企業における粉飾決算の法律問題
2016/11/21 商事法務, 金融商品取引法, 会社法, その他
1 粉飾決算とは
粉飾決算とは会社が不正な会計処理を行い、内容虚偽の財務諸表を作成し、収支を偽装して行われる虚偽の決算報告のことを指します。粉飾決算の典型例は会社の経営状況が赤字や債務超過等により悪化している場合にそれを隠そうとして売り上げの水増しや経費を圧縮する等不正な経理操作を行い黒字決算することです。
2 刑事責任
粉飾決算をした場合に違法となる可能性がある刑事責任は以下のとおりです。
(1)違法配当罪(会社法第963条)
粉飾決算を行って本来はすることができない違法配当(=タコ配当)を行った取締役は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金又は両方が科されます。
会社法
(2) 特別背任罪(会社法第960条)
取締役等が粉飾決算により自己又は第三者の利益を図りその任務に違背して会社に損害を与えた場合は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金又は両方が科されます。
(3) 有価証券報告書虚偽記載罪(金融商品取引法第197条)
有価証券報告書の重要な事項に虚偽の記載をして提出した場合には、「有価証券報告書虚偽記載罪」として10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金又は両方が科されます。
金融商品取引法
(4) 銀行に対する詐欺罪(刑法246条2項)
銀行から融資を受ける際に粉飾決算した決算書を提出すると、詐欺罪となることがあります。
刑法
3 民事責任
粉飾決算した場合に問われる可能性のある民事責任は以下のとおりです。
(1) 会社法第462条
取締役が粉飾決算により違法に利益配当を行った場合には、取締役は金銭等の交付を受けた者と連帯して違法に配当した利益を会社に賠償しなければなりません。
(2) 会社法第429条
取締役が粉飾決算により計算書類等の重要事項に虚偽の記載をし、そのために第三者に損害を生じた場合には、取締役等役員はこの第三者に対してその損害を賠償すべき責任を負います。
(3) 金融商品取引法第24条の4
取締役が有価証券報告書の重要な事項に虚偽の記載等をし、これを知らないで有価証券を取得した者に損害を生じた場合には、この損害を賠償すべき責任を生じます。
(4) 債権者からの損害賠償請求
粉飾決算を行っていた会社が倒産し債権の回収が困難となった場合には、取締役等は債権者に損害賠償請求をされることがあります。
4 粉飾決算の件数
粉飾決算は増加傾向にあります。
コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2015)
コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2014)
5 粉飾決算の事例
近年大きな会社による粉飾決算(東芝は不適切会計とされている)の事件が起きています。具体的には、東芝やオリンパスの粉飾決算事件です。
(1)東芝
東芝の公式発表
(2)オリンパス
オリンパス調査委員会報告
オリンパス公式発表(pdf)
オリンパス事件の経緯
オリンパス株主弁護団
6 上場規程
粉飾決算を行うと上場廃止基準に反し、上場廃止となる場合があります。
上場廃止基準(日本取引所グループ)
7 関連サイト
東芝の会計不祥事で株主が提訴・会計監査人の責任について記載した記事もありますので、ご参考にしてください。
https://www.corporate-legal.jp/%E6%B3%95%E5%8B%99%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/%E4%BC%81%E6%A5%AD/7960
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