違法伐採木材の流通防止に向け、クリーンウッド法改正案提出へ
2023/02/24   コンプライアンス, 環境法務, 法改正, 環境法

はじめに


農林水産省が、2月23日の通常国会に合法伐採木材法(通称、クリーンウッド法)の改正案を提出予定です。改正案は、木材の輸入・加工事業者に対して適用されるもので、各事業者が取り扱う木材の産地などを確認することを義務付ける制度です。農林水産省では、2025年からの義務付けを目指しています。
 

新制度の内容は?


報道などによりますと、新制度の内容は以下となります。

[目的] 違法伐採された木材の国内流通の防止
[対象] 木材の輸入・製造・加工などを行う事業者
[内容] 次の事項の義務付け
(1)パルプ(コピー用紙やティッシュペーパーなどの原料)や丸太、角材、木製の家具などを取り引きする際、輸入する国の法令にしたがって伐採された木材であることをかどうかを取り引き先に確認すること
(2)上記の確認書類を5年間保存すること

義務を怠った事業者には、国が指導や立ち入り検査を行っていくということです。現行法では、こうした確認の懈怠に対する罰則がなく、実効性が疑問視されていました。

 

新制度設立の背景


新制度を設けることになった主な目的は“脱炭素社会の実現”です。カーボンニュートラルとも言われ、人為的に発生する二酸化炭素などの温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを指しています。この点、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指すと宣言しています。

この脱炭素社会を実現するにあたり、温室効果ガスの排出量の削減、吸収作用の保全、強化をしていく必要があります。その一方で、二酸化炭素を吸収するとされる森林が世界的に違法伐採されている現実があります。実際、違法伐採を一因として、東南アジアの熱帯林は世界の予想を上回るスピードで消失している他、南米のアマゾンでは1時間毎にサッカー場150個分もの森林が消失しているという報告もあります。その背景には、国際的な木材需要の高まりがあると言われています。

そこで、欧米やオーストラリアなどでは、既に違法に伐採された木材の流通を防ぐために、規制強化に乗り出しています。

なお、日本の針葉樹丸太輸入量は217万m3で、世界の2%にあたり、米国からの輸入が71%を占めています。針葉樹製材に関しては、日本の輸入量は479万㎥で、世界の4%。内訳はEUからの輸入が48%、カナダが24%となっています。
令和4年4月 木材貿易の現状(林野庁木材貿易対策室)

 

各国の動き


では、輸入先となり得る国々では、違法伐採に関し、どのような動きがあるのでしょうか。

【東アジア】
・中国「改正森林法」を施行。
違法伐採木材の購入、加工、輸入に対する規制を措置。
「木材の加工に携わる企業は、原材料、製品の入出荷に関する台帳を備えなければらない。個人や企業は、違法又は無差別(indiscriminately)に伐採されたことを明確に知っている木材を購入、加工、輸送してはならない」

・韓国
「木材の持続可能な利用に関する法律」を施行。
輸入事業者に対し、木材の合法性証明書類の提出を義務付け。
合法性確認ができない木材については、販売の差し止め、返還、破棄を命じることができる。

【オセアニア】
・オーストラリア 「違法伐採禁止法」施行規則を見直し中。
対象品目の拡大などを検討中。
水際対策として、サンプリング、保留、押収権限の追加。また違反行為に関する公表権限の追加を検討。

・ニュージーランド 森林法改正し、「合法伐採確認システム」の導入を検討中。森林所有者に対して、サプライチェーンの関係者に伐採に関する情報を提供するよう義務付け。

【欧州】
・イギリス 「環境法」改正
「森林リスク産品」に対するDDを義務付け。

・ヨーロッパ「「森林減少フリー製品に関する規則案」を公表。

 

コメント


脱炭素社会に向けた潮流は今後も世界的に続くと予想されています。そのため、当該領域において、従来にはなかった法的規制が生まれる可能性があります。法務として、カーボンニュートラル関連の法改正にもアンテナを張る必要がありそうです。
 

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