<ブルームバーグ元記者>「能力不足」による解雇無効 東京地裁
2012/10/09 労務法務, 労働法全般, その他
事案の概要
米ブルームバーグ通信・東京支局の元記者の男性が、独自記事の本数などのノルマを課す「業績改善プラン」(PIP=パフォーマンス・インプルーブメント・プラン)を理由に解雇されたのは不当として、同社に地位確認と賃金支払いを求めた訴訟で、東京地裁は5日、男性側の主張を認めて解雇を無効とする判決を言い渡し、賃金の支払いを命じた。
その理由として、光岡弘志裁判官は「客観的に合理的な理由を欠く」と判断した。
判決によると、男性は平成21年12月以降、週1本の独自記事や、月1本の編集局長賞級の記事などを要求するPIPに取り組むよう命じられたが、22年4月、「質の高い独自記事を配信できない」「配信記事数が少ない」等の「能力不足」を理由に退職を勧奨された。
その後男性は自宅待機となり、同8月に解雇されるに至った。
光岡裁判官は、男性の遅筆等を主張していたブルームバーグ側に対し、「(雇用契約上)週1本程度の独自記事が義務付けられていたと認めるだけの証拠はない」とした上で、同社が「具体的な指示や改善策を講じていたとは認められない」と判断し、「雇用を継続できないほど重要な解雇理由ではない」と結論付けた。
男性側の弁護団によると、当判決は、PIPを経た解雇を無効とした初めてのケース。
「会社の不当な解雇を止める一つのきっかけになれば」とコメントした。
コメント
そもそもPIPとは、外資系企業等で行われるプログラムで、勤務成績が下位の者を「能力不足」として毎年一定数リストラすることで、全体の質を維持しようとするものである。
しかしながら、その実態は正当な業務命令の範囲を超えているとの指摘がある。
上司数人が労働者一人に対して面談を繰り返し、あまりに高い数値目標を一方的に与えた上で、目標が達成できない場合は解雇もありうるとして合法的な退職勧奨を超えたプレッシャーを与え続け、強引に自主退職に持ち込む運用が行われているというのだ。
よって、今回の判決は、そのような実態を世に知らしめ、PIPを経た解雇に対する解雇権濫用法理の具体的適用を示したものと言え、大きな意義を持つ。
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