自転車通勤に伴うリスク管理
2015/06/03 法務相談一般, 民法・商法, その他
6月1日から、改正道交法が施行された。信号無視や飲酒運転などの危険行為
を繰り返した自転車の運転者に安全講習が義務付けられる。
自転車運転者の取り締まり強化により検挙される人の増加が予想されるため、自転車通勤者のいる企業としても対策の必要性がありそうだ。
改正道交法の内容
今回の法改正で、信号無視、酒酔い運転、制動装置(ブレーキ)不良自転車運転、安全運転義務違反(携帯電話を試用しながらの運転など)等の14項目が危険行為として規定され、3年以内に2回以上検挙された場合に、安全講習の受講が義務付けられる。
この講習は3か月以内に受講する必要があり、受講命令に違反した場合、5万円以下の罰金が科されることとなる。
近時、都市部を中心として自転車通勤をする人たちが増加している。これに従い、自転車通勤に伴うリスクも高まっている。自転車通勤時に従業員が事故にあった場合には、通勤災害の問題となりうる。また、企業の損害賠償責任も問題となる。
通勤災害の問題
労災保険法によれば、「通勤」とは、就業に関し、以下の移動を行うことをいう。
①住居と就業の場所との間の往復
②就業の場所から他の就業の場所への移動
③住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
また、これらの移動を「合理的な経路及び方法」により行う必要がある。
「移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合」には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはならない。
ここにいう「合理的な経路及び方法」とは、「一般に労働者が用いると認められる経路及び手段等」のことをいう。当日の交通事情により迂回してとる経路は「合理的な経路」となる。
「合理的な方法」については、鉄道、バス等の公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車等を本来の用法に従って使用する場合、徒歩の場合等、通常用いられる交通方法を平常用いているかどうかにかかわらず、一般に「合理的な方法」となる。
従って、いつもは電車通勤の者が、たまたま自転車通勤を行った場合でも、合理的な方法となる。
企業の責任
自宅から直接取引先に営業に行くような場合は、業務に付随したものとして、業務災害の問題となる。その途上で従業員が加害者となり、他者に怪我を負わせたような場合には、企業が損害賠償責任を追及され得る。
賠償額が多額となる可能性もあるだけに、自転車通勤の従業員に民間保険の加入を義務付けることが望ましいといえる。
企業の対策
自転車通勤を許可制にする、自転車通勤規定を整備するなどして、社内に周知することが有用である。
また、自転車運転に関する安全教育を実施したり、自転車の安全利用について管理する者を置いている企業もある。
警視庁が、自転車の安全利用に積極的に取り組む企業を「自転車安全利用モデル企業」に指定し、公表している。自社の対応策を考える際の、参考にしてみてはいかがだろうか。
自転車安全利用モデル企業(警視庁HP)
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