自炊代行の著作権侵害を認定
2013/10/01 知財・ライセンス, 著作権法, その他

事案の概要
紙媒体の書籍を自分でスキャンして電子化する「自炊」といわれる作業を代行する「自炊代行」が、著作権侵害に当たるとして、東京地裁は、東京都内の代行業者2社に対して複製の差止めと計140万円の損害賠償を命じた。
業者側による「顧客の私的複製を補助しただけ」との主張に対し、裁判長は「電子化は本を切り取ってスキャナーで読み取り、電子ファイルにする作業が必要で、こうした複製の行為を中心的に担うのは代行業者だ。作家側から警告を受けたあとも作業を続けていて著作権を侵害するおそれがある」と判断し、複製の差止めと計140万円の損害賠償を命じたものである。
コメント
著作物の複製に関して、著作権法21条は著作物について複製する権利を著作権者に専有させており、これを侵害する行為は違法となる。
もっとも、著作権者の権利を害しない範囲においては著作権が制限されることがあり、その一つとして著作権法30条の私的使用を目的とした複製(私的複製)があり、これに該当する場合には、違法な行為とはならない。
今回の判決は、自炊代行は著作権法30条の「私的使用を目的とした複製」には当たらず、著作権を侵害するおそれのある行為としたものである。
自炊代行を違法と判断したのは、電子化された書籍は、再複製が容易で、違法コピーされた海賊版がネットを通じて広まった場合に、それを回収するのが困難であることがあるものと考えられる。その点からすれば、本判決も決して妥当性を欠くものではない。
しかし、タブレット端末などの普及した現在、書籍を場所もとらず持ち運びにも便利な電子化することは、消費者の強く望むところであるといえる。
そのような消費者のニーズを満たしていくには、出版社自体が積極的に自炊代行に準ずる行為を行っていく必要があると思われる。
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奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
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