「着うた」配信サービスの競争に結論が!
2011/02/20 知財・ライセンス, 独禁法対応, 著作権法, 独占禁止法, エンターテイメント

事件の概要
携帯電話用の音楽配信サービスである「着うた」を巡り、ソニー・ミュージックエンタテイメント(SME)など、大手レコード会社が、公正取引委員会の審決取り消しを求め、最高裁に上告をしていたが、独占禁止法に違反する、「共同取引拒絶行為」があったとして、結局、一審の東京高等裁判所の判決を支持し、上告が棄却された。
今回の訴訟では、大手レコード会社が、「原盤権」を持つ優位な立場を利用し、他の業者に、この権利の原盤権の利用を認めず、安価での市場参入を妨げたと判断されたことになる。
これにより、「着うた」のサービスの選択肢が広がる可能性が出た。
簡単なポイント整理
【原盤権】
著作物の伝達のために、実演家や音楽出版社などに認められた著作隣接権の1つ。
【共同取引拒絶行為】
競争関係にある企業が共同で特定の企業との取引を拒んだり、第三者に特定の企業との取引を断わらせたりする行為をいう。今回は、この「共同取引拒絶行為」が、問題となるので、以下、この点に焦点をあてて検討する。
今回の問題点
【事件の背景】
今回、SMEなどの大手レコード会社が、このような行為に出たのは、現在のCDが売れない現状にあるだろう。そうすると、音楽メディアにおいて、利益を創出するには、「着うた」によるサービスは、CD販売に代わるドル箱であると言える。
そこで、ここでの事業利益を確保する必要がある。しかし、「着うた」を利用した人は分かるが、CDよりも安いのである。そうだとすると、このサービス分野で、価格競争が進むと、結局は、音楽事業に関する利益率が低くなることが考えられる。そう考えると、ある程度の利益を確保するために、大手のレコード会社が、協調して市場の独占を確保する必要もあったのかもしれない。
【著作権と独占禁止法】
著作権などの知的財産権は、権利者の利益を守るために必要な権利である。
しかし、これらの権利は、独占権であるがゆえに、第三者の利用行為を制限することになり、ときには、適正な経済行為を阻害する要因にもなりうる。そこで、権利者の利益を確保することと適正な経済調和のバランスを図ることが必要となってきた。
それが、独占禁止法の趣旨と言えるだろう。つまり、両法律の適切な適用バランスが、自由市場の発展には不可欠となっている。著作権などの趣旨を逸脱した行為などは、もはや、独占権の濫用として、むしろ、第三者の利益を確保して、健全な経済行為を保護することになる。
【今回の事例】
今回の「着うた」では、結局、安価な価格で「着うた」サービスを行おうとする業者の新規参入を阻止している。これは、より安いサービスを受けたいという、消費者の利益を大きく制限している。そして、大手レコード会社が、原盤権を有していたとしても、その権利の適正な行使を逸脱していると評価されたのである。
最後に
今回の事例と似た事例として、
このように、独占権により、利益を最大限に追求することは、企業にとっては、重要なことかもしれない。しかし、すべての権利にいえることは、社会全体との調和が求められる、ということである。
今回の事例においても、価格競争が起きないことで、結局、違法ダウンロードが蔓延してしまえば、どんどん利益がなくなっていくのである。
消費者側の利益にも配慮してくれることを期待したい。
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奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
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- 視聴時間1時間27分