厚労省がマタハラについて新通達
2015/02/23 労務法務, 労働法全般, その他

通達改正の経緯
マタハラについては、男女雇用機会均等法が、妊娠・出産等を理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(9条3項)としている。また、育児・介護休業法も、育児休業等を理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(10条)としている。そして、これらの「理由として」とは、妊娠・出産・育児休業等と、解雇その他不利益な取扱いとの間に因果関係があることをいう。
しかし、この因果関係の立証が困難となっており、会社側は、妊娠・出産等ではなく、女性の能力不足や会社の経営状況悪化などが理由であると反論し、女性側が泣き寝入りするケースも多かったとされる。
そうしたなか、昨年10月、最高裁は、妊娠した女性が降格処分を受けた事案について、労働者本人が同意している場合などの例外を除いて、原則として男女雇用機会均等法9条3項に違反すると判断した。
そのため、厚労省は今回、この最高裁判決を踏まえて、男女雇用機会均等法及び育児介護休業法について従来より厳格な解釈通達を発出した。
新通達の内容
新通達によれば、妊娠・出産・育児休業等の事由を「契機として」不利益取扱いが行われた場合には、原則として、妊娠・出産・育児休業等の事由を「理由として」不利益取扱いが行われた(男女雇用機会均等法9条3項、育児・介護休業法10条)にあたるとした。ただ、例外的に、特段の事情が存在する場合や、労働者本人の同意がありそれに合理的な理由が存在する場合は、あたらないとした。
そして、「契機として」とは、妊娠・出産・育児休業等の事由と、不利益取扱いとの時間的近接性によって判断される。例えば、会社制度上人事考課・昇給等が定期的に行われている会社において、女性労働者が、育児時間を請求・取得した場合、次回の定期的な人事考課・昇給等のタイミングよりも前に、不利益な取扱いが行われた場合は、「契機として」行われたと判断されることになる。
また、「妊娠・出産・育児等の事由」とは、具体的には、妊娠中・産後の女性労働者の妊娠、出産、健康管理措置(妊婦検診等)、つわり等での労働効率低下、時間外・休日・深夜労働しないこと、育児時間、そして、子供を持つ労働者の育児休業、短時間勤務、子の看護休暇、時間外・深夜労働をしないこと等をいう。さらに、「不利益取扱い」の具体例は、解雇、雇い止め、契約更新回数の引下げ、退職や正社員を非正規社員とする契約内容変更の強要、降格、減給、賞与等における不利益算定、不利益な自宅待機命令、人事考課での不利益評価、就業環境を害する行為(仕事をさせない、雑務だけさせる)などが挙げられる。
今回の改正の最大のポイントは、会社側が女性労働者に対して、妊娠・出産・育児休業等と時間的に近接して不利益取扱いを行えば、原則として、妊娠・出産・育児休業等を「理由として」不利益取扱いを行ったとされて違法と判断される、という点である。
会社側としても、今回の厚労省新通達を踏まえ、自社の労務規定や労務環境を念のため再確認しておく必要があるかもしれない。
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