われています。また、第三者を介在させた場合も同様です。
次に、「株主の権利」の行使に関して利益が供与される必要があります。この株主の権利は会社法上様々なものが規定されていますが、例えば剰余金配当請求や残余財産分配請求といった自益権、株主総会での議決権や提案権、質問権、株主代表訴訟提起権といった共益権が挙げられます。また、好ましくない株主から株式を買い取る行為も株式買取請求権として株主の権利に含まれるとされます(最判平成18年4月10日)。
そして、提供される利益は当該会社またはその子会社の計算で行われる必要があります。これは形式的なものではなく、実質的に損益がそれらの会社に帰属しているかで判断されます(東京地裁平成11年9月8日)。たとえば取締役が会社のお金ではなく、自分のポケットマネーで供与した場合は違法な利益供与に該当しないということです。ただし、その分を事後会社が交際費などとして補填した場合は該当することとなります。
総会屋対策
会社が採るべきと考えられる総会屋対策として、上記の利益供与を行わないこと以外に役員の席と株主の席との間に十分な距離を置くことや特定の株主がマイクを独占できなようワイヤレスではなくスタンドマイクを使用すること、また議長の指示に従わない場合は退場を求めることなどを警備員の配置も含め入念にリハーサルをしておくことが効果的と言えます。
また、基準日株主の中に総会屋と思しき人物や反社会的組織の構成員が入り込んでいないかを事前にチェックすることも重要です。最寄りの警察署や暴力団対策課、公益財団法人暴力団追放運動推進都民センター、また「日経テレコン」「日本信用情報サービス」などによって反社チェックすることができます。
コメント
上でも触れたように80年代に数千人規模で存在していた総会屋も現在では激減し、130人程度とされています。商法会社法による利益供与規制や暴対法、また各企業の定時株主総会の6月集中開催などが功を奏したものと言えます。
しかし、現在でも総会屋が存在しなくなったわけではなく、また近年でも大株主への多額の利益供与事件など総会屋以外への利益供与事件も見られています。
総会屋対策だけでなく、どのような場合に違法な利益供与となるのかを確認し、社内で周知していくことが重要と言えるでしょう。
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